© 読売新聞 3日、ソウルで演説する李在明氏(AP)

【ソウル=豊浦潤一】

9日の韓国大統領選は、最終盤になって左派系与党「共に民主党」の李在明(イジェミョン)候補(57)の苦境が浮き彫りになってきた。

支持率でトップを競う保守系最大野党「国民の力」の尹錫悦(ユンソクヨル)候補(61)が、中道野党「国民の党」の安哲秀(アンチョルス)候補(60)との一本化に成功して票の上積みを狙うのに対し、李氏は頭打ちとなっているためだ。

大統領選は4日、期日前投票が始まった。

韓国ギャラップは同日、選挙前としては最後の世論調査(2月28日~3月2日実施)結果を公表し、李氏は38%で、39%の尹氏と競っている。

しかし、この結果は、安氏が3日に尹氏への支持を表明して選挙から撤退する前の数字だ。

この調査で安氏の支持率は12%で、この相当部分が尹氏に流れると予想される。

同時期に実施された計20の世論調査結果の中で、李氏がトップになったのは一つだけで、それも尹氏との差はわずか0・2ポイントだった。

安氏の主な支持者は、今回の選挙で勝敗のカギを握るとして尹、李両陣営が集票のターゲットとしてきた若者たちだ。

「国民の力」の選対本部は4日、尹氏と安氏の共同遊説をできるだけ早く始める方針を確認した。

李陣営には、焦りの色がみられる。

尹氏と安氏との一本化について「密室の野合を国民は審判すべきだ」(禹相虎(ウサンホ)総括選対本部長)と叫んだ。

しかし、李氏も2日、他候補との一本化を宣言しており、説得力に欠けるとの指摘がある。

李氏の伸び悩みは、文在寅(ムンジェイン)政権の失政とスキャンダルの影響とみられる。

李氏は、有権者の約半数が住む大票田のソウル・首都圏で尹氏に後れを取っている。

文政権下でマンション価格が高騰して住民の不満が爆発した影響とみられる。

李氏は4日のソウルでの遊説で「不動産で苦労をかけた。李在明政権ではそうさせない」と訴えた。

李氏は、自ら知事を務めた京畿道(キョンギド)ですら支持が伸び悩む。

知事時代、李氏の妻が、道庁のクレジットカードで私的な買い物をした疑惑が響いている模様だ。

李陣営関係者は「野党候補一本化で危機感を抱いた支持者が結集している」と述べ、挽回に期待をかける。

尹陣営の不安材料の一つは、コロナ感染者の急増だ。

尹氏の支持者は、60歳以上の高齢者が多い。

尹陣営関係者は「感染による重症化を恐れて投票所に行かなくなるのでは」と懸念する。

■感染最多26万人超…規制緩和に批判【ソウル=上杉洋司】韓国の保健

当局は4日、新型コロナウイルスの1日当たりの新規感染者が前日から約6万8000人増えて26万6853人だったと発表した。死者は186人でいずれも過去最多を更新した。

 当局は、大統領選当日の9日に1日23万人になると推計していたが、すでにそれを上回った。感染拡大に歯止めがかからない中、当局は4日、小規模自営業者らの負担が「限界に達している」として感染対策の規制を緩和した。

5日以降、飲食店やカラオケ店などの営業時間制限を1時間緩和し、午後11時までとする。小規模自営業者は、左派系与党「共に民主党」の支持者が多い。

保守系紙・東亜日報は「政府は国民の健康より政治的計算を優先している」と批判するソウル市内の医師の発言を伝えた。