文在寅「最悪の失業率」にも無策…若者の不満がいよいよ爆発寸前
真壁 昭夫(法政大学大学院教授)
6/15(月) 7:01配信
現代ビジネス
最悪の失業率
現代ビジネス
韓国の労働市場が急激に悪化している。
5月の失業率は4.5%に上昇した。その水準は、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が就任して以降で最悪だ。
重要なポイントは、就業機会が限られてきた若年層を中心に、働く能力があるにもかかわらず、仕事探しをあきらめざるを得ない状況に追い込まれていることだ。
失業率上昇の背景には、かなり根の深い問題がある。韓国の主要産業分野は、主に他国からの技術移転によって実力をつけてきたケースが多い。
それは経済発展にとっては、かなり効率的な手法といえるだろう。
しかし、世界経済の発展段階が進むと技術水準は上昇し、競争も激化することは避けられない。
今後、中国企業の台頭に伴い、これまで顧客だった中国企業はいずれライバルになることが予想される。
コロナショックによって世界全体で貿易取引は減少し、貿易依存度の高い韓国企業の業績懸念は高まっている。
韓国では労働組合の力が強く、経営者は収益を守るために新卒採用や若年層の雇用を制限せざるを得ないだろう。
米中の対立激化で、短期的には韓国企業が漁夫の利を得ることはあるだろうが、それは長期間続くとは考えにくい。
少し長い目で見ると、韓国経済の労働市場はさらなる悪化に向かうリスクは高まっている。
韓国企業に求められること
韓国経済の基本的な構造は、海外から資材を輸入し、国内の財閥系大企業を中心に大量生産を行い、それを輸出することで成長してきた。
ただ、コロナショックの発生を境に世界の貿易取引が低迷し、韓国が輸出で景気の安定を目指すことは難しくなっている。
企業は生き残りをかけてコストカットを進めざるを得なくなり、人員の解雇が増え、失業率が大きく上昇している。
当面、その状況は続く可能性が高い。
韓国経済の稼ぎ頭である半導体産業は、技術や人材、さらには資金を海外に依存するケースが多かった。
一方、韓国の自動車部品業界では1~3月期の業績悪化に続き、4~6月期は資金繰りの悪化などから存続そのものが危うくなると、先行きを懸念する企業が増えているようだ。
コロナウイルスの影響もあり、足元で自動車に対する需要は世界的に低迷している。
そうした状況の変化もあり、起亜自動車は国内の生産ラインを一時停止せざるを得なくなっている。
文政権が2020年の最低賃金を前年から2.9%引き上げることも、企業の収益の足を引っ張ることになっている。そのマイナス面は見逃せないファクターだ。
それに加えて、韓国は中国企業との競争にも対応しなければならない。
共産党政権の補助金政策によって、コストを抑え、急速に生産体制を整備している中国との競争を韓国が有利に進めることは難しい。
LG化学は中国企業の追い上げに対応しきれなくなり、偏光板事業を中国企業に売却する。
問題は、韓国企業が成長分野を見いだせていないことだ。
懸念される若年層の失業率の高さ
韓国では、働く能力があるにも拘らず求職を止めざるをえない人が増えている。
それは、韓国の社会・経済にとって大きなマイナスだ。
将来への悲観心理が増えれば、消費も投資も落ち込む。
それを回避するためには、文政権が規制緩和や最低賃金の見直しなどを進め企業経営を支援しなければならない。
しかし、実際には、文政権は商法を改正し、企業の価格設定や入札などに疑念を持った人が検察に告発できるよう制度を改革する意向だ。
告発があった場合、検察は必ず捜査しなければならない。
競争原理の発揮ではなく、企業への監視の目を強める文政権の政策は、企業家のアニマルスピリットを委縮させる。
また、文氏が米中対立の先鋭化にどう対応するかも不透明だ。
9月に台湾のTSMCは米国の制裁強化に対応するためにファーウェイからの受注を止める。
今のところ半導体生産能力が十分ではないファーウェイは、サムスン電子などから部品供給を確保したいと考えるだろう。
問題は、韓国サイドがそうした中国企業からの要請にどう対応するかだ。
米国のトランプ大統領は、韓国を米国の陣営に引き入れるべく9月のG7サミットに招待する。
米中のはざまで、韓国はいかに振舞うか注目される。
コロナショックによって世界経済の低迷が続く中、韓国がこれまでのように外需を取り込むことはかなり難しい。
企業は生き残りと労組への対応のために若年層の雇用を抑制せざるを得ず、社会全体に将来への悲観や閉塞感が蔓延しなければよいと考える。
真壁 昭夫(法政大学大学院教授)
真壁 昭夫(法政大学大学院教授)
6/15(月) 7:01配信
現代ビジネス
最悪の失業率
現代ビジネス
韓国の労働市場が急激に悪化している。
5月の失業率は4.5%に上昇した。その水準は、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が就任して以降で最悪だ。
重要なポイントは、就業機会が限られてきた若年層を中心に、働く能力があるにもかかわらず、仕事探しをあきらめざるを得ない状況に追い込まれていることだ。
失業率上昇の背景には、かなり根の深い問題がある。韓国の主要産業分野は、主に他国からの技術移転によって実力をつけてきたケースが多い。
それは経済発展にとっては、かなり効率的な手法といえるだろう。
しかし、世界経済の発展段階が進むと技術水準は上昇し、競争も激化することは避けられない。
今後、中国企業の台頭に伴い、これまで顧客だった中国企業はいずれライバルになることが予想される。
コロナショックによって世界全体で貿易取引は減少し、貿易依存度の高い韓国企業の業績懸念は高まっている。
韓国では労働組合の力が強く、経営者は収益を守るために新卒採用や若年層の雇用を制限せざるを得ないだろう。
米中の対立激化で、短期的には韓国企業が漁夫の利を得ることはあるだろうが、それは長期間続くとは考えにくい。
少し長い目で見ると、韓国経済の労働市場はさらなる悪化に向かうリスクは高まっている。
韓国企業に求められること
韓国経済の基本的な構造は、海外から資材を輸入し、国内の財閥系大企業を中心に大量生産を行い、それを輸出することで成長してきた。
ただ、コロナショックの発生を境に世界の貿易取引が低迷し、韓国が輸出で景気の安定を目指すことは難しくなっている。
企業は生き残りをかけてコストカットを進めざるを得なくなり、人員の解雇が増え、失業率が大きく上昇している。
当面、その状況は続く可能性が高い。
韓国経済の稼ぎ頭である半導体産業は、技術や人材、さらには資金を海外に依存するケースが多かった。
一方、韓国の自動車部品業界では1~3月期の業績悪化に続き、4~6月期は資金繰りの悪化などから存続そのものが危うくなると、先行きを懸念する企業が増えているようだ。
コロナウイルスの影響もあり、足元で自動車に対する需要は世界的に低迷している。
そうした状況の変化もあり、起亜自動車は国内の生産ラインを一時停止せざるを得なくなっている。
文政権が2020年の最低賃金を前年から2.9%引き上げることも、企業の収益の足を引っ張ることになっている。そのマイナス面は見逃せないファクターだ。
それに加えて、韓国は中国企業との競争にも対応しなければならない。
共産党政権の補助金政策によって、コストを抑え、急速に生産体制を整備している中国との競争を韓国が有利に進めることは難しい。
LG化学は中国企業の追い上げに対応しきれなくなり、偏光板事業を中国企業に売却する。
問題は、韓国企業が成長分野を見いだせていないことだ。
懸念される若年層の失業率の高さ
韓国では、働く能力があるにも拘らず求職を止めざるをえない人が増えている。
それは、韓国の社会・経済にとって大きなマイナスだ。
将来への悲観心理が増えれば、消費も投資も落ち込む。
それを回避するためには、文政権が規制緩和や最低賃金の見直しなどを進め企業経営を支援しなければならない。
しかし、実際には、文政権は商法を改正し、企業の価格設定や入札などに疑念を持った人が検察に告発できるよう制度を改革する意向だ。
告発があった場合、検察は必ず捜査しなければならない。
競争原理の発揮ではなく、企業への監視の目を強める文政権の政策は、企業家のアニマルスピリットを委縮させる。
また、文氏が米中対立の先鋭化にどう対応するかも不透明だ。
9月に台湾のTSMCは米国の制裁強化に対応するためにファーウェイからの受注を止める。
今のところ半導体生産能力が十分ではないファーウェイは、サムスン電子などから部品供給を確保したいと考えるだろう。
問題は、韓国サイドがそうした中国企業からの要請にどう対応するかだ。
米国のトランプ大統領は、韓国を米国の陣営に引き入れるべく9月のG7サミットに招待する。
米中のはざまで、韓国はいかに振舞うか注目される。
コロナショックによって世界経済の低迷が続く中、韓国がこれまでのように外需を取り込むことはかなり難しい。
企業は生き残りと労組への対応のために若年層の雇用を抑制せざるを得ず、社会全体に将来への悲観や閉塞感が蔓延しなければよいと考える。
真壁 昭夫(法政大学大学院教授)