天愛元年

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新元号『天愛』元年にスタート

bend

2020-06-26 16:31:32 | 日記

 ようやく『赤毛のアン』を読み終えた。難しい単語や構文がいっぱい出てきて、松本侑子訳がなければ大半分からなかったけれど、先にNHKのDVDを見たイメージも手伝って、何とか大体の筋が理解できた。終盤になると、最後が気になって結末が見たくなるけれど、ダウンロード本を下手に繰っていくと、元に戻すのに往生するので、松本訳本を覗くと、最後の行は;
 「『神は天に在り、この世はすべてよし』」アンはそっとつぶやいた。
---とあって、原文ではどう書かれているのか楽しみにしていた。「神」と「天」と「この世」をどう使い分けて表現してよいのか、皆目見当がつかず、英作文を試す気にもなれなかった。アマゾンから無料でダウンロードした『 The Anne of Green Gables Stories 』では;
"God's in his heaven, all's right with the world," whispered Anne softly.
    THE END
---と訳通り、あっさり締めくくられていた。日本語ではなかなか心強い言葉なので、最初は常に愛誦しようかとも考えていた。しかし原文は、天にまします我らが神みたいに人間界と行き来する気さくな感じでなく、神が自分の所有する天の奥の院に鎮座されているニュアンスなので、すとんと入ってこず、敬遠することにした。やはり、博打に勝てますようにとか、ええ女に巡り合えますようにとか、その時々の八百万の神に願を立てる方が気が楽である。
 ストーリーの方は、最終38章の裁きに感銘した。前章でアンを一番可愛がってくれた養父マシューと死別し、一大転機を迎えた。最後の章では、視力も失いかけて弱気になった養母マリラが永住のグリーン・ゲイブルズの我が家を手放し、昔からの女友達の家にでも間借りして余生を過ごそうとするのをアンは押し止め、奨学金をもらって大学に進学できる資格を放棄して、地元で教員をしてマリラをサポートする道を選んだ。そして、いろいろ悶着があってぎすぎすすることの多かった男子級友のギルバート・ブライスと氷解して親友となり、ロマンスの芽も育まれる。そこのシーンはこの本に珍しく挿絵が出てくる。見れば、赤毛やそばかすを気にする少女アンでなく、すらりと長いドレスをまとった16歳と5カ月のうら若き乙女に成長していた。並んで立つギルバートもびしりとスーツを着こなした青年である。恋愛が作者は得意でないのか、続編でも紆余曲折ばかりで「君の名は」状態になるけれど、とにかく波瀾含みながら希望に満ちた章として、完結後にも読者に期待を持たせてる。根強い人種差別に立ち向かう Black Lives Matter どころか、黒人の公民権運動も生まれず、女性参政権など影も形もなかった世紀に、孤児の少女が偏見、差別をものともせず、ひたむきに学び、がむしゃらに未来を切り開いていこうとする姿を描いたこの作品は、自由・平等・民主主義が表向き進んだとされる現代でも、角を矯めてはいけない勇気を与えてくれる。

  "I'm just as ambitious as ever. Only, I've changed the object of my ambitions. I'm going to be a good teacher - and I'm going to save your eyesight. Besides, I mean to study at home here and take a little college course all by myself. Oh, I've dozens of plans, Marilla. I've been thinking them out for a week. I shall give life here my best, and I believe it will give its best to me in return. When I left Queen's my future seemed to stretch out before me like a straight road. I thought I could see along it for many a milestone. Now there is a bend in it. I don't know what lies around the bend, but I'm going to believe that the best does. It has a fascination of its own, that bend, Marilla. I wonder how the road beyond it goes - what there is of green glory and soft, checkered light and shadows - what new landscapes - what new beauties - what curves and hills and valleys further on."

---松本侑子訳によると;
 「今だって将来の夢はあるわ。ただ、その目標が変わったのよ。いい教師になること、そしてマリラの目を大切にすることよ。それに家で勉強しながら、大学のコースを独学で勉強すること。ああ、私には、やりたい計画が山ほどあるの。マリラ、この一週間というもの、ずっと考えていたのよ。私はここで生きることに最善を尽くすわ。そうすれば、いつかきっと、最大の収穫が自分に返ってくると思うの。クィーン学院を出た時は、私の未来は、まっずぐな一本道のように目の前にのびていたの。人生の節目節目となるような出来事も、道に沿って一里塚のように見わたせたわ。でも、今、その道は、曲がり角に来たのよ。曲がった向こうに、何があるか分からないけど、きっとすばらしい世界があるって信じているわ。それにマリラ、曲がり角というのも、心が惹かれるわ。曲がった先に、道はどう続いていくのかしらって思うもの。緑に輝くきれいな森をぬけて、柔らかな木漏れ日がちらちらしているかもしれない。初めて見る新しい風景が広がっているかもしれない、見たこともないような美しいものに出逢うかもしれない、そして道は曲がりながらどこまでも続き、丘や谷が続いているかもしれない」

---ダウンロード本は ~THE END~ の後も、『 Anne of Avonlea 』 Chapter 1. An Irate Neighbor と続いていく。曲がり角の先に、もっと面白い展開が待ち受けているかもしれない。しかし、英語勉強のやり直しのため読み始めたので、万一打ち上げないにしても、先に進むよりも1頁目からに戻る可能性が強いような気がする。

曲がり角
道をつけずば
破れなむ
川の流れも
アンの行く手も