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韓国大統領選で政権交代 ズバリ「文在寅大統領は捕まるのか」

2022-03-11 17:50:50 | 日記

韓国大統領選で政権交代 ズバリ「文在寅大統領は捕まるのか」

 

吉崎エイジーニョライター

3/10(木) 8:06

 

 

9日に行われた韓国大統領選。

 

最大保守党「国民の力」から出馬した尹錫悦候補の勝利に終わった。革新系からの政権交代が起きたのだ。

 

選挙前から周囲の方々に話を聞きながら「日本での関心はどこにある?」という点を探ってきた。

 

韓国国内では「不動産政策(家が高すぎて買えない)」や「社会での公正の実現」などが争点だったが、当然のごとく日本での関心は違った。

 

対日関係はどうなるのか。北朝鮮との関係は?

 

あわせて、この話題が多く出てきた。

 

「文在寅大統領って逮捕されるの?」

 

韓国は大統領の前任者が逮捕される国。

確かに日本ではそんなイメージがあるだろう。

特に昨年下半期は朴槿恵氏が釈放され、獄中の李明博氏が治療のために入院、さらに全斗煥、盧泰愚という1990年代の逮捕経験者が亡くなったというニュースが日本でも流れた。

 

では、政権交代が実現した今回はどうなるのか。結論から言うと「兆候なら、ある」。

 

ゴミ掃除”を「やる。やらなきゃいけない」

 

当の尹錫悦氏がこう発言しているのだ。以下、2月9日の「中央日報」とのインタビューでの発言。

ーー積弊清算、やりますか?

 

「やりますよ。やらなきゃいけないでしょう」

 

「全てシステムに沿ってやります」

 

 

”積弊(せきへい=チョクペ)”。日本語ではあまり使われない漢字語だ。

「積み重なったちり・ごみ」という意味。韓国政治的に言うと「ふさわしくない人」。

 

これを清算するというのだ。

 

元々は金泳三政権(1992年~97年)で最初に使われた。前任者であり、政治的宿敵だった盧泰愚、そしてその前の全斗煥は「積弊」であり、捜査の対象だった。

 

この言葉が韓国で大きな注目を浴びるのが、2010年代中盤からだ。

2014年4月16日にセウォル号沈没事故という痛ましい事故が起きた。

この際、当時の朴槿恵大統領が「積弊を排除する」と発言。

船長が被害者となる高校生を置いて事故現場から逃げるなど、事故の背景になるような社会の性質に釘を刺す、という意味だった。

 

しかし朴槿恵大統領は2016年10月に表面化した「チェ・スンシルゲート」事件により、2017年3月10日に罷免、21日から取り調べが始まり31日に拘束された。

朴氏本人が「積弊」となったのだ。

この件で検察側として捜査チームに抜擢されたのが…当時、朴政権との対立で地方に左遷されていた尹錫悦氏だった。

 

その後、2017年に当選した文在寅大統領が初めて公約に「積弊清算」を織り込んだ。

尹氏は文政権により検察総長に採用される。

両者は当初は”味方”の立場にあったものの、その後文政権による「検察改革」を巡って対立。尹氏は検察の世界を飛び出し、今回の立候補に繋がった。

 

  • 検察総長辞任時の尹錫悦氏

 

尹錫悦と文在寅、両者は複雑に絡む関係にある。

 

”やらなきゃいけない”と答えた上記の「中央日報」とのインタビューで、尹錫悦氏で"自問するように"こう話したのだという。

 

「私が文在寅政権の初期にやったこと(積弊清算の捜査)は、大統領の司令を受けて、(保守派への)報復をしたということなのか」

 

「(現文在寅政権は)自分たちの政府の時、初期に行ったことは憲法の法則に従ったものであり、次の政府(新たな尹政権)がやれば自分たちの不正と不法に対する報復なのか」

 

さらにより具体的な方針を示すことで「清算への本気度」を伝えた。

 

「検察の捜査は司法部の牽制、統制を受けながら法の手続きに沿って行われる」

 

文在寅大統領「強力な怒り」「謝罪要求」

 

この発言に文在寅サイドが”激怒”した。

 

2月10日、大統領府の参謀会議で「強く抗議していた」と関係者が伝えている。

 

「尹氏は中央地検長、検察総長在職時にはこの政府に積弊がいることを見つけられなかったということか? でなければ積弊を企画モノとして作っていくということなのか。答えてもらわないと」

 

「現政府に対し、根拠なく積弊捜査の対象とし、それを不法に煽ることに対し強力な憤怒を表し謝罪を要求する」

 

韓国メディアの多くが「異例」と表現した強い反応だった。

 

 

尹氏は懲りず「公務員がターゲット」

 

これに対する、尹候補の陣営「国民の力」の反応はクールなものだった。

 

「気分が悪いとしたら、それが積弊でしょう」(イ・ジュンソク代表)

 

尹氏もまったく「懲りない」。

 

2月13日、韓国行政学会と韓国政策学会、中央日報が共同開催した討論会にて、就任時には確実に「公務員」をその矛先にすることを公言している。

 

政治陣営に媚びへつらい、忠誠を誓って出世を狙う人に対しては新しい政府がその正しくない行いを見つけ出し、観察するのは正常な過程」

 

「そういった公務員たちは取り除かなければならない。国家と国民に対する害を及ぼす弊害が非常に大きい」

 

偉い人にヘコヘコばっかりしてる人は許さない、と。

 

韓国メディアは「具体的には職権濫用罪を適用しての捜査となる」と見ている。

 

ただし尹氏はこれについて「過度なことはやらない」とも明らかにした。

 

「多くの公務員は、行政指導について処罰を受けるのではないかという不安を持っているようだが、そこまで刑法を拡大解釈するものでもないとも見ている」

 

文氏に捜査及ぶか…「原発関連データ偽造疑惑」

 

では、実際のところこの尹氏側の「意気込み」は実現可能なのだろうか。

 

韓国一般紙政治部の元デスクは言う。

 

「韓国で大統領の前任者が無傷だったことはないですよね…この5年間、野党に留まってきた保守系とすれば復讐心もあるでしょう。ただし、大統領選では敗れたものの、国会では引き続き革新系が絶大な力を持っている。簡単ではないと思います」

 

確かにそうだ。大統領と議会は「ねじれ」の構造になる。

 

2020年の総選挙の結果、全議席300の割合は「革新系180、保守系103」となっている。

尹大統領は「積弊清算」を進めるにも猛烈な反対を覚悟せねばならない。

 

そして何より重要なのは「疑惑・不正があるのか」という点だ。

当然のごとく「何もないのに捕まえられない」。

夕刊の経済紙「アジア経済」社会部のキム・ヒョンミン記者は「あくまで個人的な意見」としてこう言う。

 

「この件については多様な意見がありますが、個人的には『ない』と見ています。理由は拘束に値する容疑がない、という点です。唯一あるとすれば、慶尚北道の月城(ウォルソン)にある原発閉鎖正式決定(2019年12月)関連の疑惑でしょう。早期の閉鎖決定の根拠となった『経済効果データ低評価偽造』疑惑です。この裁判の結果『大統領の関与があった』となったとなれば、捜査が及ぶ可能性が出てくるでしょう」

 

 

  • 関連ニュースを報じるKBS

 

これは2018年4月上旬に始まった出来事だ。脱原発を進める文政権は事故の多かった月城原発の1号機の早期閉鎖を望んでいた。

この頃、文在寅大統領が補佐官に「閉鎖は決まったの?」と質問したとされる。

 

閉鎖には世論の納得が必要だ。その後大統領側に提出された資料を作成した産業通商資源部所属の公務員が「文在寅政権の意向を酌んで採算性を意図的に低く評価した疑い」をかけられている。要は大統領への忖度で「1号機は儲かりませんよ」と虚偽報告した疑いだ。

 

2020年10月20日に大田地方検察庁が捜査を開始した。ちなみにこれを指示したのは…当時検察総長だった尹錫悦氏。当時から政権側は「尹氏は”政治”をやっている」と猛反発していた。

 

その後の捜査の結果、公務員2人が2021年6月に証拠隠滅の疑いなどで起訴された。この裁判の行方次第で、文在寅大統領への捜査の可能性も出てくるのではないか。つまり「文大統領側からの指示や関与があったのか」。

 

ちなみにこの公務員こそが、尹氏が選挙戦中に口にした「権力にヘコヘコする公務員」と一致する。さらに尹氏は「原発推進」も公言する立場だ。

 

尹氏は”やる気”だ。しかしいざ検察による捜査着手となった際、いまだ国会で絶大な力を誇る革新系の反発はどれほど熾烈になるだろうか。5月10日に就任後、確実にひとヤマありそうだ。

 

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吉崎エイジーニョ

ライター

吉崎エイジーニョ 日韓比較文化論・朝鮮半島論・サッカー全般。20代より日韓両国のメディアで「日韓サッカーのニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりストレートにぶつかる日韓関係」を見てきました。もっとサッカーのことを書いているはずでしたが、人生ままならず。現在はK-POPから南北関係まで「外国語力を生かしたニュース提供」を。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。

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韓国大統領選挙 野党候補「尹錫悦」当選の5つの勝因

2022-03-11 17:04:56 | 日記

韓国大統領選挙 野党候補「尹錫悦」当選の5つの勝因

 

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

3/10(木) 8:59

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韓国の次期大統領・尹錫悦氏(同氏のHPから)

 韓国の大統領選挙は開票の結果、保守野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソッキョル)候補が与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)候補との大接戦を制して当選した。

 

 両候補の得票率は尹候補の48.56%(1639万4815票)対47.83%(1614万7738票)と予想されたよりも遥かに僅差だった。

 

 選挙結果を分析すると、尹候補の勝因は以下5つの理由が挙げられる。

 

 その1. 投票率が下がらなかったこと

 韓国のメディア、選挙通の間では投票率が低ければ国会の議席(300議席)のうち180議席を占める組織力のある李候補に有利と言われていたが、投票率(77.1%)は前回(77.2%)並みの高さだった。

 

 投票率の高さは尹候補の支持層と称される60歳以上の高齢者の多くが連日過去最多を記録しているコロナ感染拡大状況下でも投票所に駆け付けたこと、事前の世論調査では伯仲と言われていた30代で48.1%対46.3%と、李候補に1.8ポイントの差を付けたことにある。

20代から30代の若年層が棄権せずに投票したことも投票率の高さに繋がった。

約24万票差の薄氷の勝利だっただけに仮に投票率が1%でも低かったら李候補にひっくり返されたかもしれない。

 

 その2.首都ソウルと忠清道の大都市・大田で勝ったこと

 有権者が838万人もいる大票田の首都・ソウルで尹候補は50.56%の得票を得て、李候補の45.73%を約4.8ポイント引き離した。

 

 第15代大統領選挙(1997年)から直近の5回の選挙をみると、朴槿恵(パク・クネ)大統領が当選した第18代大統領選挙(2012年)以外は、いずれも当選者が首都を制していた。

 

 また、中道層の多い忠清道の大田市を制した候補が当選すると言われているが、尹候補は大田市では49.55%対46.44%と李候補を3.11%上回る得票を得ていた。

 

 ちなみに大田市での過去6回の投票結果をみると、

第14代(1992年)は金泳三(キム・ヨンサム)候補が34.7%(2位の候補28.3%、3位の候補22.9%)、

第15代(1997年)は金大中(キム・デジュン)候補が45.0%(2位の候補29.2%、3位の候補23.0%)、

第16代(2002年)は盧武鉉(ノ・ムヒョン)候補が55.0%(2位の候補39.8%)、

第17代(2007)は李明博(イ・ミョンバク)候補が36.3%(2位の候補23.6%、3位の候補28.9%)、

第18代は朴槿恵候補が49.9%(2位の候補49.7%)、

前回の第19代は文在寅(ムン・ジェイン)候補が42.9%(2位の候補20.3%、3位の候補23.2%)を得て、大田を制していた。

 

 その3.光州及び全羅道で保守候補としては過去最多の得票を得たこと

 光州及び全羅南・北道は与党・進歩派の象徴である金大中元大統領の出身地であり、与党の地盤である。

保守系の大統領候補は「湖南」と称されているこの地域は「不毛地」で票がほとんど取れなかった。

 

 例えば、全羅道の中心地・光州では2007年の選挙で当選した李明博大統領は8.5%しか取れず、また2012年に歴代大統領としては過去最高の得票率(51.6%)で当選した朴槿恵大統領ですら7.7%しか獲得できなかった。

盧武鉉大統領が当選した2002年の選挙では保守の李会昌(イ・フェチャン)候補は僅か3.6%しか取れず、惜敗していた。

 

 今回、尹候補陣営は「湖南」で25%の得票を目標に掲げていたが、それには遠く及ばなかったものの尹候補は光州では12.72%、全羅南道では11.44%、全羅北道では14.42%の得票を得て、初めて二桁に乗せることができた。

文在寅政権下で権力の中枢から外された、あるいは冷遇された金大中派の一部を取り込み、与党陣営に楔を打ち込んだことが功を奏したようだ。

 

 その4.国民の政権交代への熱望が政権継承を上回ったこと

 尹候補と李候補の世論調査の支持率の差はほんの僅かだが、政権交代に関しては常に6対4の割合で政権継承を上回っていた。

そのことは文政権の不支持が支持を6対4の割で上回っていたこととも比例している。

 

 文大統領の支持率40~42%は任期最後の年としては歴代政権では過去最多であるが、不動産政策の失敗や高い失業率と若年層の慢性的な就職難、所得の格差、収賄、セクハラ、子弟の不正入学など側近らの相次ぐ不祥事に失望した若者を中心に国民の間では変化を求める声が多数を占めていた。

その意味では尹陣営が「政権交代」を選挙争点にしたことが功を奏したと言える。

 

 その5.コロナ感染拡大と北朝鮮のミサイル発射、ロシアのウクライナ侵攻が追い風となったこと

 韓国の一日のコロナ感染者が3月に入って連日20万人台を記録している。

期日前投票日(4~5日)は約24万~25万人、投票日前日は過去最多の約34万と、1か月前(約4万9千人)の約7倍である。

尹陣営は国民の不満をバックに政府与党の責任を追及したことで李候補には逆風となった。

 

 また、北朝鮮がこの3か月間に9回もミサイルを発射するなど「北の脅威」が高まったことも安保を看板とする尹候補に有利に作用したと言える。

ライバルの李候補はウクライナのような戦争状態に陥らないよう北朝鮮との対話が必要と訴えたが、尹候補は戦争にならないようにするためにも抑止力を高めることが緊要であると訴えていた。

 

 さらに、ロシアのウクライナ侵攻も国民の左派へのアレルギー反応を助長する結果となり、「滅共」で育った保守層を結集させる要因となった。

実際に韓国の全土で唯一、北朝鮮と道を折半している江原道では尹候補は54.18%を得て、41.72%の李候補を圧倒していた。

 

 文在寅大統領の任期が5月9日まであるので尹錫悦次期大統領の正式就任は5月10日となる。

 

 

辺真一

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊