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韓国経済を破壊し独裁化する文在寅、就任2年で露呈した限界

2019-10-13 16:11:55 | 日記

韓国経済を破壊し独裁化する文在寅、就任2年で露呈した限界

 
武藤正敏        
 
2019/05/10 06:00
 
 写真:ユニフォトプレス

 文在寅政権は5月10日で発足2周年を迎える。過去2年間の政権の評価を朝鮮日報、中央日報等、韓国の主要紙の記事を基に分析し、解説したい。

文在寅大統領の支持率と

主要政策への評価には大きな乖離

政権発足2周年を迎えるに当たり、韓国ギャロップが4月10日に行った世論調査によると、文大統領の支持率は45%で、就任当時の84%と比べると大幅に低下したが、それでも就任後2年時点の比較では、歴代大統領の中でも金大中氏に次ぎ2位である。

しかし、同政権の経済・外交・対北朝鮮政策などを肯定する評価は就任1年時点と比べほぼ半減し、朝鮮日報によれば落第点に近い評価であった。

各政策を肯定する評価と否定する評価は、経済政策が「肯定23%:否定62%」、公職人事が「肯定26%:否定50%」、雇用労働政策は「肯定29%:否定54%」であった。

文政権が力を入れる北朝鮮政策でも、過去1年間で肯定的評価が83%から45%に、外交政策でも74%から45%に大幅に低下している。

このように、文政権の政策への支持が急降下しているにもかかわらず、支持率が依然として歴代2位にあるのには韓国特有の事情があるからだ。

韓国では朴正煕(パク・チョンヒ)、全斗煥(チョン・ドファン)大統領と軍事政権が続き、軍事革命や光州事件といった暗いイメージが付きまとっている。

これを打倒すべく立ち上がったのが、金泳三(キム・ヨンサム)、金大中(キム・デジュン)といった民主政治家であり、「民主政治家=革新系」とのイメージができているのである。

韓国人は、「頭ではなくハートで考える」といわれるが、頭で考えれば、文政権の政策は韓国の多くの人々に受け入れられていないが、無条件で革新系を支持する市民がいまだに多いということであろう。

製造業の「脱韓国」が進む

経済・雇用政策の破綻

朝鮮日報は「発足2年で国民を生活苦に追い込んだ文在寅政権」と題する社説を掲載している。

朝鮮日報と韓国経済研究院による世論調査で、文政権発足後、生活が苦しくなったと感じている人が58.9%、1年前の調査時点(28.8%)の倍に達している。

特に自営業者は82%が文政権の発足後、生活状況が悪化したと回答した。

昨年廃業した自営業者は100万人を超えた。

所得主導成長政策が弱者の財布を補うどころか、貧しさを増幅させた。それでも政府の対応は税金をつぎ込み、見せかけの雇用を作り出し、福祉名目で現金をばらまくだけである。

さらに中央日報は「文政権の反市場政策2年間で…製造業が『脱韓国』」と題する記事を掲載している。

韓国の海外直接投資は07年から17年まで毎年80億ドル前後を維持してきたが、18年はその倍の164億ドルに達した。

それは国内生産環境、経営環境の悪化による生産拠点の海外脱出である。

賃金の上昇、労働時間の制限、法人税の引き上げ、規制強化または法制度の変革など国内の事業環境は悪化しており、「今韓国で事業を拡張する者は『愛国者』」だと皮肉る声も聞く。こうした企業の脱出は韓国の質の高い雇用を奪っている。

さらに東亜日報は、4月1ヵ月間のウォン安は金融不安のトルコに次いで2位であり、これは韓国内外の投資家が韓国経済の減速ぶりが尋常でないと受け止めているからであるとの分析を紹介している。

このように、文政権の経済政策は韓国の経済力を弱体化させ、雇用を奪い、国民を生活苦に追いやっている。

韓国国民の経済、雇用政策に対する肯定的評価がいずれも20%台に低迷しているのも理解できる。

対北融和姿勢が

米朝会談の物別れの一因

過去2年間の中で、文在寅大統領、韓国国民ともに一番失望したのが北朝鮮との関係だろう。

文政権としては、米朝首脳会談を成功させ、これをきっかけに北朝鮮への経済協力に乗り出す腹積もりであった。

しかし、2月末のベトナムにおける米朝首脳会談は物別れに終わった。

韓国は米朝双方から、これまでの役割を否定されている。

北朝鮮は4月27日の南北首脳会談1周年記念に姿を見せなかった。

加えて、北朝鮮は、文氏は米朝の仲介役ではなく米国の同盟者であると反発した。

文氏は米韓首脳会談の単独会談が実質2分に終わり、米国からも仲介者としての役割を事実上否定されている。それはこれまで韓国が米朝対話を促すため、聞き心地の良いことを言い、双方をミスリードしてきたからであろう。

これまで文政権の最大の“売り”は北朝鮮との関係改善によって、南北の緊張緩和を図ってきたことである。

しかし、韓国が実際にやったことは、一方的な北朝鮮に対する軍事力の削減である。

昨年の南北首脳会談の際の軍事合意で、38度線付近での偵察飛行と合同軍事演習の中止は、韓国軍の作戦能力を一方的に低下させるであろう。

また、最近では軍事装備の強化をおろそかにしつつ、米韓連合軍の指揮権を韓国に返還させる動きを示している。

国の安全保障を維持強化するのは大統領の責務である。

それをおろそかにし、北朝鮮との接近を図ることは韓国の安全を脅かすもとになりかねない。

文大統領が進める積弊清算は

就任演説になかった

大統領の最も重要な任務は、国民の融和を図り、国民の団結をもたらすことである。

しかし、文大統領は北朝鮮との融和に熱心であるが、国民の融和に対する関心がないのではないか。

大統領は2日、各方面の有識者を招いた懇談会で、「ある方たちから、もう積弊清算はやめて、統合に向かって進むべきだとよく言われる」とした上で、「生きて動く捜査に対し政府は統制できないし、また統制すべきでもない」と述べた。

積弊精算とは、朴槿恵前政権が行った政策を正し、精算するという意味だ。朴槿恵前政権の不正疑惑の捜査もこれに当たる。

文大統領の言葉は、積弊清算やその捜査が文氏の意向とは関係なく捜査機関独自の判断で始まり、今も続いているように聞こえる。

しかし、文大統領は、「時効が過ぎた事件でも事実関係を究明せよ」と指示を出している。

文大統領にとって、積弊清算は就任直後に挙げた国政課題の第一であり、「自分が最も重視するのは積弊清算」なのである。

ちなみに、就任演説では「積弊清算」という言葉は1回も使われず、国民統合をやたら強調していたという(朝鮮日報)。

このやり取りを聞いていると、徴用工問題に関し、「司法判断を尊重する」と述べただけで、問題の解決を投げ出しているやり方と同じである。

このように自分にとって面倒なことは他人に押し付け、逃げている大統領を国民が心底から尊敬できるであろうか。

うまくいかない焦りから

ますます独裁志向に

文政権はますます独善的な政策を進めている。民主主義の基本である議会を無視し、言論弾圧に走っている。

文政権の特徴の1つが、行政に関して未経験の人材でも、文大統領の考えに近い政治活動家を要職に就けていることである。

そのため、強引なやり方で人事を断行しており、公職者の任命に関する評価が低い。

現政権になって国会の報告書採択なしに任命された人事聴聞対象者は計15人。

直近では「高額株投資」で物議をかもした、李美善(イ・ミソン) 氏を憲法裁判官に任命した。

また、開城工団、金剛山観光事業の実施に情熱を燃やす金錬鉄(キム・ヨンチョル)氏を統一部長官に任命した時も、野党の反対を押し切って強行した。

言論に対しても今年3月、与党である共に民主党が、ブルームバーグ記事の見出しで文在寅大統領を「金正恩(キムジョンウン)氏の首席報道官」と表現した韓国系の記者を公の席で非難した。

さらに警察は、ソウル大学、延世大学、釜山大学など全国100以上の大学で文在寅大統領を「王」に例え、「経済王」「雇用王」「太陽王」と表現し、「彼(文大統領)の偉大な業績に酔ってみましょう」などと風刺したことに対し、厳しい捜査を行った。

この風刺では現政権による「自分がやったら恋のロマンス、他人がやったら不倫」式の時事に対する批判も込められている。

こうした与党や警察の締め付けに関し、米国の知韓派有識者は文大統領に公開の書簡を送り、「韓国政府は名誉棄損を乱用し、政治的に反対の意見を検閲している。

この点を懸念する」と憂慮を示した。

また、「国境なき記者団」や国際新聞編集者協会も、「記者は政府の応援団ではない」「記者の役割は公益の事案に対し独立かつ批判的に報じることだ」と批判している。

韓国では、現政権の施策がいずれも壁にぶち当たっており、打開の道も見当たらなくなってきている。

また、大統領周辺や政権幹部、与党関係者を巡るスキャンダルが頻発している。そのため、大統領や政権に対する批判には極めて敏感になっており、批判を抑圧する傾向を強めている。

与党、共に民主党が

目指すのは20年政権

文大統領とその与党は、大統領の任期が終わった後、保守派が政権を奪回すれば、今度は自分たちがたたかれることを恐れ、革新政権の存続にきゅうきゅうとしている。

文大統領を擁立する革新政権は、今後20年間政権を維持することをもくろんでいるといわれる。

そのために行おうとしているのが、「選挙法」の改正と「高位公職者不正捜査処設置法 」の成立である。

これは地域区の議席数を大幅に減らす代わりに、比例代表の議席を増やすことを骨子としている。

新しい選挙法に基づき選挙を実施した場合の結果をシミュレーションしたところ、「自由韓国党」はマイナス20議席に対し、弱小与党の議席は大幅増になるという。

また、「高位公職者不正捜査処設置法 」は、検察と裁判官、警察などの高級公職者の不正を捜査し、起訴できるもう1つの「司法機関」を設置する法案である。

これらの与党にとって都合のいい法律が、ファーストトラック(迅速処理案件指定)で審議する法律が、自由韓国党を除く与野党4党の合意で先月国会に上程されたが、共に民主党はこれを押し切る意向ではないかとみられている。

政権存続のための備えは、政権発足以降継続して進めてきている。

青瓦台主導の国政運営を行い、国防部、外交部などを思うように動かしている。

主要政府機関の局長以上のポストには政治活動家を送り込んでおり、あらゆる行政事項をコントロールしている。そして、国家情報院、検察、警察、国防部などの権力機関の改革を行い、革新系の支配を強めている。

 司法は憲法裁判所、大法院とも文大統領が任命した裁判官が主流となっている。マスコミに対しても放送局人事を行い、文政権支援の放送を行わせている。

 文在寅政権がこのまま権力基盤を固めていけば、革新系の地盤が一層強固なものになりかねない。

文政権と過去の軍事政権は

どこが違うのか?

過去の軍事政権に正統性がなく、国民の反発があったのは、朴正煕氏、全斗煥氏がともに、軍事クーデターで政権を奪取したこと、そして朴氏の場合、国民の反対を押し切り日韓国交正常化を果たしたこと、全氏の場合は光州事件で市民を弾圧したことが挙げられる。

文氏の場合には、民主労組や全教組など、北朝鮮との関連が疑われる革新系の主導によるローソク革命で朴槿恵氏を政権の座から追い出したが、そこには市民の絶大な支持があったため、逆に市民の文氏に対する蜜月期間が長くなったといえる。

しかし、実際には朴氏は清廉な人物であり、発端となった崔順実(チェ・スンシル)氏とのやり取りを記録したとされるPCも偽物であったといわれ、同氏に対する嫌疑にはでっち上げの側面があった。

そこから見えるのは、軍事力は使わないまでも巧妙に仕組まれた「革命」であるという点では共通性があることである。

過去の政権は、軍事的な力を背景に独裁的な政権を築き、特に朴正煕氏の場合には生涯大統領を目指したとされている。

ただ、それは、国の発展のため、自分がやらなければとの強い思いが背景にあったともいわれている。

現に朴氏、全氏の時代には韓国は高度経済成長を続けてきた。

文大統領が韓国の教科書から「漢江の奇跡」に関する記述を削除させた(朝鮮日報)といわれるが、いかに隠そうとしても朴氏の実績は消えるものではなく、歴代大統領の中でいまだに最も評判の高い大統領である。

文氏の場合、これまで述べてきたように、三権分立を否定し、行政府ばかりでなく立法、司法を掌握し、政権を20年存続させようとしている。

そこには軍事政権と同じように、独裁政権の延命の意図が見える。ただ、大きな違いは韓国経済を破壊していることである。

いかなる政権を選択するかは韓国国民の問題ではあるが、韓国国民が情緒的に文政権を支持するのではなく、文政権の現実を理解し、判断することが極めて重要になっている。文政権に対する後世の評価が見たい。

(元・在韓国特命全権大使 武藤正敏)