渋滞の中、対向車のドライバーを眺めている。
次々すれ違っていく、いろんな車、
すれ違っていく、いろんな人生。
笑っている人。
大きく口をあけて表情豊かに歌っている人。
何か心配事でもあるのか、しかめっ面で、煙草をくゆらす人。
対向車の中の人生はまるで無声映画のようで僕を夢にひたらせる。
歩道では折り重なって自転車が倒れている。
通行人はそれに目をくれることもなく足早に歩きすぎていく。
不思議なものです。
こんなに近くですれちがっているのに
すれちがう彼らの人生の「今」に、俺の存在はない。
ああ。
車の窓を開けたら外気と一緒になってクリスマスソングが流れ込んできた。


