2019年05月03日17:00
アメリカでも高齢化や長寿化にともない働く高齢者が増加しているが、日本とは少し違っている。
アメリカでも生涯現役が増加
2019年05月03日17:00
韓国・北朝鮮2019年4月5日掲載
韓国経済に暗雲が漂う。半導体市況の急落に加え「無謀な最低賃金引き上げ」や「米国とのケンカ」といった文在寅(ムン・ジェイン)政権の失政が原因である。
サムスン電子は4月5日、第1四半期(2019年1-3月)の連結決算(速報値)を発表した。
売上高は前年同期比14・1%減の52兆ウォン(1ウォン=0・098円)、営業利益は同60・4%減の6兆2000億ウォンだった。前期比ではそれぞれ12・3%、42・6%減少した。
4半期の営業利益が10兆ウォンに達しなかったのは2017年第1四半期(9兆9000億ウォン)以来初めて。
最高だった2018年第3四半期(17兆5700億ウォン)と比べ3分の1の水準だ。
売上高営業利益率は11・9%で前年同期(25・8%)の半分にも満たなかった。
事業部門別の収益は4月下旬に発表するが、
多くのアナリストはDRAMなど半導体部門の営業利益が約4兆ウォンと前期(7兆7700億ウォン)の5割、過去最高の2018年第3四半期(13兆6500億ウォン)の3割の水準に留まったと分析している。
テレビ向けの液晶パネルなどディスプレー部門も収益が悪化し、スマホを中心とするIT&モバイル部門の利益も前年同期に達しなかったとの見方が多い。
DRAMの価格は1年前と比べ半値に落ち、市況の回復は今年後半以降と見られている。先安感から買い控える需要家が多く、半導体メーカーは数量面でも苦戦している。
サムスン電子は韓国株式市場の時価総額の4分の1を占める。この決算発表が市場にショックを与えないよう、同社は予め3月26日に「市場の期待水準を下回る決算と予想される」との異例のお知らせを発表していた。
サムスン電子 の変調は国全体の不振と歩調を合わす。4月1日に韓国・関税庁が発表した3月の通関統計(暫定値)によると、同月の輸出は471億ドルで前年同月比8.2%減だった。
輸出の20%前後を占めてきた半導体の不調と、25%前後の対中輸出の不振を反映した。後者は米中経済戦争の余波を受けた。
輸入は同6.7%減の419億ドルだったので貿易収支は52億ドルの黒字を確保。しかし前年同月の64億ドルの黒字と比べ、18.6%減少した。
注目すべきは韓国経済の不振が外的な理由に留まらないことだ。それを示すデータが相次ぎ明らかとなっている。
3月29日に統計庁が発表した「2月の産業活動動向」によると、全産業の生産指数は前月比1.9%下落した。2013年3月に2.1%減となって以降、最大の下げ幅だ。
製造業の平均稼働率は71.2%に下落。それでも出荷の減少に対応できず、在庫率は114.5%にまで上昇、2月としてはIMF(国際通貨基金)危機当時の1998年以降、最高値を記録した。
設備投資指数は前月比で10.4%も減少。これも2013年11月(11%)以来の低い水準だった。消費動向を示す小売売上高指数も同0.5%減だった。
2月の景気同行指数(循環変動値)も前月比0.4ポイント落ち、11カ月連続で下落した。IMF危機の1997年9月から1998年8月まで連続して下落した記録に次ぐ長さだ。
最大手紙、朝鮮日報は「政府は堅実と言うが…生産・消費・投資の『トリプル墜落』」(3月30日、韓国語版)と文在寅政権を責め立てた。
韓国では2017年5月に就任して以来、最低賃金を2年間で3割近く引き上げる など、現実を無視した文在寅政権の人気取り政策が景気の悪化に油を注いだ、との見方が一般的だ。
人件費の負担増加に耐えきれず、廃業する零細商店やコンビニが続出する。それは当然、雇用の機会も減らした。
2018年の年間の失業率は3.8%で2017年の3.7%から0.1ポイント上昇した。2019年1月の失業率(季節調整済み)は4.4%で、2018年12月の3.8%から急激に悪化した。1月としては、リーマンショックの余波が残る2010年の4.7%以来の高さだ。
雇用が悪化すれば消費が縮む。消費が縮小すれば投資も減る。「賃金を上げれば消費も投資も増える」とのキャッチフレーズで始めた「所得主導成長」が完全な裏目に出た。
仮にその理屈が正しいとしても、2年間で一気に3割弱も最低賃金を上げれば、雇用を生み出す源泉たる企業を潰してしまう。それを左派政権は考えに入れていなかったのである。
そもそも韓国では、人口減少による経済規模の縮小が懸念されていた。そんな微妙な時に文在寅政権の「ピンボケ政策」は実行に移された。
統計庁は3月28日に将来人口推計を発表、韓国の人口は早ければ2019年の5165万人をピークに、2020年から減少すると見通した。
韓国の生産年齢人口比率は2017年の73%をピークに下降している。これは全人口に占める15~64歳の人口の比率で、仮に人口が減らなくとも1人当たりの生産性が上がらなければ経済規模が縮小することを意味する。
「経済の縮み」の打撃を真っ先に受けるのが内需産業だ。量販店など流通業が本格的なリストラに乗り出した。大手のEマートは従業員を2017年末の2万7657人から2018年末には約1540人減らした。
就職情報会社「インクルート」によると、流通企業646社のうち11.9%が2019年には新規採用しない計画だ。「確実に採用する計画」を持つのは28.6%に留まった。
これらの数字を報じたのは朝鮮日報。「『風邪をひいたので面接に行けません』という日本流通業の求人難深刻…韓国は構造調整」(4月2日、韓国語版)で、リストラに突き進む韓国の流通企業を人手不足に悩む日本と対照的に描いた。
景気の悪化は出生率の低下を呼ぶ。職が得られず、将来に希望を持てない若者が結婚も出産も控える。文在寅政権の失政は人口問題にも影を落とし始めた。
2月27日に統計庁が発表した2018年の韓国の出生数は前年より3万人あまり少ない約32万7000人で、過去最少だった。合計特殊出生率は0.98。統計を取り始めて以降、初めて1を割り込んだ。日本の1.43(2017年)よりも低く、世界でも最低水準だ。
韓国の合計特殊出生率は2001年以降2016年まで1.08から1.30の間で推移していた。それが、文在寅政権がスタートした2017年に1.05に下落した後、2018年には0.98に落ち込んだのだ。
しかし、文在寅政権に反省の色は全くない。大統領自らが「経済は堅調だ」と言い張り続ける以上、各省庁は「無理な賃上げ」など人気取り政策を変えるわけにはいかない。
世界でも類例のない少子化には、異常な学歴重視という社会背景がある。ことに韓国の教育費は高く、普通の親は「競争力」を付けさせるには1人しか子供を持てない。
21世紀に入ったころから韓国政府も少子化対策を打ち出してはいる。だが、こんな社会的な要因を除去するには息の長い取り組みが必要だ。というのに、5年の単任制という仕組みの下で、歴代大統領は短期間で成果の上がる分野に力を集中しがちだ。
ことに文在寅政権は、北朝鮮との関係改善という目標1本に、政権の力を注ぎこんでいる。腰の据わった少子化対策は望むべくもない。
今、韓国の経済界が最も恐れる「文在寅リスク」は、米国との対立である。2月27、28日のハノイでの米朝首脳会談で「非核化せずに、制裁だけ緩和させよう」との北朝鮮の意図が露わになった。さらに韓国が北朝鮮の核武装を幇助しているとの認識も世界に広まった。
米朝首脳会談が物別れに終わり、米国が制裁を維持しようとしているのに、北にドルを渡すための事業である開城工業団地と金剛山観光を再開すると言い出したからだ(詳しくはデイリー新潮掲載の拙稿「米国にケンカ売る文在寅、北朝鮮とは運命共同体で韓国が突き進む“地獄の一丁目”」参照)。
韓国が裏切るたびに米国は「為替」で脅してきた。「通貨危機に陥りやすい」という韓国の弱点を突いてお灸を据える方法である(拙著『米韓同盟消滅』第2章第4節「『韓国の裏切り』に警告し続けた米国」参照)。
折しも、韓国の貿易黒字は急速に減っている。1997年、2008年、2011年の韓国の通貨危機はいずれも貿易収支が悪化したうえ、米国との関係が悪くなるなど外的な環境が厳しくなった時に起きている(デイリー新潮掲載「韓国、輸出急減で通貨危機の足音 日米に見放されたらジ・エンド?」)。
まさに今、その「悪夢」が再現しかけている。4月11日、文在寅大統領はトランプ大統領とワシントンで会談する。この場で文在寅大統領が開城工業団地と金剛山観光の再開を言い出せば、米韓関係は破局に至る可能性がある。
パニックに陥った市場参加者は、一斉に韓国からおカネを引き上げるかも知れない。3月に入ったころから、ウォンの対ドル相場は少しずつ弱含んでいるのだ。
当ウェブサイト『新宿会計士の政治経済評論』は、もともとは「読んで下さった方々の知的好奇心を刺激すること」を目的に、国内政治や外交、経済全般、さらには金融などの分野から、さまざまな話題を選んで議論するためのサイトとして開始したものです。
しかし、ここ1年近く、どうしても私たちの隣国である韓国が、
日本に対して仕掛けて来ているさまざまな不法行為と、それに対する原因分析、さらには将来の可能性について議論することが増えている気がしますし、
最近の記事を読み返すと、まるで「韓国専門サイト」のようになってしまっています。
ただ、そうなってしまうのにも、理由があります。
その最たるものは、彼の国の常軌を逸した振る舞いや、
それに対して私たちが持つべき知識や毅然たる態度などについて、
既存のメディアの報道を眺めていても、なかなか参考になる論考に出会えないからです。
もちろん、私自身はマスコミという存在を全否定するつもりはありません。
現地からの速報はマスコミ各社の力に依存しますし、どんな腐敗したメディアのなかにも、1人や2人、優れた記事の書き手はいるものだからです。
しかし、こと「韓国問題」に関して言えば、マスコミ各社の中にはどうしても「通り一遍」のことしか書いていないメディアも多く、
こうした点に対する納得がいかないという気持ちがあるからこそ、自分自身でさまざまなことを調べて記事に書くことが増えているのでしょう。
また、読者の皆さまの反応も、総じて「嫌韓」というシンプルなものではなく、
なかには実際に韓国に居住されている方や韓国人の知り合いを持つ方などから、彼らの実情に迫る鋭いコメントを頂くこともあります。
そういうわけで、「読んで下さった方々の知的好奇心を刺激する」はずが、逆に、私自身が知的好奇心をかきたてられるようなコメントも、多々混じっているのです。
ただし、「通り一遍のことしか書いていないメディアが多い」というのは、あくまでもマスコミに関する議論です。
ブログサイトやウェブサイトというカテゴリーにまで広げていけば、
いつも申し上げているとおり、『楽韓Web』のように独自の視点でさまざまな論点に斬り込む秀逸なサイトもありますし、
ほかにも一部のウェブ媒体・オピニオンサイトなどに、秀逸な論考が掲載されることもあります。
こうした「優れた論考」のなかでも、とくに耳目を引くのは、日本を代表する韓国観察者である鈴置高史氏でしょう。
鈴置氏は日本経済新聞社の元編集委員で、旧『日経ビジネスオンライン』(現『日経ビジネス電子版』)に今年1月まで連載を持っていましたが、現在は『デイリー新潮』の『韓国・北朝鮮』というカテゴリーで、ときどき、論考を寄稿しています。
今回のテーマは、「ウォン安」です。
貿易黒字の急減、GDPのマイナス成長、日米両国との関係悪化といった状況で、「通貨危機に陥ってもだれからも助けてもらえない」という状況が出現してしまった、という論考で、
内容も非常に濃いのですが、文体も読みやすく論旨明快であるため、一気に読了できると思います。
是非、直接、リンク先の記事をご覧ください。
さて、私がこの記事のリンクを紹介した最大の理由は、長年の韓国観察者である鈴置高史氏の問題意識と私自身の関心事の「答えあわせ」をするためです。
当ウェブサイトでは、韓国の通貨・ウォンの下落についてはここ1週間ほど取り上げてきました(『【ショートメモ】やっぱりUSDKRWの動きが不自然』等)。
今回の鈴置氏の論考でも、やはりGDPや貿易の縮小と同国の通貨の動き、さらには潜在的な通貨危機の可能性に言及されていました(といっても、深みと文章力が全然違いますが…)。
その意味で、あながち当ウェブサイトの問題意識も間違ってはいなかったと思います。
それよりも、「金融規制の専門家」という立場から冷静に考えていくと、やはり現在の韓国が置かれている状況は、非常にまずいと思います。
先月、『「カネ」から眺めた日韓関係:日本にとって韓国は2%の国』で指摘したとおり、韓国の企業や銀行は「最終リスクベース」で外国の金融機関からおよそ3100億ドルの資金を借り入れています。
これについて、もう少し詳しく展開したものが、次の図表です。
相手国 | 最終リスクベース | 所在地ベース | うち1年以内 |
---|---|---|---|
米国 | 83,275 | 79,049 | 32,589 |
英国 | 80,772 | 76,516 | 13,238 |
日本 | 56,269 | 45,286 | 11,439 |
フランス | 23,124 | 19,372 | 7,201 |
ドイツ | 15,743 | 12,297 | (不明) |
スイス | (不明) | 9,069 | 4,628 |
台湾 | 8,051 | 7,936 | 1,681 |
豪州 | 5,327 | 4,903 | 2,299 |
その他 | 37,653 | 55,382 | 34,054 |
合計 | 310,214 | 309,810 | 107,129 |
(【出所】「最終リスクベース国際資金取引統計」(Consolidated Banking Statistics, CBS)の “Consolidated positions on counterparties resident in Korea” より著者作成)
これで見ると、韓国の企業・銀行に対してカネを貸している金融機関は、最終リスクベースで見ても、所在国ベースで見ても、「米・英・日」という順番であることがわかります。
これに加えて、1年以内の短い融資は1071億ドルに達しており、うち3分の1弱は米国の金融機関からの借入金です。
通貨危機が発生するとしたら、いきなり前触れもなく、米国の金融機関が韓国に対する短期融資を打ち切り、
それに日英両国が追随する、という形で生じる可能性は否定できないのです。
ただし、私自身は相場の専門家ではないため、ここ数日のウォン安の「正体」については、正直、よくわかりません。
メディアなどで一般に論じられていることといえば、
「韓国の2018年12月末GDP(実質値・季節調整後)が前四半期比マイナス0.3%と、約1年ぶりにマイナス成長を記録したこと」が直接のきっかけとされているのですが、
ウォンが売られ始めた時間などに照らすと、やはりこうした説明だと不十分です。
これについて私が立てている仮説は、2つあります。
1つ目の仮説は、韓国の通貨当局がGDPのマイナス成長から脱却するために、自国通貨・ウォンをわざと売り、米ドルなどを買い入れるという「通貨安誘導」を行っている、という仮説です。
同国のGDPについては『韓国は典型的な「縮小均衡経済」の罠におちたのか?』でも紹介したとおり、投資とうよりもむしろ、輸出に急ブレーキが掛かったことでもたらされたという側面が強いと思います。
つまり、これに危機感を抱いた通貨当局が、米国の目を盗んでウォン安方向へ為替相場を誘導したというのがウォン安の正体だ、という考え方ですが、この考え方には難点があります。
ドナルド・J・トランプ米大統領が為替操作に強く牽制する中で、わざわざ韓国銀行が火中の栗を拾いに行くか、という疑問です。
そこで出てくる2つ目の仮説は、「通貨安が生じ、むしろ当局はウォン安を防ぐために為替介入をした」、というものです。
こちらの仮説だと、実際の為替相場の動きを説明するものとしては、1つ目の仮説と比べると整合していますし、また、現実に韓国の通貨が売られる材料には事欠かないというのも事実でしょう。
もっとも、現段階でどちらの仮説が正しいかについては、よくわかりません。
さて、以前から当ウェブサイトでは、いわゆる徴用工判決問題などを巡って、日本が韓国に何らかの経済制裁を加えるとしたら、次の5つの類型があると考えて来ました。
- 積極的経済制裁…「今から経済制裁する」と宣言して、韓国に対する経済制裁措置に踏み切ること(たとえばヒト・モノ・カネの流れの制限)
- サイレント型経済制裁…「今から経済制裁する」と宣言せず、事実上の韓国に対する経済制裁に踏み切ること(たとえば行政手続の厳格化、韓国の在日企業に対する国税調査)
- 消極的経済制裁…韓国が困っているときに、わざと助けの手を出さないこと(たとえば日韓通貨スワップ協定を再開しないこと)
- 諸外国との協調制裁…米国や英国など、日本の同盟国・準同盟国とともに、韓国に対する経済制裁に踏み切ること(たとえば北朝鮮核武装問題に対するセカンダリー・サンクションなど)
- セルフ経済制裁…韓国自身の常軌を逸した振る舞いに呆れた日本企業が、韓国企業との貿易条件を厳しくしたり、直接投資を減らしたり、商取引を絞ったりすることで、結果的に経済制裁と同じ状況を韓国自らが招くこと
仮に、今回のウォン安が通貨危機の前兆だったとすれば、「日本が現段階で韓国とわざと通貨スワップ協定を結んでいないこと」自体が、一種の「消極的経済制裁」として働きます。
また、昨日の『徴用工判決問題:非上場株式の換金はサラミスライスの一環?』でも申し上げましたが、
韓国側で日本企業に対する常軌を逸した振る舞いが増えれば、自然と韓国から距離を置こうとする日本企業も増えるかもしれません。
2019年05月02日 17時00分 デイリー新潮
ウォン安が進む。理由は明快だ。2019年に入り貿易黒字が急減、GDPもマイナス成長を記録するなど「韓国経済の縮み」が明らかになった。そのうえ、日本・米国との関係が極度に悪化し、通貨危機に陥っても誰からも助けてもらえないと見なされたからだ。(文/鈴置高史)
ウォンは2018年6月中旬から2019年4月下旬まで、1ドル=1110~1140ウォン台でほぼ動く、ボックス相場を形成していた。しかし4月25日に1年9カ月ぶりの安値を付けた後は、1150~1160ウォン台を推移するようになった。
4月30日には前日比9・7ウォン安の1168・2ウォンまで下がり、1170ウォン台をうかがった。2017年1月20日(1169・2ウォン)以降、2年3カ月ぶりのウォン安水準である。
聯合ニュースは「ウォン、1か月で2・8%急落…重要16カ国の通貨中、下落率1位」(5月1日、韓国語版)との見出しで“異変”を伝えた。
4月25日に前日比9・1ウォン安の1150・9ウォンと大きく下げたのは、同日発表の2019年第1四半期のGDP(速報値)が前期比で0・3%減と落ち込んだからだ。
世界が金融危機に陥った2008年の第4四半期(3・3%減)に続くマイナス成長だ。市場予想はプラスの0・3~0・4だったから「マイナス」には驚きが広がった。ウォンが売られたのも当然だった。
ことに内容が悪かった。将来の成長を担保する投資が前期比10・8%減、前年同期比では16・1%減だった。半導体市況の低迷を受け、同製造装置への投資急減が響いた。輸出も米中経済戦争のあおりを受け前期比2・6%減。これも韓国経済の縮みを実感させた。
4月30日のウォン急落も、同日発表の統計「2019年3月の産業活動動向」に足を引っ張られた側面が強い。
3月の景気の動向指数(循環変動値)と先行指数(同)は、それぞれ前月比0・1ポイント下落した。2つの指数が共に10か月連続で下げるのは、1970年1月にこの統計をとり始めて初めて。
2019年の第1四半期の製造業の平均稼働率は71・9で、世界金融危機直後の2009年第1四半期以来の低い水準となった。生産、投資はそれぞれ前期比3・0%減、5・4%減だった。
5月1日にも「韓国の縮み」を示す統計が発表された。4月の通関統計(暫定値)だ。
4月の輸出額は前年同月比2・0%減の488億5700万ドル。輸出が前年割れするのは2018年12月以降、5か月連続だ。一方、輸入は同2・4%増の447億3700万ドルだった。
4月の貿易収支は41億2000万ドルの黒字となったが、前年同月比33・0%減。1~4月の貿易黒字も134億3900万ドルと、前年同期比28・5%減で、黒字減少が一時的な現象ではないことが浮き彫りになった。
韓国の貿易収支が注目されるのは過去に赤字化するか、あるいは黒字でもその幅が急減した時に通貨危機に陥ったからだ。アジア通貨危機の1997年、世界金融危機の2008年、欧州金融危機の2011年である(デイリー新潮「韓国、輸出急減で通貨危機の足音 日米に見放されたらジ・エンド?」19年2月1日掲載・参照)。
症状はウォン安と株安の連鎖だ。ウォンが一定水準以下に下がると、ドル資産を基に運用する外国人投資家が保有する韓国株を売って損の拡大を防ぐ。株価が下がると外国人投資家はさらに保有株を売ってドルに替えるのでウォン安が進む――という悪循環である。
毎日経済新聞の「ウォン安に縮こまる外国人…6月がターニングポイント」(4月25日、韓国語版)は、1ドル=1150ウォンが分水嶺で、それ以上のウォン安になると外国人は株を売る傾向にあるとの分析を紹介した。
2015年からの売買実績を調べた結果で、これからすると韓国の金融市場は4月25日以降、危険水域に突入したことになる。そして同日以降も、景気指数や貿易収支などの統計――さらなる「危険」を告げる警報音が鳴り続けているのだ。
韓国の過去の通貨危機は途上国からドルが引き上げられる環境下で起きた。それに対し今回はドルの利上げが遠のくなど、韓国にとっては安心材料もある。
半面、過去には罹っていなかった重い病気に韓国経済は陥った。少子高齢化である(デイリー新潮「文在寅の“ピンボケ政策”で苦しむ韓国経済、米韓関係も破綻で着々と近づく破滅の日」19年4月5日掲載・参照)。
経済の活力を示す、生産年齢人口(15~64歳)の全人口に占める比率は2017年の73%をピークに下り坂を転げ落ちている。人口そのものが2019年の5165万人を頂点に減る見通しだ。
GDPや貿易・生産統計に見られる「韓国の縮み」の背景には、半導体不況や対中輸出の不振といった短期的な要因に留まらず「人口減」という構造的な原因が横たわっているのだ。
というのに文在寅(ムン・ジェイン)政権は、2年間で最低賃金を30%近く引き上げ、零細企業を破綻に追い込むといったオウン・ゴールを繰り返す。
4月29日にも文在寅大統領は首席・補佐官会議で「韓国経済の基礎体力は堅調であり、GDPも第2四半期から改善する」と根拠もあげずに楽観してみせた。この「ピンボケぶり」には韓国人もあきれ果てた。
朝鮮日報は社説「繰り返される経済の誤魔化し、成長率がOECD2位と言うが18位」(4月30日、韓国語版)で、「大統領は現実から目をそらすのか」と厳しく批判した。
もちろん通貨危機に陥るたびに、韓国が破局に至ったわけではない。2008年、2011年の2回は、米国や日本、中国に通貨スワップを結んでもらい乗り切った。
半面、1997年の危機当時は、米国との関係が極度に悪化していた。米国は日本に対してもスワップを締結しないよう指示して韓国をIMF(国際通貨基金)の救済申請に追い込んだ(拙著『米韓同盟消滅』[新潮新書]第2章第4節「『韓国の裏切り』に警告し続けた米国」参照)。
今回のウォン安局面では、それが「危機」につながっても日本や米国が韓国を助けるとは市場を含め、誰も考えないだろう。
文在寅政権はことあるごとに国民の反日・反米感情を煽っている(デイリー新潮「『平和のために日本は謝れ』 反日・反米を煽る文在寅『3・1演説』の正しい読み方」19年3月8日掲載・参照)。もちろん、米国も日本もそれを苦々しく見ている。
さらに文在寅政権は、北の核武装を露骨に幇助し始めた。中ロまでが北朝鮮への経済制裁に参加する中、韓国だけが対北援助を画策する(デイリー新潮「米国にケンカ売る文在寅、北朝鮮とは運命共同体で韓国が突き進む“地獄の一丁目”」19年3月20日掲載・参照)。
これでは米国や日本も韓国に「お仕置き」するしかなくなる。そして5月1日、「元・徴用工」訴訟団は差し押さえ済みの日本製鉄と不二越の韓国内の資産に売却命令を出すよう、裁判所に要求した。
日本政府は「日本企業に不利益が出れば対抗措置をとる」と警告してきた。ついに、そのレッドゾーンに韓国は足を踏み込んだのだ。
鈴置高史(すずおき・たかぶみ) 韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95~96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。
週刊新潮WEB取材班