文在寅政権の2年
新宿会計士
日韓関係は崩壊寸前
先日、韓国の文在寅(ぶん・ざいいん)大統領の在任期間が2年を超えました。
良い機会だと思って、当時の状況を振り返ろうとして、2年前の当ウェブサイト『新宿会計士の政治経済評論』の記事『日本人よ、「日韓新時代」を覚悟せよ!』を読み返していたのですが、
そのなかで「文在寅大統領の最初の仕事は日韓関係の破壊」という予測をしていて、我ながら苦笑しています。
これは、文在寅氏が当時から日韓慰安婦合意の破棄・再交渉に言及していたことに加え、
高高度ミサイル防衛システム(THAAD)の撤回を匂わす発言を行ったり、
北朝鮮との金剛山観光事業・開城工業団地事業の再開を明言していたりした点などを手掛かりにした予想です。
ところが、文在寅政権発足からわずか2年で、現在、日韓関係は崩壊の危機にあります。
その原因はいくつもあるのですが、
文在寅政権下の韓国は以前から存在している日韓間の各種懸案(慰安婦問題、日本海呼称問題、竹島不法占拠問題)をまったく解決せず、それどころか、
- 徴用工判決問題
- 慰安婦財団解散問題
- レーダー照射問題
- 国会議長による上皇陛下侮辱発言問題
- 旭日旗騒動
などのあらたな問題を引き起こしたからです。
米国、中国との関係も悪化
ただ、不思議なことに、文在寅政権は日本との関係だけでなく、米国、中国との関係も悪化させているのです。
このことは、歴代の韓国の政権が取ってきた戦略に重ねあわせてみると、よくわかります。
というのも、従来の韓国の政権は、日本との関係を損ねても、中国や米国との関係については良好に保とうと努力して来たからです。
たとえば、韓国の金泳三(きん・えいさん)大統領(当時)は1995年11月、中国の江沢民(こう・たくみん)国家主席との首脳会談後の共同記者会見で、「日本の『ポルジャンモリ』を叩き直す」との暴言を吐きました。
この「ポルジャンモリ」とは、いわば、目上の者が目下に対して「バカタレ」、「礼儀知らず」などと蔑む際に使う単語だそうであり、こんな単語を外交の場で使うのは異例です。
ただ、この発言の裏には「中国の後ろ盾を得た安心感」があったことは間違いありません。
また、朴槿恵(ぼく・きんけい)前大統領はバラク・オバマ米大統領(当時)が取り持つまで、
安倍晋三総理大臣との日韓首脳会談に応じようとしませんでしたが、
これも「米国の後ろ盾を得て日本を叩く」という発想のあらわれと見るのが正解でしょう。
ところが、文在寅政権の2年間を見ると、韓国は少なくとも中国、米国との関係についても良好であるとは言い難い状況です。
たとえば、文在寅氏自身、2017年12月には「国賓」として中国を訪問していますが、「国賓」と言いながら、滞在期間中は何度も「ひとりメシ」を余儀なくされるなど、徹底的に冷遇されました。
翌年に訪中した安倍総理が習近平(しゅう・きんぺい)国家主席から厚遇されたのとは対照的です。
また、米国との関係については、それこそ「歴代最悪」という言葉がよく似合います。
米国の同盟国でありながら、あたかも北朝鮮の独裁者・金正恩(きん・しょうおん)のスポークスマンであるかのような言動を取っていることが、米国の信頼を決定的に損ねているのです。
政治もダメ、経済もダメ、金融もダメ
しかも、運悪く、大海に辛うじて浮かぶ小船が荒波で転覆しそうになっているかの如く、現在、国際情勢は韓国にとってきわめて不利な状況にあります。
まず、経済・金融面でいえば、いつ韓国を通貨危機が襲っても不思議でない状況が生じつつあります。
最大の輸出相手国である中国は、
米中貿易戦争の余波を受け、国際的なサプライチェーンから除外されそうになっていますし、
中国経済が崩壊すれば、対中輸出高がGDPの10%を占める韓国経済にとっても無事ではないでしょう。
また、米国のイラン制裁の影響によりイラン産の原油の輸入が難しくなったこと、
自動車メーカー・ルノーサムスンで労働争議が頻発するなかで同社の韓国撤退リスクが高まっていることなど、経済環境は非常に厳しいと言わざるを得ません。
これに加え、経済情勢を無視して文在寅政権が発動した最低賃金の引き上げは韓国の雇用状況にかなりの悪影響を与えている可能性もあるようです
(※このあたりはいずれ、機会を見て、OECD等のデータを使った分析を行ってみたいと思います)。
さらに、当ウェブサイトでは何度か触れたとおり、韓国の通貨・ウォンが対米ドルで下落しています。
韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)の報道によると、韓国ウォンは4月を通じて2.9%下落したとしており、この下落率は「主要新興国の通貨ではトルコリラとアルゼンチンペソに次ぎ、3番目」だったのだそうです。
際立つ韓国の通貨安 1カ月で対ドル2.9%下落(2019.05.12 11:15付 聯合ニュース日本語版より)
このような苦境を乗り越えるために、伝統的に韓国が持ち出して来たのが、日米との関係です。
たとえば、2008年に米リーマンブラザーズの経営破綻に端を発する世界的な金融危機が発生したときには、
韓国の通貨・ウォンが暴落し、一部では韓国経済が連鎖破綻するとの噂もあったのですが、このときは12月に入って日米などから通貨スワップを提供され、事なきを得ました。
韓国と距離を置く
用日論が頭もたげるのも当然
もちろん、今すぐ韓国を通貨危機が襲うと申し上げるつもりはありませんが、万が一、韓国経済が再び破綻の危機に瀕すれば、「2008年にときのように、日米との連携によりそれを乗り越えるべきだ」、との主張が、韓国国内では強まるでしょう。
しかし、2008年当時は李明博(り・めいはく)政権が日米との関係を比較的良好に保っていたことを忘れてはなりません。
これに対し、文在寅政権下の韓国は、日本との関係だけでなく、
米国との関係についても極端に悪化させているのであり、万が一、
現時点で韓国が通貨危機に巻き込まれたとしても、少なくとも日米両国は身銭を切って韓国を助けるとも思えません。
こうしたなかで、韓国側の「保守派」と呼ばれるメディアを中心に、最近になって頻繁に出てきているのが、「韓日関係の破綻を防ぐためには、韓日双方が譲歩すべきだ」、といった主張です。
当ウェブサイトでも、日本語版ウェブサイトを保持している東亜日報、中央日報、朝鮮日報の3紙(以下「東中朝」)の論調は頻繁に取り上げているので、
以前からの読者の皆さまはご存知でしょう(最近だと『韓国人学者「日本から見て信頼に値するのは韓国より北朝鮮」』でも触れています)。