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高学歴でも就職できない 厳しさ増す韓国就活事情

2021-05-26 17:20:26 | 日記

高学歴でも就職できない 厳しさ増す韓国就活事情

「韓国での就職は考えませんでした。努力したわりに得られるものが少ないから」
こう話すのは、韓国の名門大学を卒業した男性です。

TOEFLのスコアは世界のトップクラスの大学にも進学できる100点を超え、京都大学に留学した経験もあります。

その彼が就職したのは韓国ではなく日本の企業でした。

その理由を取材すると、韓国社会の厳しい就活事情がありました。(国際部記者 金知英)

すべては大企業に就職するため

「名門大学に行けば、成功すると言われてきました」こう話すのは、26歳の韓国人男性です。

韓国は「名門大学に入って大企業に入ることが成功」と言われるほどの学歴社会。
 
男性も子どものころから、こうしたことばを周囲から聞いて育ち、受験競争を勝ち抜くために勉強漬けの生活だったといいます。
 
中学時代は3つの塾を掛け持ちしながらほぼ毎日、塾通い。特に英語は猛勉強し、中学3年生の時には、TOEFLで世界トップレベルの大学に進学できる104点のスコアを獲得。志望校にも合格しました

高校に入ってからも遊びや友人づきあいなどは我慢し、勉強、勉強の毎日だったといいます。そして、念願の志望大学に合格。

男性が合格したのは、韓国で「SKY(スカイ)」と呼ばれるソウル、コリョ(高麗)、ヨンセ(延世)の3つの有名大学のひとつ、コリョ大学です。
 
まさに子どものころから親が期待し、自身も目標にしてきた名門と呼ばれる大学でした。

卒業式での男性(右)
しかし喜びもつかの間、大学に入っても猛勉強と競争は終わりませんでした。

それどころか、むしろ激しくなるばかり。男性は、大学院への進学を考えた時期もあったといいます。

大学1年生から始まる就職活動

「韓国では死ぬ気で勉強して大学に行けたとしても、そこで終わりではないんです」

男性がこう話す理由は、韓国の過酷とも言える就職活動事情があります。

韓国では、大企業に就職するためには「高学歴」をはじめとする「スペック」と呼ばれる実績が必要だといいます。
 
この「スペック」を積むために、事実上、大学1年生から就職活動が始まるというのです。
 
就職活動で評価される「スペック」には、主に次のようなものがあるといいます。
 
・学歴(どの大学を卒業しているか)
・英語力(TOEICなどで高スコアを持っているか)
・成績(大学での成績は優秀か)
・企業でのインターンシップ
・海外経験(留学などの経験があるか)
・学外での活動(企業の学生向けプログラムの参加経験など)

大企業に入るには、各学期の成績は、上位のA以上を維持しなければなりません。
 
実際、男性も試験の時期になると長い時で2週間ちかく、ほぼ寝ないで準備をしたといいます。

加えて男性は在学中、アフリカで子どもたちを支援するNGO活動、ソウル高等裁判所でのインターン、政党傘下の研究所での研究補助、日本の京都大学への留学といった「スペック」を必死に積み上げていきました。

高学歴、“ハイスペック”でも就職できない?

いったい、どれほど「スペック」を積み上げればいいのだろうかー。

高学歴でハイスペックと言われる先輩や友人たちであっても、就職活動がうまくいかず苦しむ姿を数多く目の当たりにし、疑問を感じるようになったといいます。
 
「優秀な成績や課外活動のためにかかる準備や費用が膨大な一方で、大企業に入るのはとても大変。
 
それに、せっかく大企業に入れても40代、50代になると会社から出て行けという圧力があるのを知っていたので、こんな現状なら韓国での大企業の就職を目指すのは難しいと思いました」
 
高学歴であっても、大企業に入るのが難しいというのは、どういうことなのか。

専門家に話を聞くと、背景に「構造的な問題がある」と指摘。そこでデータを分析してみました。

韓国の2020年の現役の大学・短大への進学率は、72.5%(韓国教育省)。
 
単純に比較はできませんが、日本の大学・短大への進学率は58.6%で、韓国は日本を大きく上回っています(文部科学省・学校基本調査)。
一方で、韓国で大企業と定義される企業の数は2391社で、割合は全体の0.3%。
 
大企業で働く人の割合は全体の20%にとどまっていました(2019年・韓国統計庁)。

たしかに韓国では大学への進学率が高い一方で大企業の数が限られているため、構造的な難しさがあるようにも思えます。
 
さらに、韓国の大企業と中小企業の1か月の平均賃金を見てみるとー。

大企業515万ウォン(約49万円)中小企業 245万ウォン(約23万円)。※換算レートは3月10日時点(2019年・韓国統計庁)
 
大企業の賃金は、中小企業の倍以上となっていました。大卒者の多い韓国では日本以上に大企業指向が強い傾向があると専門家は指摘しています。

また、こうしたこともあり、2020年の韓国における15歳から29歳の失業率は9%と、全体の失業率4%を大きく上回り、慢性的な就職難が社会問題となっているようです。(韓国統計庁)

追い打ちかける「常時採用」「即戦力」

ただでさえ厳しい韓国の大学生たちの就職活動に、追い打ちをかける動きが、近年、出てきています。
 
「高学歴」「ハイスペック」に加え、「即戦力」までも求める傾向が強まっているといいます。

「精神的にきついです。いつ就職活動が終わるのかわからず不安です」

こう話すのはソウルのチュンアン(中央)大学のユ・ヘヨンさん(25歳)です。

ユさんが不安に感じているのは「常時採用」を導入する企業が増えてきていることです。
 
これは、日本でも主流の、まとめて採用する「定期採用」に対して、必要な時期に必要な人数だけを採用するというものです。
 
世界の企業との激しい競争の中で、即戦力を欲しがる傾向が強まっているのです。

ユさんは大企業に就職するために卒業を1年延ばし、マーケティングを代行する会社でインターンを経験したほか、TOEICのスコアで940点を獲得するなど「スペック」を積んできました。

それでも「常時採用」が広がれば、より「即戦力」人材が求められるようになるため、新卒には不利になると感じています。
ユ・ヘヨンさん
「名門大学、大企業に入ることがよいことだという意識を植え付けられているので、今、大企業に入れないと負け組になったような気分になって、生きていけないような気がします」
 
韓国の雇用政策に詳しいニッセイ基礎研究所のキム・ミョンジュン主任研究員は、「常時採用」が広がれば、大企業への就職はより厳しいものになると指摘しています。

ニッセイ基礎研究所 キム・ミョンジュン主任研究員
「長期で社員を育成する『定期採用』は、途中で辞める人数を見込んで多めに採用しますが、『常時採用』では必要な『即戦力』しか採用しない。
 
採用人数は減ることになり、名門大学を卒業しても、大企業への就職は厳しくなっていきます」

増える日本で就職する韓国の大学生

こうした中、日本で就職先を見つけようとする、高学歴、ハイスペックな学生たちが増えてきています。

韓国政府は就活生が海外で就職しやすいよう支援を進めていて、2013年に支援を受けて日本で就職した韓国の就活生は296人。
 
それが2019年は2469人と8倍あまりに急増しています。
日本企業も参加した韓国就活生向け就職面接会
冒頭のコリョ大学を卒業した男性も日本で就職した1人です。
 
男性はセミナーに参加したのをきっかけに、結局、大学院進学から日本での就職へ進路を変更。
 
大手メーカーに採用され、現在、日本で働いています。
 
今は、これまでのように勉強に追われるのではなく、精神的に余裕のある生活を送っているといいます。
 
日本での就職活動は、即戦力ではなく、長い目で見て成長できる人材を見極めてもらっていると感じました。
 
私みたいな新入社員に対する期待値が低いので、初めから結果を残さなければならないというプレッシャーもなく、気持ちが楽です。
今は、韓国に帰りたいとは思いません

「常時採用」じゃないと生き残れない

一方でキム主任研究員は、グローバル化が加速する中、「常時採用」の流れは日本の企業でも避けられず、近い将来、日本の就職活動も変化する可能性があると指摘しています。
 
「いま世界経済のトレンドは短いスパンで変わり、『定期採用』では対応できなくなってきています。
 
特に、海外の企業と競うためには『常時採用』を導入しないと生き残れません。
 
今の日本は『定期採用』をして会社で育成しようという考えですが、海外の企業に比べて業務の進め方が遅くなりかねません。
 
企業が適時、必要な人数を採用できる『常時採用』が段階的に拡大していけば、学生の能力が重視されるようになると思います」

心を病む若者も

今回の取材の中で特に印象に残ったのが、「終わりなき競争」、「生きづらさ」ということばです。
 
韓国では、就職難や格差が深刻化する中、過度のストレスを背景に、若者の間で精神疾患を患う人も増加傾向にあるといいます。

日本や韓国の若者が抱える問題を引き続き取材していきたいと思います。
国際部記者
金知英
2014年入局
福岡局を経て
2019年から国際部
朝鮮半島情勢を取材

米韓会談は成果ゼロどころかマイナス 日本との対応差にしか活路を見出せない文在寅の外交センスのなさ

2021-05-26 13:35:46 | 日記

米韓会談は成果ゼロどころかマイナス 日本との対応差にしか活路を見出せない文在寅の外交センスのなさ

5/26(水) 6:01配信

 

手土産を2つ持参した大統領

距離の近さをアピールする他なかった

 

 5月22日、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と米国のバイデン大統領がホワイトハウスで初の首脳会談を行った。

バイデン大統領が首脳会談を行うのは、日本の菅義偉首相に続きこれが2回目である。

会談を終えた文大統領はさっそく自身のSNSに

「最高の歴訪であり、最高の会談だった」

「会談の結果は期待以上だった」などと会談の成功をアピールしたが、

それを言葉通りに捉える関係者はそう多くはない。

 文大統領は首脳会談に合わせ、半導体、バッテリー、バイオなど先端産業分野で約400億ドル(約4兆3600億円)にのぼる大規模な対米投資計画を発表した。

これは米政府へのご機嫌取りに他ならない。

 取材する記者によると、 「この“手土産”には2つの目的がありました。

ひとつは会談で中国に対する強硬な立場を表明するのを自制してほしいということ

もうひとつはワクチン確保のためです。

 

結果、会談では中国を過度に刺激する表現は出なかったので、それを踏まえると、多少なりとも大統領の手土産に効果はあったと思われます」

 もうひとつのワクチンについてはどうだろうか。  

21日時点で、韓国でワクチンを少なくとも1回接種した人は人口の7.3%にあたるおよそ377万人にとどまっており、日本と同様に世界に大いに後れをとっている。

常に日本をライバル視する韓国にとって、何としてでもまず超えるべき壁は日本である。

 文大統領は会談前に「今回の訪米で余剰ワクチンを米国からもらい、韓国がワクチン生産の国際的な拠点になるきっかけにしたい」と表明していた。

菅首相が行ったように、訪米をきっかけにワクチンを確保したかった文大統領にとって、この米韓首脳会談にかける思いは並大抵のものではなかっただろう。

米国の方が一枚も二枚も上手

 米韓首脳会談の開催が決まったのは4月16日で、その頃から、「朝鮮半島の完全な非核化や恒久的な平和定着の進展に向け両国間の緊密な協力策などを話し合う見通しだ」と、会談のテーマが報じられてきた。

 実際、会談後の共同声明でも「朝鮮半島の完全な非核化という共通の目標と、北朝鮮の核・弾道ミサイル計画に対処する意志を強調した」と発表されている。

「表向きはそうですが、大統領の訪米の第一の目的は北朝鮮よりもワクチンの確保だったようにみえます。

会談後に大統領が発信したSNSには、具体的成果としてワクチンに関する内容が冒頭に記されていました。

就任から丸4年、従北姿勢を貫いてきた大統領が北朝鮮よりも先に別の事柄について触れるのは異例のこと。

支持率が30%台に転落した今、リアリティのない北朝鮮との関係改善よりも、ワクチン確保を訴えた方が支持率低下に歯止めをかけられると踏んだのではないでしょうか」(先の記者)

 会談を終えた文大統領は「米韓首脳会談はこの上なく良かった」と大成功であることを訴えたが、

「今回の会談で米国から得られたものは成果と呼ぶには値しない内容でしたし、大統領にとっても想定以下だったという見方が優勢です。

具体的には、サムスンバイオロジクスがモデルナ社と数億回分のワクチン委託生産契約を締結したことと、

在韓米軍に接触する韓国軍55万人に対するワクチン支援の約束のみであり、韓国側が切望していた国民へのワクチン確保には至りませんでした

4兆円を超える対米投資を勘案すると、会談の意味はなかったのではという厳しい意見もあります」

(同)  今回確約を得たとされる2件についても具体的な日程や内容は未定であり、今後調整が必要だという。

「米国の方が一枚も二枚も上手で、韓国は手も足も出なかったという風に捉えています」  と話すのは別の記者だ。

菅首相のハンバーガーを揶揄したが

「ワクチン供給は在韓米軍に接触する韓国軍への対応であり、米国の利益にもつながるものです。

対中国においては、会談前にバイデン大統領は文大統領を朝鮮戦争に従軍した陸軍退役大佐への名誉勲章授与式に参加させ、米韓両国に対する同氏の功績をたたえましたし、“米国と韓国は一緒に犠牲を払った長い歴史をもつ同盟だ”と語り、朝鮮戦争やベトナム戦争を共に戦った強固な同盟をアピールしていました」

 共同声明には、日米首脳会談のように中国を名指しする批判はなかったが、 「〈(両首脳は)台湾海峡の平和と安定を維持する重要性を強調する〉と言及はされました。

さらに、対中牽制を意識した日米豪印(Quad)の重要性の認識についても盛り込まれています。

米国側は対中姿勢に慎重な考えを示す文大統領に配慮しつつも、中国に対する最低限の意思表示は文大統領に行わせている。

これから韓国側は中国への言い訳外交に追われることになるでしょう」

 保守系の朝鮮日報からは「虚言に終わったワクチン・スワップ」と批判されるなど、特に実利ある結果をもたらすことができなかったとなると、日本との対応の差に成果を見出す他ないのだろう。

 21日の会談では、バイデン大統領が文大統領のことを「首相(Prime Minister)」と呼ぶミスはあったものの、終始和やかな雰囲気だったという。

昼食には文大統領の好みを事前に伝えていたせいか、カニ肉を使ったメリーランド州の名物料理“クラブケーキ”が登場。

ソーシャルディスタンスを取ることなく行われた“ノーマスク会談”は、当初予定していた時間を17分もオーバーし、計37分にもわたった。

 日米首脳会談時は、菅首相に対する呼称ミスはなかったが、菅首相は出されたハンバーガーに手も付けずに会談は20分で終了している。

ソーシャルディスタンスを取り、バイデン大統領は二重マスクをしていたという。

 文大統領はもちろん、韓国メディアもそういった点を列挙し、

「日本以上の待遇を受けた」と手放しで喜んでいるようだが、そのさまは滑稽にさえ映る。

羽田真代(はだ・まよ) 同志社大学卒業後、日本企業にて4年間勤務。2014年に単身韓国・ソウルに渡り、日本と韓国の情勢について研究。韓国企業で勤務する傍ら、執筆活動を行っている。 デイリー新潮取材班編集 2021年5月26日 掲載

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