2919年10月28日
利益9割減の企業もある真壁 昭夫
足元で世界的に半導体市況の低迷が鮮明化している。
それに伴い、半導体産業への依存度が高い韓国経済は一段と厳しい状況に追い込まれつつある。
10月24日、世界第2位のDRAMメーカーである韓国のSKハイニックスが発表した7~9月期の決算では、営業利益が前年同期比93%減となった。
世界最大手サムスン電子の業績も減益続きだ。
中国では、今後、積み上がった債務問題が深刻化することも懸念される。
中国向けの輸出が短期的に回復することは考え難い。
中国など海外への輸出依存度の高い韓国経済は、これからさらに厳しい状況を迎えることが懸念される。
文在寅政権の経済政策の運営が一段と重要になるはずだ。
厳しさ増す韓国半導体企業を取り囲む環境
近年の韓国経済は、中国などへのIT関連部品などの輸出によって景気の拡大を維持してきた。
それを主導したのが、サムスン電子とSKハイニックスの大手エレクトロニクス企業だった。
ただ、ここへ来て、両社ともにドル箱の半導体事業の業績が悪化している。
特に、SKハイニックスの業況は深刻だ。
7~9月期SKハイニックスは、DRAM価格の下落が大きく響き大幅な減益に陥った。
同社では半導体の在庫が積みあがっており、生産能力の調整も避けられないと見られる。
同社の経営陣は徐々に半導体市況が持ち直すとの見通しを示しているが、今のところ先行きは不透明だ。
その背景には、世界的に米中貿易摩擦への警戒感が高まったこともあり、半導体需要が弱含んでいることがある。
米国ではマイクロン・テクノロジーが設備投資計画を縮小した。
テキサス・インスツルメンツも顧客からの発注減少に直面している。
投資を先送りする半導体関連企業が増え、動作制御機器を手掛けるわが国の安川電機も減益に陥った。
それに加えて、米中の貿易摩擦にはIT先端分野での覇権国争いの側面がある。
米中の覇権国争いが落ち着くまでには相応の時間がかかり、直ぐに事態が大幅な改善に向かうことは考え難い。
世界全体で設備投資が減少し、世界の半導体市況が更に冷え込むリスクは過小評価できない。
今後、さらなる成長率低下の懸念
半導体輸出に依存してきた韓国経済の先行きは不安だ。
韓国経済は外需という輸送機にけん引されるグライダーに例えられる。
中国など外部環境が好転すると、財閥企業が輸出競争力を発揮し韓国の景気は上向く。
反対に外部環境が悪化すると輸出は減少し、景気減速が鮮明化する。
足元のSKハイニックスなどの業績悪化は、韓国経済にとっての成長のけん引役が力を失いつつあるといえる。
最近の韓国経済を見ると、所得・雇用環境が悪化し内需の脆弱さも鮮明化しているようだ。
目先、米中が特定分野での合意にこぎつけることができれば、一時的に韓国経済の先行き懸念が低下する可能性はある。
ただ、それが長続きするか否かは不透明だ。
今のところ、韓国は半導体に代わる成長産業を育成できていない。
また、左派の文政権は企業経営を支援するのではなく、むしろ企業を圧迫するような政策をとり景気下押し圧力を助長してしまった。
世界経済を概括すると、債務問題の深刻化などにより中国経済の減速懸念は強い。
今すぐではないにせよ、世界経済を支えてきた米国の景気後退懸念も高まることも懸念される。
外部環境の悪化に伴い、韓国の経済成長には一段の下押し圧力がかかるものとみられる。
その場合、労組が賃上げを求め企業経営が追い込まれる展開も考えられる。韓国経済の先行きに楽観は禁物だろう。