細沼園のお茶飲み話

お茶の時間のひとときに、思いつくまま書きました。

忍び外伝    乾緑郎

2011-08-18 23:47:35 | 読書メモ あ行

《内容》

伊賀の上忍・百地丹波によって一流の忍者に育てられた文吾は、何ゆえ忍びを目指すのか思い悩む。やがて北畠(織田)信雄率いる大軍が伊賀に迫る―。第2回朝日時代小説大賞受賞作。           (紹介文より)

―――生まれた時から、ずっと闇の中を彷徨い続けてきて、そのことに気づかず、今頃になってやっと、自分が今いる場所は闇の中ではないかと気づいた感覚だった

―――この世には、いくらでも理不尽なことが起こり得る。むしろ、事態が大きければ大きいほど、そうである場合が多い。


ビリジアン   柴崎友香

2011-08-18 22:46:30 | 読書メモ さ行

《内容》

黄色い日、白い日、赤い日―。映画、ロック、火花、そして街。10歳から19歳まで、誰かにいつか存在した、ある瞬間。第32回野間文芸新人賞受賞後初の小説作品。    (紹介文より)

 

―――あんたが努力しているかどうかわかるのは、あんただけやで

―――世のなかには、守らなあかん決まりがある。やりたいことがあるんやったら、筋通さな


いけちゃんとぼく  西原理恵子

2011-08-18 21:45:41 | 読書メモ さ行

《内容》

西原理恵子、はじめての絵本!ある日、ぼくはいけちゃんに出会った。いけちゃんはうれしいことがあると数がふえて、こまったことがあると小さくなってちぢまる。いつもぼくのことを見てくれてるし、ぼくが友達にいじめられて落ち込んでるとなぐさめてくれる。でも女の子となかよく遊んでるとまっかになって怒り出す。そんないけちゃんのことがぼくは大好きで――。不思議な生き物・いけちゃんと少年の心の交流。   (紹介文より)

―――

いけちゃんは

ずっとまえから

そばにいる

いけちゃんは

なんとなくそばにいる

              


見えない鎖   鏑木連

2011-08-18 20:44:24 | 読書メモ か行

《内容》

失踪した母、殺害された父。そこから悲しみの連鎖は始まった。私は“幸せ”ですか?人間の“業”とは、そして幸福とは。乱歩賞作家が問いかける、予測不能の人間ミステリー。    (紹介文より)

 

―――実際目の前に相手がいなくても心が感じる。その心に身体が反応してる。これぞ命の不思議や。こんなけったいなことが、この地球には当たり前のように起こってる。誰かが誰かのことを思うだけで、温かくなるなんて素敵なことはないよ。この素敵の連続が生きるということなんやから、すごいと思わな嘘や

―――言葉は、ときとして残酷です。人の命だって奪いかねない。  (中略)   しかし、人を救うのもまた言葉かもしれません。

―――目に見える正義と悪だけでは割り切れないものがたくさんありました。刑事としての限界を見たんです。つまり法律に接触することだけが悪ではないということです。


葦舟、飛んだ   津島佑子

2011-08-18 17:43:33 | 読書メモ た行

《内容》

夏のある日。道子がスズメバチに刺されて亡くなった。その死をきっかけに、幼なじみの雪彦、達夫、笑子、昭子、理恵は、約五十年ぶりにつき合いを再開する。ともに小学校時代の謎を探ろうと、「報告ごっこ」をするうちに、戦争時代の暗い影が浮かび上がる。あの優しかったヒロシくんはどこから来てどこに行ってしまったのか。道子がその存在を秘密にしていたロシア人、サーシャ氏の正体は?大連、シベリア、ニューヨーク。物語は国境を越え、時を越え、人類の闇に放たれる。そして最後に見えるものは…。     (紹介文より)

 

―――極限状態の人間には、今この瞬間しか存在しなくなり、したがって、記憶という能力も消え失せる、と以前、政治犯としてシベリアに流刑になった人が書いた文章を読んだことがあります。飢えで死にそうになると、すべての感覚、自尊心とか敵意すらも、目の前の食べ物に吸い込まれてしまうと。

―――そっと、なんの痕跡も残さず、できれば一筋の風になって、この路地を通り過ぎたい、そんな気持ちに誘われる。

―――「悲惨」とは、外側から見れば、醜いものです。そして醜いものを、人間は本能的におそれます。大連の子どもたちも、公園で、学校で、広場で、難民を見かけるたび、そのおそれに包まれていました。

―――犬だって、人間だって同じ。死とは、二度とその眼を開くことがないということ。耳の先まで冷たくなること。命があるときには知らなかった絶対的な静けさにつつまれること。

―――矛盾きわまる罪深いこの世界に生まれることができなかったにしても、いつかきっと、より良きべつの世界に生まれ、その世界の美しさ。かぐわしさを心ゆくまで楽しんでくださいますよう。   そして苦に充ちたこの闇の世をお忘れくださいますように。


空也上人がいた   山田太一

2011-08-18 15:59:35 | 読書メモ や・ら・わ行

《内容》

ヘルパーと老人とケアマネと、介護の現場で風変わりな恋がはじまる。ぬぐいきれない痛みを抱える人々と一緒に歩く空也上人とは?都会の隅で起きた、重くて爽やかな出来事。     (紹介文より)

 

―――誰もが持ってる生きてるかなしさ、死んじまうことの平等さ、そういうことを分かってる人って感じたんだなあ。正面向いた仏像じゃなくて、一緒に歩いてくれてる人っていう思いが湧いたんだ。こういう人がいると助かるなあというくらいのことだ。

―――私と歩いていることなど知らん顔で、でも一緒に歩いてくれているのだった


まほろ駅前多田便利軒   三浦しおん

2011-08-18 01:56:40 | 読書メモ ま行

《内容》

まほろ市は東京のはずれに位置する都南西部最大の町。駅前で便利屋を営む多田啓介のもとに高校時代の同級生・行天春彦がころがりこんだ。ペットあずかりに塾の送迎、納屋の整理etc.―ありふれた依頼のはずがこのコンビにかかると何故かきな臭い状況に。多田・行天の魅力全開の第135回直木賞受賞作。     (紹介文より)

 

―――だれかに必要とされるってことは、だれかの希望になるってことだ

―――だれかに助けを求めることができたら、と思ったことがあったからだ。近しいひとじゃなく、気軽に相談したり頼んだりできる遠い存在のほうが、救いになることもあるのかもしれないと

―――だが口を開いても、なにも言葉は出なかった。それは鳴き声すら持たぬ岩のように冷えて、心のなかにあるばかりだった。

―――知ろうとせず、求めようとせず、だれともまじわらぬことを安寧と見間違えたまま、臆病に息をするだけの日々を送るところだった。