「身内の暴走止められない」スト頻発で生産減(ルポ迫真)
- 2019/5/11 2:00
「設備投資と輸出が弱含みで推移し、マイナス成長となった」。
韓国銀行(中央銀行)の経済統計局長が4月25日、2019年1~3月の国内総生産(GDP、速報値)を発表するのをニュースで見た経済団体「全国経済人連合会」の幹部はつぶやいた。
「経済界が一致団結しなければ乗り切れない非常事態だ」
もともと強硬姿勢で知られる韓国の労働組合は昨年来、一段と経営側との対立を深めている。
仏自動車大手ルノーグループのルノーサムスン自動車は、昨年10月から執行部の変更を機に60回以上の部分ストライキを実施した。
結果として1~4月の自動車生産は前年同期に比べて4割も減少した。
5月8日、韓国最大手の現代自動車の労組は臨時代議員大会を開き「純利益の30%を成果給として支給せよ」と要求する19年の闘争案をまとめた。
基本給の5.8%アップなど別の要求を含めると、賃上げ幅は1人当たり年1千万ウォン(約95万円)に達する。
現代自は6年連続の営業減益で業績は厳しいが、平均給与は9200万ウォン。トヨタ自動車を上回る。
それでも「正当な報酬であり、もっともらう権利がある」と主張する労組に現代自幹部は「グローバル競争の厳しさを理解していない」とあきれ顔だ。
労組の強気の裏には、自分たちが革新系政権の基盤であり、文在寅(ムン・ジェイン、66)を大統領に当選させた立役者との自信がある。
文政権も「身内の暴走はなかなか止められない」(大手財閥関係者)。労組のスト要求は造船や運輸、金融などあらゆる業種にまたがる。
その上、最近は労組以外の支持母体である革新系の市民団体でも文に厳しい姿勢が目立つ。
「文政権は企業家との不適切な面会をやめろ」。
5月2日、文政権に閣僚を送り込む市民団体「参与連帯」は、文が4月末にサムスン電子の半導体工場を訪ね、創業家出身の副会長、李在鎔(イ・ジェヨン、50)と会ったことを批判した。
経済の低迷に直面する文は財閥との連携に動き始めたが、参与連帯は「財閥に依存した輸出中心の経済は限界」と強く反発している。
弁護士らで構成する別の市民団体も文政権の貿易政策を批判する。
応援団とされてきた勢力からも包囲網を形成された文は、経済政策の修正も難しい立場に追い込まれている。(敬称略)