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日本経済復活の切り札と対照的な韓国経済危機 製造業の「省エネ技術」世界一の日本

2022-12-22 17:40:51 | 日記
日本経済復活の切り札と対照的な韓国経済危機 製造業の「省エネ技術」世界一の日本

 97年「国家破綻」より厳しい韓国 国際投資アナリスト・大原浩氏分析

欧米のインフレに伴う金融引き締めや中国の景気失速など、世界経済の先行き懸念が広がっている。日本も影響は避けられないが、国際投資アナリストの大原浩氏は緊急寄稿で、日本経済は今後、製造業を中心に復活する切り札があると指摘する。

対照的に、韓国経済は大きな危機に直面していると分析する。

一時期、「韓国が日本を追い抜く」などと騒いでいた人々がいたが、さすがに現状ではトーンダウンしているようだ。

日本経済が1990年頃のバブル崩壊以来、暗く長いトンネルを通ってきたのは事実だが、すでに出口から光が差し込んでいる。

日本は、原油などエネルギーのほとんどを輸入に頼り、食料自給率もカロリーベースで38%しかない。
円相場については、筆者は数十年サイクルの変動の中で、「長期的円安」局面に向かうのではないかと思う。

日本の製造業が空洞化し、海外に工場を移転させたのは「長期的円高」の影響が大きい。

それが逆転するのだから、工場が日本回帰するのは当然ともいえる。

特に昨今は、中国など多くの国々で、政治、社会不安によるリスクが増大しているから、リスク管理の面でも国内回帰の流れが後押しされる。 

それに対して、韓国の「わが世の春」は終わり、これから危機的状況に向かうと思われる。

韓国を代表する産業の自動車では、電気自動車(EV)のバッテリーが「炎上」する事故が少なからず報告されている。

韓国製バッテリーを搭載したEVも大規模リコール騒動を起こした。
自動車以上に韓国経済にとって重要なスマートフォンも需要の頭打ちなどの問題が表面化している。特に、韓国の重要な貿易相手国である中国での需要の減少が著しいようだ。
韓国の製造業は、日本から輸入した先端製造装置を設置し、日本の先端材料を使用するビジネスモデルが多い。韓国が日本に対して貿易赤字なのも、日本から先端材料や製造装置を輸入しなければならないからだ。
これは多くの国々においても同様だ。インフレで価格が上がっても「日本品質」の製造装置や材料に代わるものがないから購入せざるを得ない。これから日本の製造業が躍進する理由でもある。

こうした事情があったため、韓国は2019年7月に日本が実施した半導体関連素材の対韓輸出管理適正化にも大騒ぎした。日本が先端素材や製造装置の「輸出制限」を本気で行えば、韓国の製造業は壊滅しかねない。

しかし、製造業において、貴重なエネルギーを節約する技術(省エネ)で、日本は世界でダントツだ。中国をはじめエネルギーを爆食いする国々の製造業をこれから席巻するのではないかと考えている。人件費が安いことよりもエネルギーコストを下げることの方が、これからますます重要になるからだ。

韓国の8月の貿易赤字は95億ドル(約1兆3700億円)を記録した。1カ月分のデータで、過去最大の貿易赤字だった1996年(アジア通貨危機の前年)の通年の赤字幅(206億ドル)のほぼ半分に達する規模だ。
韓国を取り巻く状況は、97年にアジア通貨危機で事実上の「国家破綻」となったときよりも厳しいと思われる。
当時より悪いのは、エネルギー価格高騰で多額の外貨が流出していることだ。にもかかわらず、2015年に日本、21年に米国と通貨交換(スワップ)協定を終了しており、外貨を融通することが難しくなっている。
根本的な問題で言えば、21年の韓国の合計特殊出生率は0・81で、17年以降5年連続で最低を更新した。日本の21年の出生率は1・30だ。出生率が「1・0」を切ると国家崩壊レベルといわれる。
多くの国々がインフレやエネルギー危機に苦しむなか、韓国に「危機」がやってきたら、世界の国々は助けてくれるだろうか。


■大原浩(おおはら・ひろし) 人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」(木曜掲載)を連載中。




“暴動”も起きた韓国のマンションバブル崩壊 国民の借金体質が金融・通貨危機を招く

2022-12-22 16:03:51 | 日記
“暴動”も起きた韓国のマンションバブル崩壊 国民の借金体質が金融・通貨危機を招く

12/20(火) 5:59配信


韓国・ソウルのマンション群。不動産市場は突然の寒波に襲われた――

 韓国で不動産価格が急落する。1990年代初めの日本と同様、生産年齢人口の減少に利上げが追い打ちをかけた。

バブル崩壊が金融システム不安、ひいては通貨危機を呼ぶ可能性がある。韓国観察者の鈴置高史氏が解説する。
 

「リーマン」以上の暴落


鈴置:韓国で不動産の指標となるマンション価格の下落が止まりません。

8月29日掲載の「不動産バブルがはじけた韓国 通貨売りと連動、複合危機に」で「つるべ落とし」と表現しましたが、当時は前週比でマイナス0・1%台のペースでした。 

 それが12月第2週には全国でマイナス0・64%、首都圏になるとマイナス0・79%、ソウルでマイナス0・65%と下げ幅が拡大しています。

いずれも政府機関である韓国不動産院のデータです。

 「マイナス1%にもならない」と思うかもしれませんが、これはたった1週間での値下がり率なのです。

マイナス0・60%が52週間――1年間続けば、36・49%下落します。

下げ幅自体が拡大中なので、それで終わるとは限りません。ここまで来ると、疑いようもない「バブル崩壊」です。 

 前半の下げ幅は小さかった2022年でも、年初から12月第2週までに、それぞれ5・83%、7・44%、5・83%下げています。 

 国土交通部が12月24日に発表した2023年の公示地価も全国平均で前年比5・92%下がりました。

2022年の不動産価格急落を反映したもので、前年比で下げたのは1・42%減だった2009年以来です。

「リーマンショック」当時と比べても激しい地価の下落が起きたのです。 

 業界団体が設立した住宅産業研究院は2023年のマンション価格は全国で8・5%、首都圏では13・0%、ソウルで9・5%、前年と比べ下がると予測しました。

12月12日の発表です。

  2022年の実績見込みはそれぞれ13・2%減、18・4%減、16・2%減ですから、2年間で20-30%下がるとの見通しです。

31%値下げ、外車プレゼントも


 当然、マンションを買おうとする人は激減、売れ残りが急増しています。

国土交通部の調べによると、10月現在の売れ残りは全国で4万7217戸。前年同月の1万4075戸の3倍以上に膨れ上がりました。 

 朝鮮日報の「売れ残りを抱え瀬戸際に…建設会社など不動産寒波で分譲延期」(12月12日、韓国語版)はマンションの分譲が相次ぎ中断していると報じました。 

 韓国ではマンションの着工前に入居者を募るのが通例です。

応募者が少なく赤字になると判断した分譲会社が、入居希望者に違約金を払って契約を解除、分譲時期を遅らせ始めたのです。

232戸のマンションに応募者が1人もいなかった例もあるそうです。

  経済紙、マネートゥデイの「『2・5億の出血セール』『外車を贈呈』…『売れ残りを投げ売る』建設会社のウラ事情」(12月13日、韓国語)が業界の混乱ぶりを伝えています。 

 8億ウォン(8300万円)の販売価格から31%、2億5000万ウォン(約2600万円)値引きしたり、外国製乗用車を抽選でプレゼントする特典を付けたり、分譲会社は生き残りをかけてあの手この手を繰り出しています。

  値下げしない分譲会社に対しては「暴動」が起きました。

契約金を支払って入居待ちの人々が、集団で押し掛けて値引きを要求。

拒絶されるとモデルルームで椅子を投げ、マンションの模型を壊しました。

  2021年までは完全な売り手相場。

分譲に応募しても当選する確率は低く、人気のマンションでは入居の権利はプレミアムが付いて転売されたといいます。韓国の不動産市場は突然の寒波に襲われたのです。


山高ければ谷深し

韓国のマンション価格の年間変動率

――利上げがマンション暴落の引き金を引いたのですね。

 鈴置:その通りです。が、2020年以降の金融緩和が伏線となっていることを見落としてはなりません。

新型コロナによる景気の悪化を防ぐため、韓国銀行は同年3月に政策金利を0・5%引き下げ、年0・75%としました。

5月にはさらに0・25%引き下げて、過去最低の年0・5%に至りました。 

 これが不動産バブルを生んだのです。

グラフ「韓国のマンション価格の年間変動率」をご覧ください。

2019年にはソウルは前年比0・15%増に過ぎず、全国と首都圏ではマイナスでした。それが2020、2021年と急騰したのです。 

 ソウル市内の84平方メートルの広さのマンションが日本円換算で1―2億円、というのが通り相場になりました。

「今買わないと一生、家を持てない」と焦った人々は借りられるだけ借りてマンション購入に走りました。

そして、それがさらなる高値を呼んだのです。 
 家を持つ人も――というか、持つ人こそが投機に加わりました。

韓国には「チョンセ」という独特の賃貸制度があります。
借家人は家賃を払わない代わりに、不動産価格の5-8割の保証金「チョンセ」を家主に預ける仕組みです。

  多くの家主はこの「チョンセ」で新たなマンションを買います。

この物件を担保に銀行からおカネを借りれば、自己資金はゼロで初めの不動産と同額以上のマンションが手に入ります。

最初の1戸があれば、次々と不動産を増やしていけるのです。 

 もっとも、この手口が有効なのは不動産価格が右肩上がりの時だけ。

大きく下がれば、家主は資産以上の債務を抱えることになり、「チョンセ」による投機は瓦解します。

  さて、韓国は2021年8月に一転して利上げに踏み切りました。

韓銀は政策金利を年0・5%から年0・75%に引き上げ、その後も利上げを重ねました。2022年11月24日には年3・25%に達しました。

たった1年3カ月で2・75%も引き上げたのです。 

 米国が金融引き締めに転じたため、追従しないと資本逃避が起きて通貨危機に陥ると判断したのです。

その結果、2年間で20―30%は下がろうか、という不動産の暴落が始まったのです。まさに「山高ければ谷深し」です。

IMF、「韓国の泡は10%」

これは「従中・反米・親北」路線の帰結だ!

 朝鮮半島「先読みのプロ」による冷徹な分析 『韓国民主政治の自壊 』

――金融を緩和したのは韓国だけではありません。

 鈴置:確かに、多くの国が韓国と同じ様に激しい金利変動に直面しました。

もともと超低金利で、米国追従の利上げにも動かなかった日本は世界の例外です。

  IMF(国際通貨基金)も、コロナに対応した金融緩和でアジア太平洋地域の不動産価格が急騰。

その後の金融引き締めにより、急落するリスクが膨らんでいる――と警告しました。

12月14日に発表した「Housing Market Stability and Affordability in Asia-Pacific」です。 

 実態以上に膨れ上がった「泡」部分を推計したのがミソで、コロナ以前と比べニュージーランドで約20%、韓国と豪州では約10%程度、不動産価格が下落するリスクがあると分析しました(11ページ)。

  韓国は「ハイリスク国」に分類されたのです。理由は2019年の第4四半期から2021年の第4四半期にかけての不動産価格の高騰が顕著だったことです(3ページ)。

「コロナ由来」と「人口由来」

 韓国の危うさは構造的な要因からも来ています。

「コロナ由来のバブル」の前から、「人口由来のバブル」が発生していたのです。

  グラフ「韓国のマンション価格の年間変動率」を見ると、それが分かります。

2016年から2018年にかけて――コロナ以前からソウルのマンション価格が上がっています。 

 生産年齢人口のピークが2019年でしたから、「ピーク前のカネ余り」が発生。

投機の対象にしやすいソウルのマンション市場にホットマネーが流れ込んでいたのです。

  KB国民銀行によると、2017年5月の発足以来、文在寅(ムン・ジェイン)政権の4年8カ月でソウルのマンション価格は2・2倍に上昇しました。

「泡」の相当部分はコロナ以前に生じていたのです。

  2019年にはいったんバブルが収まったのですが、予期せぬコロナ対策でまた「泡」が膨らんだ。

今後、生産年齢人口の減少と共にマンション需要が減っていくのは確実です。

コロナによる「泡」が消滅するだけでなく、実需も細っていくのです。

 「高い山」から「深い谷」に堕ちたうえ、その谷底も泥沼で、さらにずぶずぶと沈んでいく構図です。

韓国の「今」は、日本で言えば30年前――1992年頃に当たります。

  なお、生産年齢人口の減少が不動産バブルを呼ぶ仕組みと、韓国の同人口が急減する見通しに関しては『韓国民主政治の自壊』第4章第3節「ついに縮み始めた韓国経済」で詳述しています。

建設会社の倒産が始まった

――今後の展開は?

  鈴置:建設会社の倒産が始まりました。

TV朝鮮の「違約金を払い分譲を取り消し…連鎖倒産の恐れ」(12月14日、韓国語による動画)は以下のように報じました。

 ・今年だけですでに地方の建設会社10社が倒産しています。

このまま行けば、不動産発の経済危機が現実化するとの暗い見通しも出ています。 

 韓国では施工を担当する建設会社もマンション分譲事業に出資するのが普通です。

工事や分譲が遅れることで、資金繰りに詰まる中小建設会社が出ているのです。 

 政策金利の引き上げとマンション不況のために、建設会社への貸し出し金利も高騰しています。

マネートゥデイの「『2・5億の出血セール』『外車を贈呈』…『売れ残りを投げ売る』建設会社のウラ事情」は「10%未満だった貸し出し金利が20―30%に跳ね上がった」と報じています。

  財閥系の建設会社までも貸し渋りにあっています。

ロッテ建設が同じグループのロッテホームショッピングやロッテ精密化学などから、10月以降の1カ月間で合計1兆1000億ウォン(1100億円)を借りました。

マンション建設用の資金を金融機関から調達しようとして失敗したのです。 

 経済紙、亜州経済の「ロッテ建設、また資金借り入れ…ロッテホームショッピングから1000億ウォン規模」(11月11日、日本語版)で詳細を読めます。

  大手の都市銀行は不安定なマンション事業への融資には消極的なため、建設会社におカネを貸しているのは主に証券会社や、貯蓄銀行と呼ばれる中堅の金融機関です。

  韓国銀行は建設業界で発生する不良債権の増加による金融システムの動揺を懸念し、11月初めに証券会社に対する特別融資に乗り出しました。 

 ただ、特別融資に応じた証券会社は出なかったようです。

融資を受け入れると「危ない会社」との烙印を押され、信用不安が増すからです。

韓国経済新聞が「韓国銀行が6兆の支援に出たが、レポ取引を要請する証券会社は“ゼロ”」(11月4日、韓国語版)で報じました。

  TV朝鮮の「違約金を払い分譲を取り消し…連鎖倒産の恐れ」が「不動産発の金融危機」を懸念したのも、決して大げさな話ではないのです。

世界一の家計負債

 高金利は別の経路を通じても韓国経済に打撃を与え始めました。

マンションを買おうと借金をしていた個人が破産する例が出てきたのです。

これが続けばおカネを貸していた金融機関の経営がおかしくなります。 

 先ほど申し上げたように、マンションバブルに乗り遅れまいと焦った人々がおカネを借りまくって購入費用に充てた。

ところが基準金利の引き上げで支払うべき利息も膨れ上がり、生活ができなくなりました。 
 マンションを売って返済しようにも値下がりしていて借金も返せない。

そもそも市場が凍てついていて、買ってくれる人を見つけるのが大変です。

  ちなみに韓国の不動産ローンの70%強が変動金利です。

政策金利が0・5%の時は3%前後の利払いで済んでいたのに、政策金利が3・5%に上がった今、ローンの金利は7%に達します。 

 日本円に換算すれば、5000万円借りていた人の年間の利子は150万円から一気に350万円に膨れ上がったのです。

1カ月に直せば、12万5000円から30万円弱に。これでは生活が立ち行きません。

 ――でも、借金している韓国人ばかりではないでしょう。

 鈴置:そこが、日本人の想像を超える点です。

韓国人は「借金している人ばかり」なのです。

韓国は異様な借金大国です。
  OECDの統計によると、韓国の家計債務は可処分所得の206・48%(2021年)。

日本の115・37%(2020年)、米国の101・10%(同)と比べ突出しています。 

 国全体で見ても、韓国は家計負債が世界で唯一、GDPよりも大きい国とされています。

国際金融協会(IIF)の2022年第1四半期のデータによると、韓国のGDPに対する家計債務の比率は104・3%。

  米国が76・1%、日本が59・7%なので、韓国という国自体が借金で回っていることが分かります。

ハンギョレの「韓国の家計債務、GDP比104%…依然として世界1位」(6月6日、日本語版)から引用しました。

投機に失敗、生活保護を受ける若者

 韓国メディアは一斉に「利上げで生活難に陥った人々」の特集を組んでいます。

韓国経済新聞は11月3日から「大韓民国 借金レポート」(韓国語版)を3回連載しました。 

 1回目は株や仮想通貨、不動産に投資した結果、大損した20―30歳代の人たちの話です。

不動産価格が急騰するのを見て「このままでは一生、家を持てない」と焦り、カネを借りて投機に走った若者たち。

この世代で生活保護を受ける人の数がこの5年間で2倍に増えたとのエピソードも紹介されています。

  2回目は40―50歳代の苦闘話です。

持ち家の借金を返している最中の世代で財産の90%が不動産といういびつな資産構成です。

この世代の10人に3人が多重債務者であるとの事実も明かされます。

彼らこそが不動産の暴落の衝撃をもろに食ったのです。

  3回目は60歳以上の自己破産が増えている、という話から始まります。

韓国では50歳代で会社を辞め、食堂など自営業を始める人が多い。

しかし、最近の資金事情の悪化で利払いが増えたうえ、高金利の余波で消費が委縮し売り上げも減ったからだ、と韓国経済新聞は説明します。

焦点は金融機関の経営不安

 韓国MBCはこれまでに2回にわたり「バブル崩壊」という番組を放送しました。

11月15日の「1部」では、自分のマンション価格暴落に困惑する人々や、利上げで増えた借金を返すためにビル清掃のアルバイトを始めた主婦を紹介しました。

  12月13日の「2部」では専門家が「チョンセは資産ではなく負債である。これを含めれば、韓国のGDP対比の家計債務は153・9%に跳ね上がる」と指摘しました。

異様な借金経済で回ってきた韓国が今、崖っぷちに立っていると警告したのです。  別の専門家は「利子はタダのようなものだ、と思い込んだのが悲劇の原因だ」と、借金して投機してきた韓国人を諭しました。  韓国経済新聞もMBCも「利上げに苦しめられる人々」という視点で特集を組みました。ただ、金融専門家は別の恐怖を感じているでしょう。建設会社に加え、個人の不良債権問題が膨れ上がったら、金融機関が破綻する――との危機感です。  韓国の家計債務の大きさは日本人の想像を絶する規模です。そして「借金が返せない人」が増えています。韓国メディアも今後、「金融システム不安」に焦点を当ててくると思われます。

悪魔の二者択一

――こんなに大きな副作用があるのに韓国はなぜ、金利を急速に上げたのでしょうか。

 鈴置:それしか手がなかったのです。先ほど申し上げたように、上げなければドルとウォンとの間で金利差が生まれ、資本逃避が起きてしまったでしょう。

  韓国は1997年と2008年の2回、資本逃避による通貨危機に陥りました。

1997年の危機では「IMFの統治」を受け入れざるを得ませんでした。「
2度と恥はかきたくない」というのが韓国民のコンセンサスです。  日本でもドル金利の上昇により円が売られ、ドル高円安になりました。

が、日本人は韓国人ほど心配しなかった。

日本は豊富なドル建ての資産を持つうえ、政府も企業もドルの借金に頼っていないからです。

韓国の国債は原則ウォン建てですが、企業はまだドル建てで借金しています。

 ――利上げの悪影響がこれだけ出ている韓国。

今からでも金利を下げることはできないのですか? 

 鈴置:ドル金利は2023年も高止まりする模様です。

下手にウォン金利を下げれば、資本逃避が起きます。

韓銀も利下げどころか「依然として高水準の物価が続く以上、当面は利上げ基調を継続する必要がある」(12月8日のイ・サンヒョン副総裁補の発言)との姿勢を打ち出しています。 

 韓国は悪魔の二者択一を迫られてきました。

ドル不足に陥ってデフォルトするか、ウォン不足に陥ってデフォルトするか、の二択です。

とりあえずはドル不足を避けるという道を選びました。

しかし、そのためにウォン不足に陥っている。

  今後、高金利のために金融システムが動揺すれば、振り出しに戻ってドル不足に陥る可能性があります。

金融システムが動揺する――金融機関の経営がおかしくなれば、外国の金融機関もドルをさっさと引き上げるからです。

  2回の通貨危機も根には金融システムの動揺がありました。

1997年は起亜自動車など財閥の相次ぐ倒産、2008年は円キャリ―トレードの失敗によるノンバンクの破綻ラッシュです。

  金融不安が資本逃避を呼んだら元も子もありません。韓国は米国の動向をにらみながら、金融緩和のチャンスをうかがうでしょう。

運否天賦の韓国


――それまでに「金融システム不安」が現実化しないでしょうか。

 鈴置:韓銀は企業のCP(コマーシャル・ペーパー)の買い入れを増やすなど、積極的に資金を供給しています。

経営が悪化した金融機関に対する強制的な資本注入を可能にする法案も準備中です。

  対症療法ではありますが、できることは手を打って嵐が過ぎ去るのを待つ、ということでしょう。

韓国は運否天賦(うんぷてんぷ)の国なのです。

 鈴置高史(すずおき・たかぶみ) 韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95~96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『韓国民主政治の自壊』『米韓同盟消滅』(ともに新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。
2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。 デイリー新潮編集部

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