韓経:韓国経済専門家ら「成長生態系崩れる…このままではL字型沈滞」
【ソウル聯合ニュース】
韓国の大企業が国内外で日系の金融機関から受けている融資などの信用供与額が、34兆8000億ウォン(約3兆1200億円)に上ることが分かった。
韓国金融監督院が国会政務委員会による国政監査を控え8日までに提出した資料によると、韓国に進出している日系金融機関(外国銀行の韓国支店ベース)が韓国国内の「主債務系列」に信用供与した額は6月末時点で12兆7000億ウォンだった。
金融監督院が定める主債務系列とは、金融機関からの信用供与額が一定額以上の企業グループのことで、つまり韓国屈指の企業を指す。
主債務系列に属する企業の多くが海外に法人を置いており、これら海外法人が現地の日系金融機関の与信枠を活用することもある。
海外での日系金融機関からの信用供与額は22兆1000億ウォン。
韓国国内と海外の合計は34兆8000億ウォンとなる。
日本が7月に対韓輸出規制を強化するなど、韓日関係は悪化の一途をたどっているが、金融分野に大きな変化といえる動きはない。
最近の韓国の経済指標をみると
「韓国経済は大丈夫だろうか?」と言いたくなる
最近の韓国の経済指標をみると、経済専門家としては「韓国経済は大丈夫だろうか?」と言いたくなる。
現在の世界経済を見渡すと、トランプ大統領の通商政策の影響もあり、貿易量が減少傾向をたどっている。
そのため、輸出依存度が高く、内需の割合が低い国の景気先行き懸念が急速に高まっている。その一つが韓国だ。
さまざまな経済指標を分析すると、韓国のファンダメンタルズ=経済の基礎的条件は不安定化傾向にある。
また、韓国ではデフレのリスクも高まりつつあるようだ。企業間の取引価格を反映する“生産者物価指数(PPI)”の落ち込みは、デフレ懸念が忍び寄っているように見える。
韓国経済の専門家の間では、韓国企業の経営が想定以上に悪化し経済が縮小均衡に向かうとの危惧も出始めたようだ。
今後、韓国が経済の安定感を維持していくために、政府の役割は一段と重要になるだろう。
しかし、肝心要の文在寅(ムン・ジェイン)大統領を見ていると、同氏の関心は経済よりも左派政権の維持に向かっている。
政府による本質的な意味で効果が見込める経済対策の発動が読みづらい中、韓国企業がアニマルスピリットを発揮し、新しい分野での成長を目指すことは一段と難しくなる恐れが高まっている。
デフレ懸念が忍び寄る
韓国経済
今年夏ごろから、市場参加者や経済の専門家の間で、韓国経済がデフレに陥るとの懸念が徐々に高まってきた。
PPIの落ち込みはこの見方に大きな影響を与えたといえる。
7月の生産者物価指数は前年同月比でマイナス0.3%、8月は同マイナス0.6%だった。
生産者物価指数は、企業が半製品や素材などを取引する際の価格が上昇しているか否かを克明に示す経済指標だ。
企業間取引の価格が下落するということは、国内の過剰な生産能力の問題などが徐々に顕在化していることを示唆する。
一つの例が中国だ。
2012年初旬から2016年夏場までの期間、および、今夏以降、中国のPPIは前年同月比でマイナス圏に落ち込んでいる。
これは、鉄鋼などの供給能力が過大となってしまったことの裏返しだ。PPIの上昇率が鈍化し、マイナスに陥ったということは、供給が需要を上回り、企業は過剰人員、過剰設備を抱え込んでいると考えればよい。
その状況が続くと事業の採算性は悪化する。経済の成長にマイナスだ。
その上、9月、韓国の消費者物価指数(CPI)は前年同月比マイナス0.4%に落ち込んだ。
1965年の統計開始以来、消費者物価指数の上昇率がマイナスに落ち込むのは初めてだ。これは、韓国の内需が弱含んでいることの裏返しだ。
PPIとCPIの推移をもとに考えると、企業と家計の両セクターで、支出や投資への意欲は低下しているものとみられる。
すでに内需の後退とサプライチェーン再編により、韓国の自動車生産台数は、産業基盤の維持に必要な400万台割れが目前に迫っている(2018年の生産台数は402万台)。
加えて、左派の文大統領の下、韓国では労働争議が活発化している。
エレクトロニクス分野でも経営環境は厳しい。
サムスン電子などは近年に実行した巨額投資の負担に加え、中国IT勢の価格攻勢にも直面している。
韓国経済の安定に重要な、わが国との関係も過去に例をみないほど冷え込んでしまった。
個人消費の厚みを欠く韓国経済が、自力で持ち直す展開は想定しづらい。
不安定化する
韓国経済の経済指標
経済の専門家らがデフレ懸念の高まりを指摘する一方、韓国政府は、「物価の下落は、農産物や原油価格の下落による一時的なものであり、デフレリスクは高まっていない」と主張している。
総じて、文政権は自国の経済に対して、かなり強気な見方を持っているように見える。
世界的な低金利環境下、ソウル株式市場が下落傾向となっていないことも、そうした主張の背景にあるのだろう。
ただ、さまざまな経済データを総合的に評価すると、韓国経済の基礎的条件=ファンダメンタルズは着実に悪化しているといわざるを得ない。
もともと、韓国では、サムスン電子などの大手財閥企業が大規模に設備投資を行い、輸出競争力を高めることによって成長を実現してきた。
その中で、多くの中小企業や家計は、一握りの大企業の成長の恩恵に浴する形で、経済の成長を手にしてきた。
逆に言えば、ひとたび世界的に貿易取引が低迷すると、韓国経済の成長は急速に鈍化する可能性がある。
9月まで、GDPの約40%を占める輸出は10ヵ月連続で前年同月の実績を下回った。
輸出が鈍化する中で、韓国経済の安定に欠かせない製造業の景況感も軟化している。
昨年9月以降、50を境に景気の強弱を示す製造業のPMI(購買担当者景況感指数)は、多少のぶれを伴いつつも50を下回る傾向が続いている。
韓国の景気が勢いを失いつつあるといってよい。
これは、韓国の雇用・所得環境を悪化させる主な要因の一つだ。
加えて、韓国では家計の債務が増加傾向にある。
住宅市場ではソウルをはじめ都市部の住宅価格が上昇基調を維持する一方、地方の住宅価格は下落している。
所得環境が悪化するに伴い、家計の信用力は低下し、不良債権が増加する恐れがある。
このように考えると、韓国銀行(中央銀行)は追加利下げを行わざるを得ないだろう。
利下げによって一時的な効果はあるだろうが、足もとの政策金利水準は1.50%と歴史的に低い。
金融政策に頼って韓国が景気の安定を目指すことはかなり難しいといわざるを得ないだろう。
経済運営に
目を向けない文大統領
輸出が鈍化し国内の設備投資が落ち込む状況が続くと、韓国経済はさらなるデフレ懸念の高まりに直面するだろう。
その展開を回避するには、韓国政府がどのような経済政策を進めるかが決定的に重要となる。
それは、1990年代以降の、わが国の経験を振り返るとよくわかる。
1990年代初頭、日本は“資産バブル”が崩壊した。
景気が急速に落ち込む中、1997年、わが国では“金融システム不安”が発生し、大手金融機関を中心に不良債権問題が深刻化した。
それでも政府は不良債権の処理や、構造改革を先送りし、すでに整備が一巡したインフラ投資などを行うことで、景気の浮揚を目指した。
その結果、日本経済は、“失われた30年”などと呼ばれる長期の停滞に陥ってしまった。
現在の韓国経済は、こうした状況に向かいつつあるように見える。
韓国が経済の長期停滞リスクを回避するためには、政府の役割発揮が求められる。
理論的に考えると、文政権は民間の理解と協力を得つつ、規制の緩和などを進める必要がある。
それが、ヒト・モノ・カネの経営資源が成長期待の高い分野に再配分されやすい状況の整備には欠かせない。
すでに整備が一巡したインフラ投資などよりも、新しい産業育成のために財政出動が用いられるのであれば、経済の効率性は高まり波及需要の創出効果も期待できる。
それがないままに財政出動を行ったとしても、効果は一時的なものにとどまるだろう。
問題は、文大統領にとって、改革を進めることがかなり難しいと考えられることだ。
文氏の目線は、経済の安定を目指すことよりも、「自らの立場を守ること」に向かっているように思えてならない。
特に、チョ・グク法相への捜査を食い止めるべく、文氏は検察改革を優先している。
文氏は国民の生活の安定よりも、保身を優先してしまっているように見える。
韓国経済界がこの状況に一段の憂慮を深めていることは想像に難くない。
その一方、韓国の世論にとって保守派政治への抵抗感も根強い。
当面、韓国では、政治の混迷感が高まり、それに応じて経済の停滞懸念もさらに高まってしまうという負の連鎖が続きそうだ。
(法政大学大学院教授 真壁昭夫)
経常黒字2兆1577億円 8月、18・3%増
財務省が8日発表した8月の国際収支速報によると、海外とのモノやサービス、投資の取引状況を示す経常収支の黒字額は、前年同月比18・3%増の2兆1577億円だった。黒字は62カ月連続。
経常収支のうち、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は509億円の黒字だった。輸出は8・6%減の6兆808億円で、輸入は12・7%減の6兆299億円。
企業が海外投資から得る利子や配当金の動向などを示す「第1次所得収支」の黒字は0・7%減の2兆2681億円だった。
旅行や貨物輸送を含むサービス収支の黒字は6・7%増の233億円だった。