以下は劇場作品『宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』の感想文です。
目下、兵頭新児のブログはニコニコチャンネルのブロマガ、「兵頭新児の女災対策的随想」を中心に展開しているのですが、今回、「女災」には何ら関係ないグチが描き並べられています。『まど☆マギ』も、かつての『SH大戦』、『スーパー戦隊199ヒーロー大決戦』も、一応は自説にちょっとでも絡めようとしていましたが、今回はほぼゼロです。
よって、ニコブロではなくこちらにのみうpすることにしました。こういう二軍っぽい扱いをするのもどうかと思うのですが、あんまり大々的に発表するのもどうかと思いまして。
さて、上に「愚痴」と書いた通り、評価は非常にネガティブです。
また、平気でネタバレしまくりますので、どうかその辺をお含み置きの上で、ご覧になってください。
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ひと言で言えば、お粗末な、凡庸な、薄っぺらな、若者三人の三角関係を描く三文芝居に宇宙刑事を無理やり絡ませた話、という感じでしょうか。
お話は火星探査の途中の事故で行方不明になった主人公・撃が恋人であるヒロインがピンチの時、ギャバンとなって帰ってくるところから始まります。
この時、「もしや撃?」と考えるヒロインの前から、ギャバンは逃げるように姿を消します。なるほど、恋人には正体を隠しているのか……と思いきや、次のシーンでは普通に再会し、普通に名乗りを上げます。何だったのでしょう。
また、銀河連邦警察でコム長官に報告するシーンでは二代目シャリバン、シャイダーが失敗した撃に対してにバカにしたような態度を取ります。おいおい、勘弁してくれよ、ライダーバトルに引き続いて宇宙刑事バトルか?
――と思ったが、そんなことはなかったぜ。このふたりは以降のドラマには、一切かかわってくることはありません。
さて、二度目の変身。一度目の変身では一応善戦していたギャバンだが、二度目はラスボス怪人が相手だったという事情があるにせよ、敵が現れた瞬間、生身でバトルすることなく、飛びかかっていっていきなり変身。しかし相手には一撃もくれてやること適わず、惨めに変身を解除され、敗退。そこへジープが現れ初代ギャバン・一条寺烈が助けに入ります。が、盛り上がるべきシーンなのに、演出的にはケレン味ゼロ。また、最初のバトルでも初代ギャバンの加勢が入ったという演出があるのですが、曖昧でどうにも要領を得ないシーンとなっていました。
烈はふがいない撃をしごくためにどつきまくります。やめたげてよお。ここまで弱い主役ヒーローにギャバンを名乗らせる意味は果たしてあったのか。コム長官が「ギャバンの名を汚すな」と心配するのもムリはありません。
魔空空間に取り込まれる烈、撃。この魔空空間のシーンは大変によかったです。演出、両者のアクション共に見応え充分でした。できれば「幻? 影? 魔空都市」みたいに全編をこれで突っ走っていってくれていたら……。
とは言え、ラストバトルに期待が高まってきます。
そもそもテレビシリーズ『ギャバン』において、魔空空間というのは変身前の烈を幻惑させる、新宿の町や時代劇のセットなどをカット割りで次々にワープさせていくという演出で表現されるもの(今回の映画で十二分に表現されていたのも、まさにこれ)と、変身後のギャバンがモンスターと戦う時の、採石場やセット、マットアートで表現されるものと、二種ありました。後者が(当時のことですから、さすがにショボかったものを)現代の技術、映画の予算でどう表現されるか楽しみにしていたのですが、そんなことはなかったぜ。
ラストバトル。
烈と撃は敵の怪人一体の前でゆっくり蒸着ポーズを取り、変身し、ふたりがかりで殴りかかります。
そもそもが宇宙刑事の変身は「大勢の戦闘員相手の大乱戦」→「光球化」→「高見まで飛翔し、名乗り」→「ナレーションによる変身解説、再現」という流れこそが醍醐味だったのですが、そこの再現をご丁寧にカットしているのです。考えると『ヒカルオン』もここだけ外していた気がします(何故だ?)。
一方、シャリバン、シャイダーも味方のピンチを救うために何の伏線もなく出現。洞窟みたいなところに人間体ですっと現れ、ふたりでゆっくり変身ポーズを取り、洞窟からは一歩も出ることなく幹部怪人をやっつけて終わり。これなら『レッツゴーライダーキック』のキカイダーたちの方がよっぽどマシでしたわ。
一方、ギャバンも最後まで魔空空間に突入することなく、敵怪人を倒して終わり。
ストーリー的には最後の最後まで上の三人の話。
一応、敵はマクーの残党と語られ、マクーの再興を目論んでいたらしいのだが(女怪人が魔女キバ一族の末裔らしいが、魔女キバ一族って……)、スケール感はゼロ。
要は三角関係のひとりが闇落ちしてマクーの幹部となるが、ギャバンに倒され、死の間際に唐突に良心を取り戻す、という大変感動的なお話です。何の意味もなく改心して死んでいく辺り、「まあ、段取りとしてそうでしょうなあ」と思うばかりで、腹立ちすら感じることができなかったということが、映画のクオリティを象徴していたように思います。
普通、こういう時には(最終的には三角関係に話が集約されるにせよ)マクーが再始動して『シャイダー』一話のフーマのように全銀河に侵攻して……とかそういうのを期待するものです。そうした作品世界の広がりがあれば、唐突に出て来た主役三人組も、「あの宇宙刑事の守った宇宙で平和に暮らしていた若者」として、血を通った存在として描くことができるはずです。脚本家さんはイベントか何かで「三角関係のプロットを最初から提示されていた」と語ったそうですが、「三角関係だから」ダメだったのではなく、話が最初から最後まで「三角関係に閉じていたから」ダメだったのです。この辺、どうにでもできたはずです。
『宇宙刑事』は軽薄短小の80年代に、周囲に嘲笑われつつも「熱血」「正義」を描いていたドラマだったのですが、どうやらここへ来て、「セカイ系」へと、ようやっと世間のトレンド()に追いつくことができたようです。
後、一般的に知名度のあるらしいタレントが冒頭でキモ男を演じてたが、あれ何だったんだろう? 意味ねーし。
役者さんに関して言えば、撃の人、ヘンにイケメンの必要もないけど、二枚目とは言い難いし、大葉健二さんのような魅力があるでもないし、何より声がダメでした。変身もので決め技とかのかけ声がダメなやつは致命的です。
それはシャリバンも同様。こっちはちょっと渡さんを思わせなくもない二枚目だったんですけどねー。
つまり抑えるべきツボを全て外し、でき上がったのが今回の映画と言えましょう。
まさに、トンカツの入っていないトンカツ弁当。
当たり前だけど、スーツの造形とかは文句のつけようがないものでした。
新ギャバンもヘンにデザインを変えず、マイナーチェンジに留めておいたのは正解だったと思います。ただ、胸の電飾部分はもっとビカビカ光らせるべきだったと思うけど。
が、その新ギャバンと旧ギャバンがふたりで立ち回りするのはやっぱり「う~ん」と思っちゃいました。逆にスーツをデザインは全くいっしょだけど、金にしてしまうとか。今の技術ならカッコいい金のスーツも可能でしょうし。そもそもギャバンは本名なわけで、それを襲名するのは二代目麻宮サキくらいヘン。
或いは、上とは全く違った意見になりますが、やはり『宇宙刑事 The MOVIE』にして、撃はあくまで全く今までと違った新刑事にすべきだったんではないでしょうか。当時から「黒い宇宙刑事」「グリーンの宇宙刑事」などを見るのはファンの夢だったんですから。