少子化世界一の韓国の若者に漂う絶望は日本の未来か
4/5(月) 6:01配信
韓国・ソウルの若者(写真:ロイター/アフロ)
日本以上に少子高齢化が加速度的に進む韓国。
かつて女性は20代前半、男性も30歳までに結婚し、子供を3人以上持つといったライフプランが一般的だった。
しかし、現在ではそれも大きく様変わりし、最近の調査では、30代の未婚者の50%以上が親と同居しているという結果も出ている。
若者たちが夢を描くなった原因はどこにあるのだろうか。
先月30日の聯合ニュースの報道で驚くべき調査結果が伝えられた。
韓国統計庁が20~40代の未婚者を対象にしたところ30代の未婚者で親と同居している人の割合は54.8%にのぼるという結果が出た。
40代でも44.1%という結果である。
これと併せて親と同居する20~40代の未婚者の42%が非就業であると判明し、経済的に自立が困難な若年、中年が多いことを示しているが、こうした成人は「カンガルー族」と呼ばれている。
かつては、子どもは成人したら親から独立する代わりに、子どもたちが協力して親の老後まで面倒を見るのが一般的とされてきた。
親が年を取っても働き続け、成人した子どもの面倒を見ざるを得ない時代が来ることを誰が想像したであろうか。
また、結婚の平均年齢についても2019年で男性は33.3歳、女性が30.5歳で、若干ではあるが日本よりも遅い傾向となっている。
ちなみに、2001年は男性29.6歳、女性26.8歳であり、約20年の間に3~4年結婚適齢期が遅くなったということである。
2000年代初めまでは20代前半で結婚・出産をするケースもまだ珍しくなかったものの、現在は逆に20代で結婚・出産をするケースは稀になったと言える。
2020年からの新型コロナの影響もあり、今年、来年以降の結婚や出産件数もさらに減少するという悲観的な見方も出ている。
■ 韓国の充実した子育て支援の中身 女性が一生のうちに子どもを生む平均を算出した特殊出生率を見ると、韓国では2020年に0.84と遂に1を下回り世界最低水準を記録した。
周囲を見ても子どもの数は一人っ子または二人までいった家庭が目立つ。
そんな中でも子どもが3人以上の家庭もあり、そうした家庭は「多子女家庭」と呼ばれる。
少子化が顕著になる中で、子どもが3人以上いる場合、年配者たちがよく口にすることが「愛国者」という言葉だ。
つまり、子どもが少なくなっているこの時代に多くの生み育てていることが国に貢献しているということなのだろう。
このあたりの感覚はいかにも韓国らしいというか驚きでもある。
現在の50~60代が生まれた1950~60年代は日本のベビーブーム時代に匹敵するほど、出生率が高い時代であった。
そのベビーブーム世代のジュニア世代に当たるのが1970~90年代初めの世代である。
1973年生まれの李さん(男性)は高校生と小学生の子どもを持つ父親でもあるが、自分の時代を振り返りつつ、現代と比較してこう言う。
「娘の大学受験を見ているとやっぱり大変とは言え、自分の時代と比べるとずいぶんと楽になったものだと思います。
僕の時代は同学年が約80万人いる時代で、それこそ小学校の頃は1クラス50人が当たり前、その分、大学の数も少なく今よりも競争が激しい時代でした」
確かに現在では、小学校の1クラスの生徒数は25人から最大でも30人程度までである。
大学は地方に至っては定員割れをしている大学も多く、学生の獲得に奔走している状態だ。
そういう意味では、李さんの言うように、昔に比べて教育環境が改善している状況だ。
大学も全入時代になりつつあり、恵まれていると言えるかもしれない。
しかし、子どもを育てる親側の負担は体力的にも経済的にも現在の方が重いと言えるかもしれない。
前述のように3人以上の子どもがいる家庭のことを韓国では「多子女家庭」と呼ぶ。
そうした家庭に国や自治体も支援を積極的に行っている。
支援の一部を紹介すると、母親が未就業や非正規就業者の場合でも保育園への優先的な入園を可能にするといった措置、あるいは自治体にもよるが、施設の利用や買い物の際の割引カードの発行や、1年間の牛乳の無料提供など様々なサービスを実施している。
また、一世帯あたりの子どもの数に限らず、未就学児や高校の無償化が始まっているほか、大学については2022年度より、世帯で3番目以降の子どもで所得制限が該当する場合は学費の全額免除を受けられるようになった。
この他にも、国の奨学金(返済不要)の受給など多子女家庭の教育費による経済的負担を軽減すべく、対策を打ち出している。
このように、子育て支援が充実しているようにも見えるが、韓国では学校以外での私的な教育(私教育)にかかる比重が大きい。
ソウルの場合では、一人あたりの子どもにかける私教育の費用は1カ月32万ウォン(日本円で約3万1000円)というデータもあり、子どもの人数が多ければ多いほど、その負担もかさむ。
また、高所得者層と低所得者層の私教育費の差は5倍にもなるという。
国や自治体がいくら支援をしたとしても、根本的な経済的負担が解決しなければ、子どもを生み育て上げることへのビジョンが持てないだろう。
それも少子化を加速させている一因と言える。