韓国徴用工判決 事実上の国交断絶を突きつけたに等しい
国際情報
韓国徴用工判決 事実上の国交断絶を突きつけたに等しい
2018.11.05 11:00
埋めがたい溝が生じた(共同通信社)
「嫌韓」だの「反日」だのといった好き嫌いの話ではない。
日韓関係を根底から覆す国際常識外れの歴史修正というしかない。
「国交正常化の前提となっていた合意を反故にするのですから、事実上の“国交断絶”を突きつけたに等しい」
朝日新聞元ソウル特派員でジャーナリストの前川惠司氏は、韓国の大法院(最高裁)が10月30日に下した判決について、そう呆れた。
韓国人の元徴用工4人が、日本による朝鮮半島統治時代に「強制労働させられた」として、
新日鉄住金に損害賠償を求めていた裁判の差し戻し上告審で、大法院は被告側の上告を棄却し、原告の元徴用工に対して1人あたり1億ウォン(約1000万円)の賠償を命じた。
「徴用工」とは、戦時中に日本政府が軍需工場などに動員した労働者のことで、日本統治下の朝鮮半島でも動員がかけられた。
まず、はっきりさせておかなければならないのは、元徴用工に対する補償については、すでに日韓両政府の合意のもと解決済みであるということだ。
日韓国交正常化が実現した1965年に、「日韓請求権協定」が結ばれた。協定によって、日本政府は韓国に対して「3億ドルの無償経済支援」を行ない、その代わりに韓国は「個人・法人の請求権を放棄」すると決まった。
協定には請求権に関する問題が「完全かつ最終的に解決された」と明記されているのだ。日韓問題に詳しい麗澤大学客員教授の西岡力氏が解説する。
「日韓国交正常化交渉の際に、日本政府は韓国人の元徴用工に対して、個人に直接支払うかたちでの補償を提案していました。
しかし、韓国側はそれを拒否。政府に一括して支払うことを求めたため、日本がそれに応じた経緯がある」
つまり、元徴用工に補償しなければいけないのは、日本政府でも新日鉄住金などの日本企業でもなく、補償金を“預かっている”韓国政府なのだ。
だが、韓国政府は日本からの経済支援金を元徴用工たちに渡さなかった。1
965年当時の韓国の国家予算は約3億5000万ドルであり、それに匹敵する額の日本からの経済支援は、インフラ整備などに充てられた。
その結果として、韓国は「漢江の奇跡」と呼ばれる経済成長を遂げたわけである。
そうした経緯を踏まえれば、「日本企業が元徴用工に補償しろ」という判決が、国際法はもちろん、物事の筋を大きく違えたものであることがよくわかる。
※週刊ポスト2018年11月16日号
国際情報
韓国徴用工判決 事実上の国交断絶を突きつけたに等しい
2018.11.05 11:00
埋めがたい溝が生じた(共同通信社)
「嫌韓」だの「反日」だのといった好き嫌いの話ではない。
日韓関係を根底から覆す国際常識外れの歴史修正というしかない。
「国交正常化の前提となっていた合意を反故にするのですから、事実上の“国交断絶”を突きつけたに等しい」
朝日新聞元ソウル特派員でジャーナリストの前川惠司氏は、韓国の大法院(最高裁)が10月30日に下した判決について、そう呆れた。
韓国人の元徴用工4人が、日本による朝鮮半島統治時代に「強制労働させられた」として、
新日鉄住金に損害賠償を求めていた裁判の差し戻し上告審で、大法院は被告側の上告を棄却し、原告の元徴用工に対して1人あたり1億ウォン(約1000万円)の賠償を命じた。
「徴用工」とは、戦時中に日本政府が軍需工場などに動員した労働者のことで、日本統治下の朝鮮半島でも動員がかけられた。
まず、はっきりさせておかなければならないのは、元徴用工に対する補償については、すでに日韓両政府の合意のもと解決済みであるということだ。
日韓国交正常化が実現した1965年に、「日韓請求権協定」が結ばれた。協定によって、日本政府は韓国に対して「3億ドルの無償経済支援」を行ない、その代わりに韓国は「個人・法人の請求権を放棄」すると決まった。
協定には請求権に関する問題が「完全かつ最終的に解決された」と明記されているのだ。日韓問題に詳しい麗澤大学客員教授の西岡力氏が解説する。
「日韓国交正常化交渉の際に、日本政府は韓国人の元徴用工に対して、個人に直接支払うかたちでの補償を提案していました。
しかし、韓国側はそれを拒否。政府に一括して支払うことを求めたため、日本がそれに応じた経緯がある」
つまり、元徴用工に補償しなければいけないのは、日本政府でも新日鉄住金などの日本企業でもなく、補償金を“預かっている”韓国政府なのだ。
だが、韓国政府は日本からの経済支援金を元徴用工たちに渡さなかった。1
965年当時の韓国の国家予算は約3億5000万ドルであり、それに匹敵する額の日本からの経済支援は、インフラ整備などに充てられた。
その結果として、韓国は「漢江の奇跡」と呼ばれる経済成長を遂げたわけである。
そうした経緯を踏まえれば、「日本企業が元徴用工に補償しろ」という判決が、国際法はもちろん、物事の筋を大きく違えたものであることがよくわかる。
※週刊ポスト2018年11月16日号