勝又壽良のワールドビュー
好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。
韓国、「大寒波」来年の輸出増加率、IMFはゼロ予測 今年の3%台後半から「激落」
2022年10月31日
- 韓国経済ニュース時評アジア経済ニュース時評
韓国経済は、輸出が屋台骨を支える構造である。その頼みの輸出は、来年は増加率ゼロという厳しい見方が出てきた。
IMF(国際通貨基金)アジア太平洋局長の予測である。中国経済の不振や半導体市況の急落などが、輸出に大きな影響を与えるものと見られる。
『東亜日報』(10月26日付)は、「IMFアジア太平洋局長『物価は今年がピーク』」と題する記事を掲載した。
来年度の韓国輸出の伸び率が0%まで下がるだろうという国際通貨基金(IMF)の予測が出た。
(1)「IMFのクリシュナ・クリシュナ・スリニバーサン・アジア太平洋局長は25日、韓国銀行で「グローバル経済と韓国」をテーマに記者懇談会を開き、「来年度の韓国輸出は低迷すると予想される」としたうえで、このように話した。
(1)「IMFのクリシュナ・クリシュナ・スリニバーサン・アジア太平洋局長は25日、韓国銀行で「グローバル経済と韓国」をテーマに記者懇談会を開き、「来年度の韓国輸出は低迷すると予想される」としたうえで、このように話した。
スリニバーサン氏は、今年は3%台後半の韓国の輸出成長率は、来年度は0%に迫るだろうと見込んだ」
韓国は、輸出が支える経済である。
輸出増加率ゼロ%は、輸出企業へ大きな打撃になる。
雇用悪化から、内需へ負の影響を与える。
半導体市況は、来年前半までの急落は不可避である。
この間にしっかりと在庫調整が進めば、後半から回復の芽も期待されるとしているが不確かである。
中国は、韓国の最大輸出先だ。
「共同富裕論」で競争よりも平等実現という理念を言い始めた。経済実態の悪化をカムフラージュしているに過ぎない。
(2)「スリニバーサン氏は、「韓国は、世界の実体経済や金融市場環境から大きな影響を受けてきた」とし、
「交易条件のショックや米国の通貨緊縮などが、(否定的な)影響を与えている」と理由を説明した。
その上で、IMFは来年度の韓国の経済成長率の予測値を2.0%で、従来よりも0.9%ポイント下方修正したと説明した。
IMFは、来年の韓国成長率を2.9%から2%へと3分の1も引下げた。
これは、未だ甘いと見るべきだ。
輸出ゼロ%では、設備投資も延期されるし賃上げも小幅になろう。高金利下であることもマイナスだ。
(3)「スリニバーサン氏はさらに、「前月比消費者物価の上昇率は下がる傾向が出てきており、物価は今年にピークに達し、徐々に2024年頃は目標水準に戻るだろう」とし、「成長への影響は避けられないが、緊縮を通じて必ずインフレに真っ向から対応することが重要だ」と呼びかけた。
スリニバーサン氏は、さらに「政府負債が国内総生産(GDP)の55%水準まで増えたと理解しているが、中期的に財政政策の基準を定め、信頼を守っていくことが重要だ」とも勧告した」
物価は、今年がピークとしている。来年以降に低下すれば、それに応じて、金利引き下げも可能になる。ただ、引下げるときは「小幅」が原則である。設備投資は、金利が底であることを確認して再開されるであろう。
いずれにしても、韓国経済が厳しい局面にあることは確かである。
韓国政府は、80分間の景気対策会議をTVで公開して、国民に理解を求めるという「広報」を始めている。
『東亜日報』(10月31日付)は、「尹大統領主宰の非常経済会議『危機克服』の信頼を提供できなかった80分」と題する記事を掲載した
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が昨日、龍山(ヨンサン)の大統領室の2階で主宰した第11回非常経済民生会議がテレビで生中継された。
これまでは大統領の冒頭発言が終われば非公開に転換されたが、今回は80分ほどの会議内容が丸ごと公開されたのだ。
グローバル経済危機の状況で、政府がどのような悩みを抱えており、経済に活力を吹き込むためにどのような対策を立てているのか、国民に率直に知らせようという趣旨だった。
(4)「今回の非常経済会議に注目が集まったのは、ただテレビでの生中継という形式のためだけではない。
経済の不確実性が日増しに大きくなる状況で、新政府がどのように危機を突破しようとしているのか、直接聞くことができる機会だった。
そのような点で、今回の生中継は初めての試みという点で多少意味があったかも知れないが、内容の面では少なからぬ残念さを残した。各省庁の政策を並べる水準に止まったためだ」
政府の非常経済会議が、テレビでの生中継されるほど緊迫感が迫っている証拠だ。
これは、「貴族労組」への過激な賃上げ闘争をけん制する意味もあろう。
貴族労組の高賃上げが、大企業の下請け単価の切下げとなって、中小企業経営を圧迫するからだ。
韓国の個人消費の対GDP比は、46%(2020年)と日本よりも10ポイント低いのが現実だ。
最近の韓国は、一部企業の賃金が日本を上回ったと自慢している。
それは一握りの企業だ。
何よりも、個人消費比率の低さがそれを証明している。