細沼園のお茶飲み話

お茶の時間のひとときに、思いつくまま書きました。

少しだけ欠けた月 季節風  秋

2008-12-06 22:30:00 | 読書メモ さ行
少しだけ欠けた月 季節風  秋    著者 重松 清

《内容》
静かな、静かな、ひとりぼっちの月。
ぼくたちは明日から、もう家族じゃない。

澄んだ光に満ちた秋が、かけがえのない時間を連れてくる。
ものがたりの歳時記―――「秋」の巻、12編
            (紹介文より)


―――さすがに今日はこたえた。へこんだ。折れてしまった心の支えをつなぎ直す気力がなかなか湧いて来ない。そもそも、心のここを、こんなふうに支えていなければならないのかどうかさえ、わからなくなってしまった。


―――四十歳を過ぎて出くわしてしまった怖いものは、虫けらのように草むらに去ってはくれない。お化けのように夜が明ければ消えてくれるわけでもない。
(中略)
おとなになった僕は、もう怖さに負けて涙を流したりはしない。
ただ、途方に暮れているだけだ。


―――スタートラインが横一線ということだって、ほんとうはめったにないんだ、
(中略)でも、その代わりゴールだって同じじゃないから、一人ずつ違うんだから――それを信じているから、おあいこなんだよ、と笑ってうなずく。



実さえ花さえ  著者 朝井まかて

2008-12-06 00:41:00 | 読書メモ あ行



《内容》
命あるものはすべて、見さえ花さえ、その葉さえ、今生を限りと生きてこそ美しい。
江戸、向島で種苗屋を営む若夫婦、新次とおりんは、人の心を和ませる草木に丹精をこらす日々を送っている。二枚目だが色事が苦手な新次と、恋よりも稽古事に打ち込んで生きてきたおりんに、愛の試練が待ち受ける。
(紹介文より)



―――
   去状之事
一  我等勝手ニ付、
   此度離縁至候、然上者
   向後何方江縁付候共
   差構無之候、仍而如件

―――
「何を言ってる、色恋の仲なんかじゃねえんだ。どいつもこいつも、人の気持ちを勝手に決めつけやがって。いったい何をどうしたら、そんな風に何でも見えるようになる」
(中略)
「何でも見えたら苦労しやしないわ。新さんが何で私と一緒になったのか、それさえわからないんだもの。お袖さんの言う通りだわ。手習いを教えていた女なんて役立たずもいいとこよ」


男と女はいつの時代もむずかしいようで・・・