稀勢の里が大関へ。場所の直前に師匠の元横綱隆の里の鳴戸親方が急死したのを乗り超えて、今場所は10勝でしたが、大関昇進が確実とのことです。
隆の里は私が最も好きな力士のひとりです。土俵の鬼初代若乃花の双子山親方に見出され、親方の郷里でもある青森から、もうひとり横綱になった2代若乃花になった少年と同じ夜行列車で上京。糖尿病を発症して出世は若乃花に遅れましたが、病気と闘いながら、ついに横綱に。常に正攻法で、遅咲きの横綱として、同時期に横綱になった千代の富士に当時唯一対抗できる力士でした。それも、いつも大横綱千代の富士を力で圧倒し、見事な、美しいとさえ言える勝ちっぷりでした。
横綱隆の里の全盛期は短く、勝てなくなってからもなかなか引退しなかったため、悪く言われた時期もありましたが、簡単に諦めるような人間なら、糖尿病になった時点で力士を諦めていたでしょう。私は、最後まで、自分が納得するまで、続けて欲しいと思っていました。
親方になっても、協会の幹部になるようなことはなく、そのかわりいい力士を何人も育てました。稀勢の里も、引退した隆乃若も、師匠ゆずりの正攻法、気持ちのいい相撲をとります。亡くなる直前弟子に暴力をふるったと問題になっていましたが、無理偏に拳骨と書いて兄弟子と読むという相撲の世界で、鳴戸親方は特別厳しかったでしょうが、鳴戸親方に限っては、それはすべて弟子のためであっただろうと思わせるような、生き様の親方でした。
稀勢の里も、師匠のような力士になって欲しいものです。