世界で最も気の毒な韓国の家長、72歳まで働かないと引退できない(下)
パク・チヘ研究員は「最近、MZ世代(1980~2010年ごろ生まれ)を中心に経済的自由を求めて早めに引退するというファイア(FIRE)族が増えているものの、現実的には韓国の引退年齢は年々高まりを見せている」とし「72歳という引退年齢も、老後への備えが十分だからというよりは、むしろ健康面の悪化により労働市場からの退場を余儀なくされていると見るべきだ」と述べた。
70歳を過ぎても働かずに安定的な老後を迎えようとすれば、現役時代に個人年金や退職年金に加入して十分に備えることが必要だ、とパク研究員は念を押す。
ところが、韓国の男性たちが世界最長の引退年齢記録を保有している理由は、健康保険料の爆弾を避けるための逃避性再就職のためだといった見方もある。
京畿道に住む60代のイさん(男性)は
「引退後に国民健康保険に加入すると、古いマンションが1軒あるだけで月30万ウォン(約2万9000円)もの健康保険料を支払わなければならない」とした上で
「社会保険の加入者は保険料に対する負担が大幅に削減されるため、自由に動ける間は引き続き働くつもり」という。
仕事を中心に生きる「会社型人間」の多い韓国社会の特性上、男性たちは年を取っても働き続けることを望んでいる。
全ての生活基盤が会社にあったため、引退したからといってすぐさま自宅が生活基盤になるかといえば、そうもいかないのだ。
これまで地域社会に根付いたネットワークを形成し活動してきた妻の目に、「三食を求める夫」と見られるのではないかといった懸念もある。
3月初め、朝鮮ドットコムがSM C&Cのアンケート調査プラットフォーム「ティリアン・プロ(Tillion Pro)」に依頼し、
50-60代の女性144人を対象にアンケート調査を行ったところ、
「夫の退社後、幸せの度合いがどのように変わったか」という質問に対し、回答者の61%が「疲労の度合いが増した」と答えた。
10人のうち6人は「これまで家族のために働いてくれたから、ゆっくり休んでほしい」と言うよりは、夫にはずっと外で働いてくれることを内心望んでいるのだ。
日本でも引退後、最も妻に愛される夫は、「老後の準備をしっかりとしている夫」「料理が上手な夫」「妻の言うことをよく聞く夫」なのではなく、「家にいない夫」という言葉もある。
ビルの管理人として勤める60代で再就職したチャンさんは「どんなに趣味が面白いと言っても続いて1、2日だ。
実際家にいるとうずうずしてくるので(こうしてビルの管理人にでもなって)働くことができるのはうれしい」とし
「家にいたところで作ってもらえるのはせいぜいラーメンだ。こうして外に出てお金を稼ぎながら食べたいものを食べられる今がどんなに幸せか分からない」と笑みを浮かべた。
イ・ギョンウン記者