《内容》
益子徳一、七十二歳、独身。定年後の人生を慎ましく送る独居老人の生真面目で平凡な日常を、そっとすくい上げて、覗いてみると――。可笑しくて、温かくて、すこしだけ切ない「老人小説」。 (紹介文より)
―――勉強しない者は物知らずのまま育つことになる。 人生にゆとり、ではなく知能にゆとりができるだけだ。
―――自分に厳しくするのは難しいものだ。
―――生き物としてこれだけ草臥れてしまってから生き急いだって仕方ない。ここまできたらのんびり進みたいと思うし、実際に鈍鈍と生きているのだけれど、気がつくとあっという間に過ぎている。優雅のゆの字もない。ただ時が目まぐるしく過ぎていくだけである。