亡父が神棚と仏前を拝むとき、家内安全、父母の極楽往生のほかに、流行り病いに罹りませんように、と唱えていたのを脇で聞いていて、風邪がそんなに怖いのかなあと、真意を捉えかねていた。いま、新型コロナ蔓延を前にして、やっと了解できた。1世紀前かそれ以前にも、強烈な感染症が広がり、親族か知人かに悲劇が襲った生々しい記憶があったのだろう。中国戦線でヘルメットを射抜かれ、自分の頭の中に銃弾の破片を終生抱えていたのに、それを差し置いて流行病の制伏を祈る程の脅威が。今になってやっと、誰にも一生無事なんてことはなく、命をさらす試練が一再ならず無くして生涯を終えられるはずはないと思い知らされた。
一方で、世の中の進歩は凄い。志村けんさんが亡くなり、仕事に手一杯で熱心に見れなかったその名人芸を振り返ってみたいと思うと、Amazonプライムビデオで『8時だよ全員集合!』全編が一挙無料公開になっていた。第1作は1972年まで遡り、いしだあゆみや安倍律子ら懐かしい顔触れが揃っていた。ただ、この時は荒井注がドリフターズのメンバーに居り、志村はまだ登場していなかった。その直前にダウンタウンの番組で志村けん特集をやっていたのをビデオで見て、故いかりや長介のギャラの配分が不当だったと志村けんが文句を言っていて、長さんのリーダーぶりを見ると、面白かった。そういえば追悼の『志村どうぶつ園』も観たから、昨日は1日中、志村けんちゃんデーだった。
選手本人にとっては、江戸時代の武士がちょんまげを切られた時のように動転しただろうけれど、新型コロナウイルスを警戒する日々にとっては、延期後の東京五輪には気が抜けた。
試合はスタートから段々積み上がっていく緊迫の過程が面白い。野球でも、途中雨が降り始めると、5回まで持つか心配し、短期決戦の用兵に切り替え、スリルが高まる。しかし、雨が激しくなり、5回まで持たないと、翌日に続きからでなく、あっさりノーゲームになる。
長編映画『風と共に去りぬ』でも、後編は明日のお楽しみではなく、20分ほどの休憩を措いて続きを上映してくれた。それを1年も間があって、選手は元のままというのは無理がある。
酷なようであっても、選手選考はご破算で願いまして、一からやり直した方がスポーツ観戦妙味があるのではないか。巷では、時計の針を組み直して、新たなカウントダウンが始まっている。
湿気た居酒屋のように、先客の飲み残したビールを、へーい生一丁と注ぎ直していては、泡の立ちが良くない。前の客のタオルを使わせるような風俗嬢なんか、めったに居ない。すっきり気持ち良くしたいものである。
こつこつと
鍛へ上げ来し
腕前を
世にひろめ得ず
時に合はずて
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