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徴用工像や慰安婦像の設置に冷める韓国世論
釜山(プサン)日本国領事館の前に徴用工像を立てようとする市民団体と、それを阻止しようとする釜山市との間の対立が1年も続いている。
最近、釜山市が徴用工像を強制撤去したことで両者の対立が再びマスコミの注目を浴びている。
昨年の5月1日、韓国の2大労働組合である「民主労総」と「韓国労総」が中心になった市民団体「釜山労働者像建設特委」はメーデーを迎え、
釜山の日本領事館前に設置された少女像(慰安婦像)の横に徴用工像を設置しようとした。
しかし、警察の強力な阻止によって目標した位置に銅像を設立する計画は失敗、目標位置だった総領事館の裏門から40メートル余り離れたところに徴用工像を設置して解散した。
その後の5月31日、釜山市は、徴用工像を電撃的に撤去して約7キロメートルほど離れた「日帝強制動員歴史館」に移した。
今年の3月1日、3.1運動(抗日運動)100周年を迎えて、市民団体は歴史館から徴用工像を返してもらい、再び日本領事館前の設置を試みた。
しかし、前回と同じく警察側によって制止され、銅像は近くの公園に移された。
そして、4月12日に釜山市がまた、銅像を「歴史館」に移してしまった。
これに対し、現在、民主労総と市民団体は釜山市庁に押しかけて市長の出勤を阻止するなどの行動に訴え、激しく抵抗している。
韓国の多くのマスコミも民主労総の主張を側面支援し、多くの記事を出している状況だ。
しかし、市民団体やマスコミの大騒ぎとは裏腹に、韓国国民の関心は極めて低い。
韓国最大のニュースサイトであるネイバーニュースには、釜山市が徴用工像を撤去したことに関する関連記事が数十件も掲載されているが、コメントや推薦数はほとんど一桁に過ぎなかった。
関連記事の中に唯一ネットユーザーたちの関心を集めたのは『朝鮮日報』が15日に報道した「民主労総のやりたい放題…釜山日本国領事館の前に「抗日通り」を作る」という記事だった。
韓国最大の労働組合である民主労総が釜山日本領事館の前に不法設置された少女像と徴用工像の間の150メートルを「抗日通り」として造成すると宣言したことを伝えたニュースだ。
朴英南 (ジャーナリスト 在ソウル)
韓国「止まらぬ経済悪化」で文在寅政権が迎える新たな危機
半導体輸出に急ブレーキがかかる中、文政権が経済の安定を目指すことは難しい。
米国と中国などの通商摩擦などを受けて、世界的に貿易取引は減少している。
中国がインフラ投資や減税によって景気刺激に取り組んでいることは、世界経済には相応のプラスの影響を与えるだろう。
ただ、それが、韓国の輸出持ち直しにつながるとは言いづらくなっている。
なぜなら、韓国にとって最大の輸出先である中国は、半導体の国内生産能力を高めようとしているからだ。
中国経済が持ち直したとしても、過去のようなペースで韓国の対中輸出が増えるとは考えづらい。
文政権が中国との関係を強化しようにも、習近平国家主席は韓国よりもわが国との関係強化を重視している。
今後、韓国では所得・雇用環境への不安が高まる可能性がある。
韓国では労働組合の力が強い。
景気が悪化すると、労働組合は組合構成員の雇用や所得を守ることを、従来以上に重視するようになる。
2019.04.25 (木)
「 文在寅、親北反米路線で確信犯 」
『週刊新潮』 2019年4月25日号 日本ルネッサンス 第849回
南北両朝鮮が米国に追い詰められている。とりわけ韓国の文在寅大統領への米国の圧力は巧妙である。
4月11日、文氏は“建国”を祝う予定だったが、米韓首脳会談のため、大事なその記念式典を諦めて訪米した。
にも拘わらず、ホワイトハウスでのトランプ大統領との会談は、前代未聞の哀れな結果に終わった。
文氏は10日にソウルを出発し、同日夕方にワシントンに到着したが、米国側との予定は一切組まれていなかった。
翌11日午前中に、ポンペオ国務長官、ボルトン大統領補佐官、ペンス副大統領とそれぞれ面会したが、三氏共に文氏の北朝鮮寄りの姿勢に批判を加えたと見られる。
北朝鮮に非核化の意思は読みとれず、制裁緩和はあり得ない、米国はむしろ制裁強化を考えていることなどが強調されたと考えてよいだろう。
その後、トランプ、文両首脳は夫人を伴って首脳会談を行った。
夫人同伴の首脳会談など通常はあり得ない。
トランプ氏は文氏と二人で語り合う必要を認めていなかったのだ。
現に会談冒頭、メディアからゴルフのマスターズトーナメントの勝者は誰になると思うかと問われ、トランプ氏は文氏を横においたまま延々と語った。
結局27分間もトランプ氏の話が続き、文氏との会談時間は驚きの2分間、しかも通訳つきだ。
その後に他の閣僚たちも参加しての昼食となった。4月12日、ネット配信の『言論テレビ』で元駐日韓国大使館公使の洪熒(ホンヒョン)氏が語った。
「2月末にベトナムの首都ハノイで米朝会談が決裂した後、文氏は康京和(カンギョンファ)外相や鄭景斗(チョンギョンドゥ)国防部長官を米国に送り、三度目の米朝首脳会談の開催や対北朝鮮制裁の解除を要請させました。
対北経済援助で米国には負担をかけない、韓国が負担するので開城(ケソン)工業団地も金剛山(クムガンサン)観光も再開させてほしい、などとも言わせました。
米国側は全て拒否し、そのような話題であれば、米韓首脳会談はなしだと、通告したのです」
一人飯
朝鮮問題の専門家でシンクタンク「国家基本問題研究所」研究員の西岡力氏も『言論テレビ』で語った。
「朝鮮語で『一人飯』をホンバプといいます。
韓国の若者の間で一人でご飯を食べるのが増えていて、ホンバプという言葉が流行っているのです。
文氏は米国到着の10日夜がホンバプ、11日朝もホンバプ、11日昼にようやく米国側との食事にあり付いた。本当に相手にされなかったのです」
米国の厳しい態度は文政権の裏切りに対する冷遇だと洪氏が断じる。
文氏の裏切りとは、米朝首脳会談を実現させるために、文氏が金正恩氏は北朝鮮の非核化を決意していると米国に伝えたことだ。
正恩氏が表明したのは北朝鮮の非核化ではなく、朝鮮半島の非核化である。
これは韓国を守るために米国の核を使うという発想自体もなくしてしまうこと、
即ち米韓同盟の破棄を目指す言葉であり、
北朝鮮が所有する全ての核や関連施設の一掃とは、全く異なる。
当初、北朝鮮の非核化に希望を抱いたトランプ政権は、やがて正恩氏に非核化の意思がないこと、文氏の嘘を確信したと思われる。
国連制裁に違反してでも北朝鮮支援に動こうとする文氏を牽制するために、米国政府は文政権の頭越しに韓国の経済界に働きかけ始めた。
昨年9月には、ニューヨークにある韓国の七つの銀行の支店に米財務省が直接電話をして、米国が北朝鮮に制裁をかけていることを承知しているかと警告した。西岡氏が語った。
「韓国系の銀行は現在、送金業務を止めているといわれます。
もし送金に北朝鮮と関係する資金が入っていれば、米国の副次的制裁(secondary sanction)を受け、一切のドル決済が停止されるやもしれない。
そうなったら銀行は潰れます」
昨年4月27日の板門店での南北首脳会談にも、9月18日の平壌での南北首脳会談にも、文氏は多くの韓国企業代表と開城工業団地の組合長らを同行させた。
文氏は金正恩氏と共に白頭山に登ったが、そのとき正恩氏に開城工業団地組合長を紹介し、組合長に直訴させた。
「委員長様、何とか開城工業団地を再開させて下さい」と。
正恩氏は今年新年の辞で「南朝鮮の人民の要望に応えて、無条件で開城工業団地を再開する」と演説し、それを受けて文氏は開城工業団地再開で米国を説得すると公言した。
だが、北朝鮮を利するだけの工業団地再開には、前述のように米国が完全拒絶の姿勢を貫いた。
支持率は下がる一方
その間、ソウルの米大使館の専門官は文氏に同行した財閥や企業に直接電話攻勢をかけた。
米政府が北朝鮮に制裁をかけているのは承知か、と警告したのである。洪氏が強調した。
「米国は朝鮮半島での70年間に多くの教訓を得ています。
そしていま、文在寅と韓国企業を切り離しているのです。
文は米国の警告を聞かない。ならば企業や韓国国民に直接働きかけようというわけです。
核を諦めない北朝鮮に送金を続けるのか、米国との貿易や自由社会との絆を選ぶのか、と米国は迫っています」
韓国国民も文氏の危うさを実感しているに違いない。
支持率は下がる一方だ。
経済は停滞し失業率は高まり続けている。
にもかかわらず、文氏は最低賃金をこの2年間で約30%も引き上げた。
残業を規制し労働時間を大幅に短くした。
人件費は高騰し、倒産は急増、失業率がさらにはね上がる悪循環である。
笑い話のような現実を西岡氏が紹介した。
「統計上失業者が増えると困るので、文氏は60歳以上の失業者に週1回大学に行って電気を消す、又はゴミ拾いをするなどの仕事を作り、役所が賃金を払うことにしました。
税金で失業率の統計に化粧を施しているのです」
支持率低下や米国の警告にもめげず、親北路線を変えない強い反米の意思が文氏の人事から読みとれる。
一例が統一部長官に指名された金錬鉄(キムヨンチョル)氏である。
この人物は米国が韓国に要請したTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)配備に反対し、開城工業団地の早期再開を主張する反米主義者である。
同人事は韓国議会の反対にも拘わらず、文氏は考えを変えなかった。
文氏は米国に公然と対立姿勢を見せたに等しく、米国を欺く手法で開城工業団地再開をはじめ北朝鮮支援に走り出しかねない。
暴走の気配を見せる文氏に、米国が対決姿勢を強め、韓国国内では対抗勢力が力をつけつつある。
2月27日、自由韓国党の代表に黄教安(ファンギョアン)氏が選ばれた。
朴槿恵政権で法務部長官や首相を務めた公安検事出身の62歳は、文政権の安保政策と経済政策を「亡国政策」と批判する。
野党勢力はまだ弱いが、それでも文氏の足下は決して盤石ではない。韓国はいつ何が起きてもおかしくない緊張の中にある。
『週刊ダイヤモンド』 2018年7月7日号 新世紀の風をおこす
朝鮮問題専門家の西岡力氏が、シンクタンク「国家基本問題研究所」の定期会合で語った。
「韓国は政治とメディアだけでなく、司法も北朝鮮にやられてしまいました。
韓国に残っているまともな保守は在野の言論人だけです」
氏が警告したのは韓国大法院(最高裁判所)の金命洙(キム・ミョンス)院長(長官)の件だ。
金氏は1959年生まれ、59歳の若さで昨年9月、文在寅大統領によって大法院院長に抜擢された。
「統一日報」論説主幹の洪熒(ホン・ヒョン)氏が補足した。
「金氏は大法院院長になる前は、春川地方裁判所の所長にすぎませんでした。春川地裁は、韓国で最も小さな裁判所です」
そんな小さな地裁の長を務めただけの人物が、高等法院院長出身者の地位とされる大法院院長になぜ、いきなりなれたのか。再び洪氏が説明した。
「韓国では地方裁判所長が選挙管理委員会の長も兼任します。
金氏は(文氏が大統領に選ばれた)2017年5月の総選挙で、文氏と対立する政党の候補者、鎮金台氏を強引なやり方で選挙違反の罪に問い、失脚させようとしました。
春川地裁は鎮氏を有罪としましたが、高裁は無罪、最高裁は14人の判事のうち、金長官を除く13人の判事全員が無罪と判断しました。
金氏は法の番人でありながら、法よりも政治的イデオロギーを優先させる。その姿勢が文大統領に評価されているのです」
北朝鮮の金日成主席は70年代から韓国の左翼勢力を経済的に支え、優秀な人材に奨学金を与え、教育して、韓国の司法やマスコミ界に送り込み韓国内部からの革命を画策した。
そうした北朝鮮の長期戦略がいま、山場を迎えようとしていると、西岡氏が言う。
「現職の最高裁長官が、前任の長官、梁承泰(ヤン・スンテ)氏を刑事告発しようとしているのです。容疑は朴槿恵前政権との司法取引です」
再び洪氏が補足した。
「金長官は梁前長官が朴前大統領と取引したという疑惑を言い立て、最高裁内部に特別調査委員会を設置しました。
同委員会は三度にわたって調査しましたが、疑惑を裏付ける如何なる証拠も見つかりませんでした。
最高裁の判事は長官を含めて14人、
うち、長官を除く13人全員が連名で『裁判の本質を損なう司法取引疑惑には、全く根拠がなかったことは明確だ』と断定する報告書を発表しました」
にもかかわらず、事態はさらにねじ曲げられつつある。
韓国での保守勢力潰しの常套手段のひとつが乱訴である。
狙った相手を訴え、時間とエネルギーとお金を使わせ、潰してしまう。
言いがかりに等しい理由で連続して裁判を起こされ、身ぐるみはがれた言論人に「朝鮮日報」論説委員を歴任し、「韓国論壇」を主宰した李度珩(イ・ドンヒョン)氏がいる。
政治家では朴前大統領が典型的事例で、財産どころか名誉も剥奪され、拘束され続けている。
そしていま、梁氏も左翼系団体の告発に晒されている。
検察は告発状を受けて調査に乗り出した。
ソウル中央地検特捜一部が粱氏の事案の担当だ。
特捜一部は左翼労働団体の典型である法院労働組合本部長らから事情を聴いている。
金長官はこのような状況下で進んで検察の調査に協力する姿勢を見せているのだ。
だが、前述のように最高裁の判事らは長官の行動に異議を唱え、13人の判事と長官が対立状況を続けている。
まさに異常事態である。
韓国の政界は大統領以下大きく左に傾き、マスメディアも悉くと言ってよい程、北朝鮮寄りだ。
国の基本を成す司法の、その頂点である最高裁までも、左翼陣営に侵食されようとしている。
このままいけば、共産党が司法・立法・行政の三権の上に君臨する中国のような国に、韓国もなるだろう。
まさに革命が起きたのだ。
そのことを自覚して日本は危機に備えなければならない。