食の旅人

~ 食べることは生きること、生きることは旅すること、そうだ食べることは旅すること~
  野村洋文

生涯初めての経験

2019-01-05 07:00:05 | 日記

書こうか、書くまいか、逡巡しましたが、医療人の端くれとして、個人的現実が社会的現実に還元できると考え、書き込むことにしました。 元旦の昼、生涯初めて心肺蘇生をしました。 餅を喉につまらせ、瞳孔が開き、泡をふき、呼吸停止、脈もなくなった79歳の男性です。 父親です。 長期療養型の病院に入院中ですが、お正月ということで、一時帰宅の許可をもらい、昼食をとっていた矢先、一瞬の出来事でした。 摂食嚥下能力が低下しているにもかかわらず、認知症も相まって、食べ物をどんどん口に入れてしまうので、母親と常時、観察指示しておりましたが、目を離した一瞬の隙に、事は起こりました。  119番し、救急車が到着するまでの約10分ほど、人工呼吸と胸骨圧迫を、昔、マネキンで実習したことを思い出し、無我夢中でしました。 途中、お正月で帰省中のいとこ( 医師、歩いて5分ほど )に、駆け付けてもらい、自分が人工呼吸を、彼が胸骨圧迫を分担しました。 人間はこうやって死ぬんだな、と正直思いながらも、食塊を取り除き、自分の息を父の口腔内に吹き込み続けました。 奇跡は起こるもので、救助隊が駆け付けた時には、心電図の波形もきちんと出ており、息も吹き替えしました。 吸引機で気道に残存した食塊を出してもらい、酸素投与し、救急車で、病院に搬送されました。 一命はとりとめたものの、先生にCTを見せていただきましたが、肺に食塊が入っており、これから、誤嚥性肺炎をおこす可能性があるため、予断は許されない状態ではありまして、あとは、天のみぞ知る、です。  心肺蘇生、摂食嚥下、と教科書的に唱えてはおりましたが、今回、現実を目の前に落とされ、改めて、その重要性を強く認識いたしました。