資本市場研究院のカン・ヒョンジュ研究委員は、最近発刊した「韓国人口高齢化の危機と長期経済成長」という報告書で、「韓国は他の経済協力開発機構(OECD)国家に比べ、人口高齢化の速度が急激だ。 緩やかに高齢化する他の国家に比べ、その影響が非常に大きいだろう」と指摘した。 6月に国連(UN)が発表した「世界人口推計」によると、2050年に韓国は65歳以上の人口比重が39.4%に達する。 人口100万人以上の地域の中で香港を除けば、高齢人口の比重が最も高い国になる見通しだ。 2022年と2050年、65歳以上の人口比重の差を人口高齢化速度で定義すると、韓国の高齢化速度は21.9%ポイントで香港を含めた主要地域の中で最も速い。 高齢化は出生率の低下とともに、人口構造に対する懸念を高めている。 ベビーブーム世代が全体人口に占める割合があまりにも大きいうえ、2000年代以降、少子化が累積してきた。 それだけに、もし出産率が劇的に改善されても、現在予想される人口構造の変化傾向に、影響を及ぼしにくいという分析だ。 また、中国をはじめ東アジア諸国の同伴高齢化で、人口が外から入ってくる可能性も低く、急激な高齢化は避けられない状況だ。 カン研究員は「OECD国家を対象にした先行研究によると、65歳以上の人口比重が1%ポイント増えれば、成長率が0.2~0.6%ポイント程度減少する。 このような数値を韓国の高齢化速度(2022年対比2050年、65歳以上の人口比重21.9%ポイント増加)に代入してみる。 そうすれば、20年後の成長率が今より4~13%ポイント下落するという結論が出ている」と説明した。 人口高齢化に関する研究は、高齢化で成長が鈍化する主な原因として生産性の鈍化を指摘している。 労働生産性と年齢間の関係に対する実証研究も、40代以降の生産性が下落すると見ている。 カン研究員は「韓国経済の全要素生産性も持続的に下落してきたことを勘案すれば、主要機関の長期予測値が下方傾向になる危険性も小さくないだろう。 とくに高齢化が漸進的に進行する中で、東欧と中国による世界経済への編入効果を享受した先進国に比べ、韓国は人口高齢化の速度が速いうえに、中国との同伴高齢化で対外環境が否定的な点も考慮する必要がある」と診断した。 これに対し今後の政策対応は高齢化の否定的効果を緩和する一方、人口構造の変化に、迅速に適応できるよう支援することに焦点を置かなければならないという。 カン研究員は「限られた人口資源を効率的に活用するために、労働市場の先進化を通じてマクロ経済全体の生産性を向上させる。政府の財政や国民年金など、高齢化で支出が急激に拡大する分野に対して、先制的に十分な構造調整を施すことが必要だ」と提案した。 さらに、高齢人口が増えるだけに、高齢者に適した労働環境を造成し、生産可能人口の縮小を補完する必要があると付け加えた。 |
韓国経済、景気と通貨防衛の板挟み 減速下で高速利上げ
朝鮮半島2022年11月24日 20:31
【ソウル=細川幸太郎】
韓国経済が景気と通貨防衛の板挟みになっている。
経済成長が鈍化するのに、韓国銀行(中央銀行)は24日、政策金利を0.25%引き上げた。
米国との金利差拡大で資本流出圧力がくすぶり、ウォン安が加速しかねないからだ。
半導体市況の低迷で主力の輸出が振るわず、消費減退も重なって成長のけん引役が見当たらない。
利上げは6会合連続で政策金利を年3.25%にした。
2021年8月以降の利上げ幅は累計2.75ポイントに及び、異例の速いペースといえる。
問題はこの「高速利上げ」を景気減速下で実施していることだ。
韓銀は24日、23年の実質国内総生産(GDP)成長率見通しを1.7%と発表した。
22年の成長率見通し2.6%からさらに落ち込む。
23年の輸出は0.7%増で低迷し、消費も2.7%増にとどまる見通し。
設備投資は3.1%減との厳しい見方を示した。
24年の成長率は2.3%まで回復するとした。
民間の見通しはさらに厳しい。韓国大信証券の23年成長率予測は1.6%にとどまる。
減速の主因は屋台骨である輸出の鈍化だ。
24日記者会見した韓銀の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は「23年は輸出と投資が想定を下回り、消費の回復傾向も鈍化する」と説明した。
8月時点の見通し(2.1%)から0.4ポイント下方修正したことについて「主要国の成長率低下に伴う輸出低迷が要因の9割を占める」とした。
21年の輸出総額の2割を占めた半導体は市況悪化が続き、底打ちの兆しは見えない。
輸出低迷は投資意欲も冷やす。
半導体大手のSKハイニックスは23年の設備投資を22年比で50%超減らすと表明した。
半導体メーカーの投資抑制が国全体の設備投資の減少につながり、経済成長を押し下げる。
資源高・原材料高にウォン安・ドル高が重なり、輸入物価は高水準が続く。足元の貿易収支はアジア通貨危機だった1997年以来、25年ぶりに7カ月連続の赤字だ。
貿易赤字がウォン安につながり、ウォン安による輸入物価上昇が赤字拡大を招く悪循環に陥っている。
頼みの消費も振るわない。新型コロナウイルスに伴う行動制限は解除されたものの、金利上昇が足かせとなる。
韓国は家計負債が大きく、金利上昇が利子負担拡大に直結する。
住宅ローンの8割超が変動金利で、9月末時点の平均貸出金利は4.79%と1年間で1.78ポイントも上昇した。
23年も金利上昇は続きそうで、利払い拡大が可処分所得を減らす構図だ。
それでも利上げするのは足元で米国との金利差が拡大しており、ウォン安と資本流出が連鎖する懸念を拭えないからだ。
米連邦準備理事会(FRB)の急速な利上げによってウォン相場は10月に対ドルで年初比2割超下落し、1ドル=1444ウォンと13年ぶりの安値をつけた。
足元ではややウォン高に戻したが、ウォン安の懸念は消えていない。
資本流出への備えは心もとない。
韓国の外貨準備高は10月末で4140億ドル(約58兆円)と、為替介入のために21年末から約500億ドル減少した。
第一生命経済研究所によると、対外債務などからはじいた「適正水準」と比べ、韓国の実際の外貨準備額は9月末時点で98%にとどまった。
国際通貨基金(IMF)は100~150%が望ましいとしている。
「レゴランド発」の金融不安の連鎖も、政府は火消しに躍起
韓国北東部に5月オープンした「レゴランド・コリア」が足元の金融不安の発端となった韓国では思わぬ形で金融不安も表面化した。
発端は韓国北東部に5月に開業したテーマパーク「レゴランド・コリア」を巡る債務不履行問題だ。
9月に償還期限を迎えた2050億ウォン(約210億円)のレゴランド開発公社のコマーシャルペーパー(CP)を巡り、地元自治体の江原道が支払い保証を撤回する方針を示した。
野党系の元知事らの過去の債務保証判断について、与党系の現知事が「不当」と判断したためだ。
江原道は2011年の誘致決定時にレゴランド側に敷地を100年間無償貸与するなどの優遇策を決め、総額6175億ウォンを投じた。
現知事の方針転換によって「地方政府の支払い保証も履行されないほど韓国は危ない」と金融市場は受け取り、他の企業も債券発行が難しくなった。
信用不安が連鎖し始めると、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は50兆ウォン以上の緊急支援金の投入を表明した。
それでも市場の動揺は収まらない。
端的な例が韓国電力の社債発行の不振だ。「トリプルA」の格付けを持ち、事実上の国有企業でもある韓電は10月に計1兆2000億ウォン規模の社債発行を計画したが、実際の発行額は半分程度にとどまった。
11月には中堅生命保険会社、興国生命が自社のドル建て債券について「決められた価格で満期前に買い戻す」との発行時の約束を履行しないと発表した。
債券市場の動揺により、買い戻し資金を調達する債券発行が難しくなったからだ。
企業の債券発行が難しくなれば、長期資金を調達できず、設備投資も縮小しかねない。
韓国金融監督院の李卜鉉(イ・ボクヒョン)院長は「金融システム全般の問題ではない。政府は流動性を支援し、金融機能が円滑に回るように対応している」と述べている。