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格差社会・韓国らしいドラマ  エミー賞6冠「イカゲーム」は結局何がすごかったのか

2022-10-19 17:18:42 | 日記
エミー賞6冠「イカゲーム」は結局何がすごかったのか

9/24(土) 11:32配信


格差社会・韓国らしいドラマ


 笑いと恐怖を絶妙にミックスしたシュールな世界観を、これほどまでに徹底して作り上げた韓国ドラマを私は見たことがない。

「イカゲーム」は、Netflix配信の韓国ドラマでも、ひときわ異彩を放っているのだ。

  その一方で、これほど韓国らしい作品もないようにも思う。 

「歴史上稀にみるほどの搾取階級」ともいわれる両班(貴族階級)が支配した李氏朝鮮の時代から、日本のように財閥が解体されなかった戦後、そして現在に至るまで、韓国には激烈な格差が存在する。

こうした社会の理不尽さを映画やドラマの中で、エンタテイメントと融合させ描くことは韓国のお家芸なのだが、「イカゲーム」はそれが最も成功した作品のひとつだ。

そこで描かれるのは「勝ち負け」によって二分される新自由主義的な世界の縮図である。

 多重債務者である参加者たちは「自分が生き残るためには他者を殺さなければならない」というルールに支配され(つまり信じ込まされ)、やがては他者を見捨てることに少しも罪悪感をいだかなくなっていく。

ゲームの運営責任者「フロントマン」がこの世界の正しさとして強調するのは「機会の平等」だ。

だが、ゲームは体格的、体力的に優位な人間に有利なものがほとんどだし、性別や年齢はもちろん、立場上知りえる(もしくは知りえない)情報などによって冗談みたいに有利にも不利になる。

「年齢性別関係なし、20キロの米俵担いで100m走」がこれっぽっちも平等ではないのと同じだ。

「パラサイト」との共通点

 さらに「イカゲーム」の世界の巧妙さは「参加者の過半数が反対すれば、ゲームは中止できる」という設定が用意されていることである。

 「だるまさんが転んだ」の大虐殺に仰天した参加者たちは、多数決によってゲームをキャンセルし、一度は元いた「外の世界」に帰ってゆく。

だが借金まみれの彼らにとって、結局は「外の世界」も同じ地獄でしかなく、多くの者はゲームに舞い戻る。

「フロントマン」は、「ここで死んでも、それはお前たちが自分で選んだこと=自己責任」とのたまうが、実際のところ、何の受け皿もない社会で極限まで追い詰められた彼らには、それ以外の選択肢がないのである。

  こうした「緑ジャージ」のつぶし合いに加えて、「ピンクつなぎ」の連中の存在も効いている。

彼らは「緑ジャージ」の生活一切を管理し、ゲームの最中には失格となった者をその場で射殺する役割を担っている。

  この「ピンクつなぎ」の連中がどのように集められたか、その詳細はシーズン1では明らかにされてはいない。

だが彼らもまた、なんらかの理由で行き場を失い、集められてきたものであることは想像に難くない。

というのも、施設内で生活の一切を管理され、同じ制服を身に着け、名前でなく番号で呼ばれ、さらには「顔」まではく奪されている(マスクを取ったらその場で射殺される)という点において、彼らは「緑のジャージ」とさして変わらないのだ。

にもかかわらず「ピンクつなぎ」に与えられた「管理者」という地位は、彼らに階級を意識させ、さらに上の支配層に都合のよい階級システムを補強するものとして機能してしまう。  

その意味で「イカゲーム」が描くものは、2020年にアカデミー賞を獲得した韓国映画「パラサイト 半地下の住人」とほぼ変わらない。

「半地下の住人」は「地下の住人」を見て「自分は絶対にあんな人間のクズではない」と蔑み憎むが、地上の人間からしたらどちらも大して変わらない「人間のクズ」であり、蔑みの対象でしかないのだ。 

 そんな世界に飲み込まれまいとする主人公のソン・ギフン(イ・ジョンジェ)は、意識的か無意識か、それぞれの参加者に何度も名前を尋ねる。

それは相手が番号ではなく、たったひとつの人生を生きる「人間」であることを思い出させる行為なのである。

世界に受け入れられる普遍性

 きわめて韓国的な「イカゲーム」が描くものは、韓国社会のみにしか通用しない感覚ではない。

自己責任論と見せかけの平等を伴う新自由主義的な空気と、その結果としての格差社会は、欧米、中国や日本を含むアジア諸国などでも大きな問題として認識されている。

だからこそドラマのテーマは普遍性を帯び、広く世界に受け入れられたのだろう。

  もちろん、ハラハラドキドキさせるエンタテイメントとしての魅力は十二分にある。

これまでの時代のドラマの主人公なら、たとえ弱者であっても知恵や仲間との絆によって、ゲームを痛快に勝ち抜いていったかもしれない。

しかし、このドラマの主人公ギフンは、その人の好さや愚かさ、優柔不断さから、つねに「貧乏くじ」としか思えない状況に追い込まれ、どうにかこうにかギリギリで生き延びてゆく。

視聴者は毎回「よ、よかった……」とどうにかこうにか胸をなでおろすのみで、とうてい痛快とはいいがたい展開である。

その姿にこそ多くの人が自分を重ねてしまう、今はまさにそういう時代なのかもしれない。

  そしてたった1人生き延びて巨万の富を手に入れたギフンはもちろんのこと、ゲームの運営責任者「フロントマン」も、最終回にゲームの主催者として登場する人物さえも、ドラマは勝者として描かない。

自身の幸せのみに生きることもできたはずのギフンが、どうやらそれを捨ててしまうことがドラマの最後に暗示されている。

500人近い人間の死の上に立った彼は、もはや過去の自分にはもどれなくなっている。

 「飛躍しすぎ」を承知で言えば、1980年の「光州事件」――軍による民主化弾圧と、民間人の大量殺害――を描いた映画「タクシー運転手 約束は海を越えて」にも似ているかもしれない。

何も考えず生活に腐心していただけの小市民の主人公マンソプは、たまたま飛び込んでしまった光州事件からどうにか生き延びてソウルに戻るが、自分が目撃したあまりに非道な現実を看過できず、震えながら光州に戻っていくのだ。

  Netflixとはすでに3シーズン放送の契約を済ませているとの報道がある。

韓国ドラマの歴史を変えた作品は、再び現実の閉塞に痛烈なカウンターを浴びせてくれるに違いない。 

渥美志保(あつみ・しほ) TVドラマ脚本家を経てライターへ。

女性誌、男性誌、週刊誌、カルチャー誌など一般誌、企業広報誌などで、映画を中心にカルチャー全般のインタビュー、ライティングを手がける。

yahoo! オーサー、mi-molle、ELLEデジタル、Gingerなど連載多数。釜山映画祭を20年にわたり現地取材するなど韓国映画、韓国ドラマなどについての寄稿、インタビュー取材なども多数。著書『大人もハマる韓国ドラマ 推しの50本』(大月書店)が発売中。 

デイリー新潮編集部



「不動産バブル崩壊の足音」韓国 今度という今度は本当かも金利引き上げで

2022-10-19 17:03:49 | 日記
「不動産バブル崩壊の足音」韓国 今度という今度は本当かも金利引き上げで

2022年09月08日 07時51分 公開

 今度という今度は本当かもしれない。韓国の不動産バブルの崩壊予測だ。

台風11号の被害復旧が終わるころ、ソウル首都圏の不動産市場はどうなっているか。

高額物件が超格安で取引される事例がもういくつか出たら、心理面からもバブル崩壊は止まらなくなるだろう。

 金利引き上げによる返済額の増加、担保価値の下落に伴う資金の手当て…。どうにもならず、家を競売に掛けられた流民があふれたら…。

尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は外交どころではなくなる。

 韓国の新聞を見ていれば、毎年何回かは「不動産価格下落か」といった記事が載る。が、すぐに市況回復。

前の文在寅(ムン・ジェイン)政権は「不動産価格の抑制」を大目標に掲げたが、抑制政策はやることなすこと失敗した。

文政権5年間で、首都圏のマンション価格は、ほぼ2倍になった。

 だから韓国人にとって、不動産とりわけマンションの購入は「必ず儲かる賭博」だった。

無理な借金をしてでも、買うことが「階層上昇」へのパスポートだったのだ。

 不動産を購入するような大金を工面できない若者は、カードローンをかき集めて暗号通貨に投資した。

 無理をして不動産を購入した人も、カードローンで資金を集めた若者も、両班(ヤンバン=李王朝時代の貴族)の気風を引きずっている。

「額に汗して働くのは下人」「上人は汗をかかずに儲ける」といった思い込みだ。

 両班は手下を使って庶民からの収奪をほしいままにした。現代の両班は、居ながらにして「カネでカネを稼ぐ」ことに熱中している。

 しかし、米国追随型の金利引き上げで、不動産購入者(=借入金の大部分が変動金利)は目算が狂った。

少子化の影響で、経済活動人口の減少が始まったことは、韓国経済に暗い影を落としている。新たに購入しようとする動きも鈍った。

 映画「パラサイト」のような半地下住宅、あるいは「考試院(コシウォン)」と呼ばれる1坪空間などに住む人は首都圏だけで100万人とも200万人ともされる。

しかし、彼らはマンションとは無縁の存在だ。
 
背伸びすればマンションに手が届く層へのマンション供給量は、すでに飽和状態なのかもしれない。

 「ソウルのマンション価格が7週連続で下落、下落幅も拡大」(東亜日報22年7月15日)、

「ソウルのマンションの売買指数など3年ぶりの低水準」(同8月27日)といった報道を見ると、今度ばかりは「すぐまた右肩上がりに戻るさ」といった過去のパターンとは異質なものを感じる。

そうした中で、衝撃的なニュースがあった。

 上記の東亜報道は「下げ」と言っても、週単位で見れば、コンマ以下のことだった。

が、仁川(インチョン)市松島地区の高級マンションは今年2月には12億ウォン(約1億2200万円超)で売買が成立していたのに、8月には6億5000万ウォン(約6600万円)まで下落した(韓国経済新聞・韓国語サイト9月2日)というのだ。

 急銭を必要とした特異なケースだったとしても、この一帯のマンション価格は急落する。

 こうしたケースがいくつも出てきたら…。

歴代政権が目指してきた「不動産価格の上昇ストップ」どころか、「不動産バブルの大崩壊に突入」は確実だ。

 韓国経済は貿易赤字の急増、短期外債比率の急上昇など、不安材料に事欠かないが、内因による金融危機発生のリスクの方がはるかに大きそうだ。

 (室谷克実)




中国“一帯一路”失敗だけではない、「バブル崩壊が間近」の理由

2022-10-19 15:59:08 | 日記
中国“一帯一路”失敗だけではない、「バブル崩壊が間近」の理由

10/19(水) 6:01配信

● 中国政府の投資意欲が いつまでも旺盛な理由 

 今年4月、中国の河南省や安徽省にある村鎮銀行で預金が引き出せなくなる取り付け騒ぎが起こり、抗議デモが頻発した。

このデモをきっかけに、他銀行への信用不安が全国に波及して、やがて地方大手銀行の取り付け騒ぎにまで発展した。

  中央政府は預金者に対して50万元(約1030万円)を上限に肩代わりすることで収束をはかろうとしたが、事態を収めることはできなかった。 

 地方銀行の経営が苦境に立たされているのは、地方政府が過剰に投資をしてきたことが大きな原因になっている。

地方政府は中央政府の掲げる経済成長目標を達成するために無理を重ねて投資を拡大させてきたが、ここに来てそのほころびがついに表面化し始めたのである。

 経済資料のデータベースを運用するCEICによると、中国のGDPに占める投資の割合は2021年で43%にものぼっている。

割合の高さは、日本の25%、アメリカの22%と比べても歴然としているが、他の新興国と比べても(30%前後が多い)異常に高い。

中国経済は投資を大きくすることで無理を重ねて成長しているのである。  

では、中国ではなぜこれほど旺盛な投資が可能なのだろうか。 

 その原資となっているのが、中国人民の莫大な貯蓄である。

上記のCEICによれば、中国の2021年の貯蓄率は44.5%だった。

アメリカが約20%、世界的にも貯蓄率が高いことで知られている日本ですら約30%であることを考えあわせると、異常に高いと言わざるをえない。

  中国政府が人民の生活向上ではなく経済成長を優先していることは、これらのデータからも明らかだ。

社会福祉を後回しにして、投資による成長を積み重ねることでアメリカに追いつくことが、中国の経済政策の柱の一つとなっている。

先に国力をつけ、経済成長の結果、人民が豊かになればいいという考え方に基づいている。 

 社会福祉を後回しにすることの弊害は明らかだ。

中国にはまともな公的年金制度がなく、多くの人民が将来に不安を持っている。

しかも、長年続いた一人っ子政策のために、老後に面倒をみてくれる子どもも当てにできなくなっている。

  だが、その不安こそが中国の旺盛な投資の原資でもある。

人民は不安だからこそ、貯蓄に励む。

それを投資に回すことで中国は高成長を実現して、2010年にはデフレ経済で停滞する日本経済を抜き去って世界第2位の経済大国にのし上がり、アメリカ経済の成長を大きく上回るハイペースで成長を続けてきた。 

 だが、本来であれば中国のGDPで人民の家計の割合が大きくなるべきなのだが、中国政府は人民の生活を豊かにする努力を怠り、ひたすら投資による成長を追求する。

家計の割合が高まれば消費拡大による経済成長が可能になるが、中国政府はその選択肢を考えてはいないようだ。

● 投資優先の政策により 地方政府の債務が急拡大  中国政府が意識的に人民の貯蓄を奨励してきた面もある。

1990年代から預金金利を不当なほど低く抑えて、貯蓄が企業や地方政府に回るようにしたおかげで、中国企業や地方政府は安価に投資資金を調達できたのである。

また、投資効率が良い時代であることもあって、莫大な利益を上げ続けて、2000年代の「世界の工場」として急成長の土台を作り上げたのである。 

 だが、この成長スタイルには限界がある。

中国が「作るべき工場が多数ある」「造るべきインフラがたくさんある」という状態であれば、投資額がいかに大きかろうと問題にはならないが、中国はすでに道路や鉄道や都市開発などのインフラ投資が広く行きわたっており、経済への大きな波及効果が見込めなくなっている。

 通常であれば、投資で大きな成長が見込めなくなった段階に達すると、投資優先から国民の消費を拡大させる内需優先にシフトするのが一般的である。

中間層を増やし、国内需要を高めて、消費を喚起することで経済成長を続けるわけだ。 

 ところが中国政府は、投資で高成長が見込めなくなりつつあった2005年過ぎになっても、同じ投資優先の政策を維持した。

その結果、投資額を債務が上回るようになってしまったのである。

 とくに地方政府は2010年頃から税収の伸びを赤字が大きく上回るようになって、その差は年々開くばかりだ。

新華社によれば、今年8月までの地方債の累計発行額は6兆474億元(約124兆2000万円)で、うち一般債が1兆7564億元(約36兆1000万円)、特別債が4兆2910億元(約88兆1000万円)となっている(特別債はリターンが得られる投資のための債券を指す)。

  さらに、中国の財政部によると、地方政府の債務残高(累積債務)は2021年には30兆5000億元(約626兆5000億円)にまで積み上がっている。

これは2017年の16兆5000億元(約338兆9000億円)から見ると1.8倍であり、GDP比でいえば2017年の19.8%から2021年末には26.6%に、実に6.8%も上昇している。

コロナ禍で悪化した分を割り引いても、今後、地方政府については借金体質から抜け出せる見込みが立ちそうもない。 

● 爆発寸前にある 地方政府の隠れ債務 

 中国には隠れ債務の問題もある。

各地方政府は傘下に、デベロッパーと資金調達の機能を持つ投資会社の「地方融資平台」を持っている。

これは、地方政府が中央政府からの規制を逃れて、インフラや住宅投資などによって歳入を増やす起点となってきた。 

 採算の合う案件が豊富にある時期はそれが機能して財政が大きく増やせたのだが、上述したように、2005年以降、採算の合う案件はごく限られたものになっていた。

地方政府はそれでも地域経済の活性化のために投資を膨らませて、車が通らない道路、乗客の少ない鉄道、イベントが開催されないコンベンションセンターなど、無駄の多いインフラを造り続けたのである。 

 ゴールドマン・サックスによる分析では、全国の地方融資平台の総負債額は2020年末時点で約53兆元(約1088兆6000億円)に達しているという。

この数字は中国のGDPの半分を超え、公式発表の政府債務より大きい。

実際、多くの地方で債券の新規発行が困難になっており、借り換えしかできなくなっているといわれている。

  さらに、金融が発達していない中国では、人民が投資する理財商品の多くが、地方融資平台の発行する社債で運用されている。

これはいわば、銀行や証券会社を介さないで、個人が民間を介してデベロッパーにお金を貸し付けて利益を得るシステムである。 

 地方で採算性のある案件があるうちはそれでよかったが、今や地方政府は地方債の借り換えのために投資を続ける自転車操業のような状態に陥っているのだから、借金を重ねて社債を償還しているところが多いのではないだろうか。 

 人民側は地方政府が関わっているものだからデフォルトなどするわけがないと考えているようなのだが、もし地方融資平台でデフォルトが起きれば、個人の理財商品に大きな損失が生じる。それが全国に広がれば、大きな社会混乱を招くのは避けようがない。 

● 不動産バブル崩壊による 連鎖倒産のリスク  

また、金融システムが発達していない中国では、企業は株式や社債で資金を調達する直接金融ではなく、銀行などから借りる間接金融が中心になっている。

この影響をもろに受けたのが、不動産投資規制で経営難が相次いでいる不動産企業だ。

  最近も中国第2位のデベロッパーである恒大集団の危機が報じられているが、すでに中小不動産企業で倒産が相次いでいる。 

 中国の新築マンションは完成前に売って完成後に引き渡す日本と同じやり方をとっているが、唐突な投資規制によってこの資金の流れが止まり、多くの不動産企業が回転資金の不足を起こしている。

そのため肝心の建設ができずに、中国各地でローン不払い運動が起きている。

多くの不動産企業が綱渡りの経営を強いられているのだ。 

 さらに、これまで堅調だった大都市の不動産物件についても、一部で価格の下落が起き始めている。

もしこれが、北京や上海や深センにまで波及すれば、不動産バブルが崩壊して倒産が激増する可能性がある。

  中国経済は極端に不動産に依存してきた。

それは経済成長のためにはインフラに投資を集中することが効果的だからであるが、住宅や道路については飽和状態にある。

中国の経済活動の2~3割が不動産に関わっており、不動産バブルがはじければその負の効果が中国経済全体に波及することは必至だ。

● 一帯一路の失敗は 日本経済にも大ダメージ  

習近平指導部は国内投資の限界から、投資を外に向ける一大外国投資プロジェクト「一帯一路」を進めてきた。

だが、すでに優良案件については日欧米が手を付けていたことで、中国はアジア、アフリカ、中南米、太平洋島嶼(とうしょ)国などの低所得国が中心になってきた。

  ところが、一帯一路は中国企業が国内で余剰になっていた中国人労働者を使うのが基本であるために、地元地域の雇用にさほど貢献しないことが多い。

また、リスクの高いものが多いために、金利が高く返済期限も短いので、新型コロナウイルスのパンデミックによる経済停滞と、ウクライナ戦争をきっかけに起きた資源高で融資が焦げ付き始めている。

  欧米の専門機関は「すでに持続可能な状態にない」と判断しており、その一例として、一帯一路の世界最大の受け入れ国であるパキスタンが中国離れを起こしつつある事例を紹介した(『中国「一帯一路」失敗の象徴…親中だったパキスタンが米国に急接近する理由』)。

  パキスタンをはじめとする受け入れ国は債務免除を求めているが、中国が応じる気配はない。

それは中国には途上国投資であって「支援」という意識がないことが最大の原因だが、それとともに、中国の財政に余裕がないことも理由の一つだろう。

  中国経済はすでに「メルトダウン」が始まっている状態であり、中央政府がかじ取りを間違えば「バブル崩壊」という爆弾が破裂する可能性が、徐々に高まってきているのではないだろうか。 

 これは対岸の火事ではない。

中国は経済規模が大きいだけに、バブルがはじければ日本経済も大きなダメージを受けかねない。

さらに、社会不安から民衆暴動などが起これば、その矛先をかわすために拡張主義を先鋭化させて、台湾併合などの侵略行為に走る可能性もあるのだ。  

(評論家・翻訳家 白川 司)