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「1億円以下のマンションはない」日本とは比較にならない超格差社会

2022-10-11 18:09:10 | 日記
「1億円以下のマンションはない」日本とは比較にならない超格差社会となった韓国の絶望政治家が守るのは富裕層と高齢者

PRESIDENT Online

木村 幹神戸大学大学院 国際協力研究科 教授 

今春、任期満了を迎える文在寅大統領はどう評価されているのか。

神戸大学大学院の木村幹教授は「20代以下の若者たちが政権支持から不支持に転じている。

彼らは政府の経済対策と少子高齢化対策のあおりを受け、深刻な状況に陥っている」という――。 

ソウル市内のマンションは「億ション」だらけ

2021年11月第1週に韓国で行なわれた世論調査を見てみると、文在寅大統領を支持しない理由として、最も多くの国民が挙げているのは「不動産問題」である。

実はこの状況は文在寅政権になって以後、ずいぶん長く続いている。

ソウル市内のマンション売買の平均価格は、10億ウォンを超えている。

円と韓国ウォンの通貨レートは、この文章が書かれている2021年11月21日の時点で、1ウォン=0.097円。つまり概ね、1円=10ウォンだから、単純計算で、ソウル市内のマンション売買平均価格は、日本円にして1億円を軽く超えていることになる。

より正確に言えば、2021年10月現在のソウル市内のマンション平均価格は12億1639万ウォン。

対して2020年の韓国人の1人当たり国民所得が3747万ウォンだから、その約32.5倍に当たる計算である。

同じ数字を日本に当てはめてみると、2019年の名目ベースでの日本の1人当たり国民所得が443万7000円。

その32.5倍は約1億4000万円を超えることになる。

如何に今の韓国の不動産事情が異常かよくわかる。

供給された大量の通貨が不動産投機へ

どうして韓国の不動産価格はかくも急速に上昇しているのだろうか。

その1つの理由は、文在寅政権が不況を克服するために、通貨量の供給を増やしていることに求められる。

新型コロナ禍における深刻な消費の落ち込みを抑えるために、韓国政府は積極的な財政出動を行っている。

しかし、不況が続く中、供給された通貨は消費には向かわず、不動産や株式などへの投資に回ることとなっている。

とりわけ、バブル経済崩壊以降、「不動産神話」が失われた日本とは異なり、韓国では依然、不動産、とりわけ成長を続けるソウル首都圏の不動産に対しては、その価格は長期的に必ず上昇するだろう、という強い期待が依然として存在する。

結果、供給された通貨のかなりの部分が不動産投機へと回り、異常なまでの価格上昇が引き起こされている。

そして、このような不動産価格の上昇は、富裕層にとっては資産価値の上昇の結果としての大きな収入増をもたらす一方で、貧困層にとっては家賃などの急速な上昇による、深刻な負担増として現れる。

文在寅政権は貧しい人の味方のはずだが…

不動産価格の上昇は、お金持ちを豊かにさせる一方で、貧しい人々をさらに貧しくさせ、貧富の格差が拡大する。

だから、今の韓国の人々にとって「不動産価格の上昇」は、単にそれだけに止まらない意味を持っている。

つまりこの現象は、今日における韓国社会における格差の拡大を象徴するものとして現れているのである。

そしてさらに皮肉なのは、この現象が、本来なら福祉政策に熱心な筈の「進歩派」政権の下で、起こっていることである。

本来なら、貧しい人々のことを第一に考えるべき進歩派政権の下で、豊かな人達がますます豊かになる一方で、貧しい人々がますます貧しくなっている。

だからこそこの状況に、かつて政権に期待し、文在寅に投票した一部の人々は強い失望を覚えるに至っている。

さて、それではその「一部の人々」とは一体誰のことなのだろうか。

その答えは、この政権が出発した時点と、それから4年半以上を経た現在の時点での間で、誰がこの政権の支持から離れたかを見ればわかる。

紙幅の関係上、その分析結果を細かく示すことはできないが、この間に明確に政権支持から不支持に転じたグループは1つしかない。

それは20代以下の若い人々だ(韓国では2021年現在で18歳以上に選挙権がある)。

受験競争を勝ち抜いても3割が就職できない

背景にあるのは、この世代の極端に高い失業率である。

時に雇用問題の深刻さが指摘される韓国であるが、実は労働者全体の失業率は4%と、他の先進国に比べてそれほど高い水準にある訳ではない。

むしろ問題は失業者が特定の世代、つまりは20代以下に集中していること、そしてさらにはこの世代の多くが、不安定な非正規雇用の職に就いていることである。

この状況が今の若年層にとってどれだけ深刻なのかを理解してもらうために、あるデータを紹介しよう。

ソウル市内の主要大学の卒業時点の就職率の推移をみると、その低さに驚く。

2018年の就職率を挙げてみると、ソウル大学70.1%、延世大学70.1%、高麗大学70.3%、成均館大学77.0%、梨花女子大学62.1%。

激しい受験戦争で知られる韓国であるが、ソウル大学のような超名門大学の卒業生であっても、3人に1人に近い人が、就職できない状況なのである。

一方、維持就業率(就職から1年後も同じ職に就いている人の割合)は、ソウル大学89.8%、延世大学87.5%、高麗大学91.0%、成均館大学92.6%、梨花女子大学82.6%。

せっかく就職できたのに、1割、2割の人が1年以内に退職しているのである。

ソウルには住めない、故郷では仕事がない

そして卒業と同時に就職が決まっていなければ、大学生の多くは大学の寮などを失い、そのまま市中に放り出されることになる。

そこにおける不動産価格の上昇は、失業状態にある彼らがソウル首都圏に留まることをすら困難にさせる。

地方出身の学生にとっては、住宅が見つからなければ自らの故郷に戻らざるを得ず、故郷に戻ることは、ソウル首都圏への一極集中が続くこの国では、就職活動すら困難になることを意味している。

こうして、就職活動でつまずいた多くの学生たちが成功の機会を失い、格差の拡大が続く状況で、未来への展望が見えない生活へと追い込まれる。

そしてこのような状況が進歩派の政権においてもたらされたことに、彼らは深く失望することになる。

にも拘わらず、彼らにはこれに対抗する保守派に対しても大きな期待を持つことは難しい。

何故なら財界に近い保守派の政権が、分配や雇用よりも、経済成長を重視することは、明らかだからである。

結果、若年層は韓国の政治、そして未来に失望し、次第にいら立ちを強めていくことになる。

その問題は極めて深刻だ、と言わざるを得ない。

韓国の非正規労働に若者が多いカラクリ

このような状況をもたらした原因は幾つかある。

1つは1997年のアジア通貨危機以降、歴代の韓国政権が推進してきた経済成長を重視した、新自由主義的な政策である。

木村幹『誤解しないための日韓関係講義』(PHP新書)

1997年、アジア通貨危機において一時はデフォルト寸前にまで追い込まれた韓国は、IMFの指導の下、経済の大規模な改革へと乗り出した。

そこで重要視されたのは、この国の経済をグローバル化する世界の実情に適う方向へと変革することであり、そこでは徹頭徹尾、経済的効率が優先された。

そしてその中で重視された項目の1つが雇用の流動性強化であり、様々な雇用に関わる規制が撤廃された。

我が国でも進められているように、雇用流動性の増加は、企業にとっては労働コストの低下に繋がるから、利益が大きい。

だが、同時に雇用に関わる規制の撤廃は、必然的に不安定な非正規労働者の増加をもたらすことになる。

他方、これまで雇用してきた労働者を解雇することは労働契約上容易ではないから、勢い、増加した非正規労働は新たに雇用される人々、つまりは若年層の労働者に集中することになる。

こうして中高年層に正規労働が多く、若年層に非正規労働が多い、韓国固有の状況が出現する。

そして、そこにもう1つの要素が作用する。それは進行する韓国社会の高齢化である。

韓国政府にのしかかる急速な少子高齢化

他の東アジア諸国と比較してみよう。

各国における65歳以上人口の割合の推移で明らかなのは、日本において、世界、そして他の東アジア諸国に先駆けて進んだ高齢化のトレンドに、韓国が急速に追いつきつつあることであり、また、やがては追い抜いていくことである。

2020年の段階で既に韓国における高齢者人口の割合は15%を超えており、1990年代後半の日本の水準に等しくなっている。

背景には韓国における極端な少子高齢化が存在する。

韓国の2020年の合計特殊出生率、つまり1人の女性が生涯に産む子供の数は0.84。やはり少子高齢化の深刻さが指摘される日本の合計特殊出生率は1.34だから問題の深刻さがよくわかる。

こうした状況は、現在の韓国政府の福祉政策にも影響を与えることになる。

急速に進む高齢化は政府にとって、年金や医療費などの負担が将来増加することを意味している。

しかし、かつて通貨危機を経験した韓国政府は、日本が行っているような膨大な赤字国債の発行には、依然、一定のためらいを持っている。

若者の雇用機会はさらに奪われていく

だからこそ、ここにおいて韓国政府が選択しているのは、高齢者により多くの雇用を与えることである。

多くの年金などを与えることができない以上、意図的に高齢者の労働機会を作って収入を確保しようという訳である。

そのための最も主要な手段は、企業の定年退職年齢の引き上げである。

結果、韓国では近年まで大手企業で多数を占めていた55歳の定年退職年齢が、一挙に65歳まで引き上げられるようになっている。

しかし、このようないささか乱暴な韓国政府の施策は結果として、ただでさえ限られている雇用を更に高齢者の側に振り向けることとなる。

結果、労働コストの負担に限界がある企業は、新規採用を控えることにならざるを得ない。

つまり現在の韓国における若年者の雇用環境悪化は、人口の高齢化とそれに対する韓国政府の政策の結果でもあるのだ。


現役時代の年収はいくら必要なの? 「年金20万」は高望み!?

2022-10-11 17:39:14 | 日記
「年金20万」は高望み!?

現役時代の年収はいくら必要なの?

ファイナンシャルフィールド

2022/10/11 07:40

© ファイナンシャルフィールド

年金は、国民年金と厚生年金の2階建て

そもそも、日本の年金制度は国民年金と厚生年金の2階建てになっています。

国民年金は満20歳以上の日本に住む人であれば、学生や無職の人々も含めて誰もが加入しているものです。

一方で厚生年金は主に会社勤めをしている人が加入し、保険料を会社と本人で折半します。

なお、定年退職し、現役でなくなった場合に受け取る年金は「老齢厚生年金」と呼ばれるものです。

この記事でいう「年金」とは、老齢基礎年金と老齢厚生年金を合算したものを指します。

国民年金だけで、定年後に月20万は達成できるか?

法人化していない自営業やフリーランス(個人事業主)は、厚生年金に加入できません。

つまり、国民年金のみに加入していることになります。

国民年金の老齢基礎年金は、満20歳から60歳まで保険料を納め続けた場合に満額を受け取れます。

令和4年4月以降の水準では、満額で年間77万7800円が支給されることになっていて、月額平均に直せば6万4816円です。

実際は2ヶ月に1回の支給となります。職業を問わず、これが国民年金の最高額ですから、国民年金だけでは月20万円を達成できません。

ただし、国民年金基金に加入することで、月20万円を達成できる場合があります。

例えば、現在20歳の人が国民年金基金の終身年金A型1口、B型18口(月額6万6660円の支払い)に加入していれば、老齢基礎年金は月額20万6200円を受け取れる計算です。

ただし、最終的な支給額は後になって変更される場合がありますので注意してください。

厚生年金も加えて月20万円の年金を達成するには?

厚生労働省が発表している「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、厚生年金に加入している社会人では、老齢基礎年金の受け取り額が平均で月額14万4366円です。

ただし、男女別では、男性が16万4742円、女性が10万3808円と大きく差が開いている実態があります。

ただ、厚生年金は年収次第で増えるものです。よって、会社員として平均を超える年収を得ている場合であれば、月20万円の年金を達成できます。

国民年金の月額6万4816円を満額受け取れるものと仮定すれば、厚生年金で月額13万5000円あまりを受け取れると、月20万円を超えます。

もし、平均標準報酬額×5.769÷1000×加入月数の式を用いるならば、おおむね年収700万円で「年金20万」の水準を超える計算です。

ただし、勤続し続けることが前提ですので、退職後の休職期間が長く続いて、厚生年金保険料の未納が起きないようにしましょう。

現役時代から、将来を見据えて働きましょう

© ファイナンシャルフィールド

会社員であれば、平均をかなり上回る年収を受け取っている場合に「年金20万」は達成できます。また、会社員でなくても国民年金基金を最大限に活用すれば「年金20万」を達成することは可能でしょう。

その他にも、iDeCoやつみたてNISAなど、定年後に備える資産形成の方法はいろいろとありますので、現在の収入状況とあわせて、準備しておきましょう。

出典
日本年金機構 老齢年金
国民年金基金連合会 給付の種類
厚生労働省 厚生年金保険・国民年金事業の概況
執筆者:FINANCIAL FIELD編集

台湾で日本ツアーに申し込み殺到 水際対策緩和で実質的「解禁」に 円安も影響

2022-10-11 17:19:58 | 日記
台湾で日本ツアーに申し込み殺到 水際対策緩和で実質的「解禁」に 円安も影響

10/11(火) 14:22配信

旅行展覧会(台北 9/30):ETTV提供

日本の水際対策が緩和され海外からの観光が実質的に「解禁」されたことを受け台湾では日本ツアーへの申し込みが殺到しています。 

台湾メディアが伝えた「海外旅行解禁」に関するニュースの映像です。

 きょう(11日)から日本への観光が実質的に「解禁」されるのを前に旅行会社には日本ツアーへの申し込みが殺到しました。

 円安の影響もあり「日本」が一番人気の旅行先だということです。

 台湾大手の中華航空は今月から日本・韓国への往復便を週30便から130便に増便し、急速に回復すると見込まれる海外旅行需要に備えています。

 日本への旅行が「解禁」された初日のきょう、桃園空港からの国際線の利用客は6000人を超える見込みだということです。

テレビ朝日報道局

朝日新聞〈朝5時、段ボール集める老後 経済成長「漢江の奇跡」も年金は後回しに〉!

2022-10-11 16:24:55 | 日記
朝日新聞〈朝5時、段ボール集める老後 経済成長「漢江の奇跡」も年金は後回しに〉!

カテゴリ韓国ニュース

朝5時、段ボール集める老後 大丈夫?声かける39歳 韓国の貧困
(朝日新聞 2022/07/31)

サンデーワールドエコノミー

〇稲田清英いなだ・きよひで 経済部、オピニオン編集部、国際報道部などを経て5月から2度目のソウル。休日にはふらり街歩きが楽しみ。

 韓国の街中で時折見かけるのが、廃品の段ボールなどを集めて歩くお年寄りだ。業者に売ってわずかな収入を得るその姿は「高齢者の貧困問題の象徴」とも言われている。

 経済は急速に成長したものの、年金など「老後の支え」となる社会保障の充実が後回しになってきた韓国。平均寿命が83歳を超えた世界有数の長寿社会の一つの断面だ。

 平日の朝、ソウル市内のリサイクル業者が廃棄物を引き取る施設を訪ねた。高齢者らが道ばたなどで集めた段ボールや古紙などを売りに来る。大量の段ボールを積んだリヤカーを引いてくる人もいる。

 市内で1人で暮らす女性(76)もここを利用している。夫と離婚し、家族はいない。若いころは食堂で働いたが、年を重ねると雇ってもらえなくなった。段ボールなどを集め始めて20年ほどになる。「この年でもできる仕事は、ほかにない」と言う。

 この日は朝4時半に家を出た。出遅れると、他の人たちに先に回収されてしまう。必死だが、足の痛みなどで歩き回れる時間にも限界がある。毎月の収入は10万ウォン(約1万円)ほど。年金とあわせても40万ウォンに届かない。

 年金はほぼ家賃に消え、福祉団体などが無料で提供する給食を頼ってなお、ギリギリの生活だ。それでも「家でじっとしていても体中が痛む。外で段ボールを集め、人の様子を見ていると忘れられる」と淡々と言う。

 韓国政府は、段ボールや古紙などの収集をなりわいに生きる高齢者が全国に7万人近くいると推計している。ただ実態は十分につかみきれておらず、実際はもっと多いとの見方もある。

 特別な技術や経験がなくても始められるが、ひと月当たりの収入は平均で20万ウォン程度という。極度の貧困で食事にも事欠いたり、体の調子が悪くても医者に行けなかったりする人が珍しくない。リヤカーを引いて道路を歩き、交通事故のリスクも高いと指摘される。

■経済成長「漢江の奇跡」 年金は後回しに

 韓国の1960年代後半以降の経済成長は、「漢江の奇跡」と称される。だが、その急速さから「圧縮成長」とも言われる。

 製鉄所や高速道路などが次々にでき、財閥と呼ばれる大手企業グループが経済成長を引っ張った過程で、後手に回ったのが公的年金など「くらしの安全網」の整備だった。国民年金制度の導入は88年、ソウル五輪が開かれた年だ。当初は一定規模以上の職場に限られ、「皆年金」の実現は99年だった。

 成長の時代を支えた高齢者が、その「ツケ」を背負う。韓国政府によると、65歳以上で国民年金などを受けている人は47%。年間の額も平均710万ウォン(約70万円)だ。

■「死ぬまで働くしか…」

 民間シンクタンクの韓国経済研究院によると、高齢者の所得に占める国民年金などの比率は25%ほどで、個人年金などを含めても48%。老後も何らかの仕事を続ける高齢者が多く、「死ぬまで働くしかない」との声も漏れる。

 所得が少なく生活が厳しい人の割合の指標となる貧困率でみると、韓国の高齢者は40・4%(2020年)。経済協力開発機構(OECD)の加盟国で最も高い水準で、日本や米国、欧州の主要国などを大きく上回る。

 韓国政府が手を打ってこなかったわけではない。所得が一定以下の高齢者に支給する「基礎年金」はその一つで、段階的に引き上げられてきた月額は最大30万ウォンになっている。

 一時は50%に近かった高齢者の貧困率がここ数年で下がっている一因でもあり、5月に発足した尹錫悦(ユンソンニョル)政権も40万ウォンへの段階的な引き上げを掲げる。ただ、老後の支えとして十分な額だとは言い難い。

 崇実大の許埈綬教授は「子どもを育てて老年を迎えてみれば、国民年金の恩恵も受けられず、自身の老後への準備が出来ていなかった人が多い」と話す。そのうえで、年金制度の不十分さに加え、家族のありようの変化も影響が大きいと指摘する。「核家族化が進み、家族からの経済的な支えを得にくい独居の貧しい高齢者が増えたことも、貧困率が高い要因だ」と言う。

 さらに、現在の高齢者の子ども世代の家計も苦しい。「受験戦争」の中の塾代など孫世代の教育費はかさみ、住宅費は高騰。一方で働き盛りの時期にリストラに遭い、自営などに転じて食いつなぐケースが珍しくない。さらにその下の若者世代も待遇の良い職場は限られ、非正規職で働き続けるなど就職難に苦しむケースが少なくない。

 ニッセイ基礎研究所の金明中・主任研究員は「親を助けたいと思っても余裕がない人が多い。高齢者の貧困問題を解消していくには社会保障の充実も大事だが、それだけでは限界がある。就職難の若い世代を含めて、自身や親の老後を支えられるような安定した雇用の拡大こそが、長い目でみれば根本的な対策になる」と言う。

 こうした高齢者の貧困問題を「自分ごと」として受け止め、行動に移した若者がソウル近郊の仁川市にいる。

■社会的企業、目標は「滅びること」

 17年に、社会的な目標追求と営利活動を両立させる「社会的企業」を発足させた奇虞振さん(39)。「ラブリペーパー」と名付けた会社は、20年に政府の認定も受けている。

 高齢者が集めた段ボールなどを決められた価格で定期的に引き取り、それを原料に独自のデザインのバッグや絵画のキャンバスなどをつくってオンラインなどで販売する。

 目標は古紙などを集める高齢者に、自身の活動が資源再生につながっているとの自負心を持ってもらうこと。そして、高齢者が老後を生き抜くための雇用の場をつくることだ。

 奇さんはもともとは教師だった。勤めていたのは既存の学校と一線を画し、子どもの個性を伸ばす取り組みを進める「代案学校」。毎日の学校へ通う道で、段ボールなどを集めて歩く高齢者の姿を見かけていた。

 「自分が高齢者になった時に韓国はどうなっているのか。自分はどんな老後を送るのか」。そんなことを思い、高齢者の貧困問題を調べ始めた。論文や新聞記事などを読み込み、高齢者への聞き取りなども進めて現在の活動に至った。

 仁川市内の住宅街を、奇さんの車が進む。待っていた女性(80)の傍らにはリヤカーに載せた段ボール。青果店から回収してきたものだという。奇さんは手早く計量し、声をかける。「最近とても暑いけど、大丈夫ですか?」

 業者に売れば1キロ数十~100ウォン程度のこともあり価格も安定しない中で、ラブリ社は、数人の高齢者から1キロ300ウォンで定期的に引き取っている。バッグの制作などには正社員として70~80代の高齢者3人を雇う。

 昨年の売り上げは2億ウォンを超えた。まだ多いとは言えないが、少しずつ増えている。大手財閥系の企業などとの連携も進める。記者が今後の目標を問うと、奇さんは「滅びること」と答えた。「格好つけた言い方だけど、高齢者の貧困問題がなくなれば、我々も存在する必要がなくなる。そう思っています」(ソウル=稲田清英)

■記者から  進む世界有数の少子化、構造的課題 韓国の高齢者が直面する貧困や暮らしの不安の問題を、以前から取材してきたが、「お金をためられなかった人の自己責任ではない」という取材先の話が改めて印象に残った。経済や社会の構造に根ざす問題だということだ。専門家の一人は、公的年金の貧弱さを「小遣い程度の額しか受け取れていない高齢者が多い」と評した。急速な高齢化と「備え」の遅れは、韓国社会の最大の課題とも言える。

 昨年末に韓国政府が発表した2070年までの長期人口推計をみると、20年に15・7%だった高齢化率は35年に30・1%、50年には40・1%、65年には45・9%になる。世界有数の少子化も同時に進むなか、老後の安心を社会全体でどう確保していけるのか。



 簡単に答えは出ないが、国や自治体に限らず、社会的企業など多様な主体が現状を改善しようと取り組む。引き続き現場から追っていきたい。