美しい飛行機を作りたいという夢を追い求めた青年が、やがて名機と呼ばれる戦闘機の製作に成功するまでを縦糸に、菜穂子という女性との愛の世界が横糸として描かれている。
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戦前の日本の、山や川や野が、限りなく美しい。
時に、大空から俯瞰したように描かれる日本の山野が、アニメというよりもまるで絵画のようで、映像の美しさにおいて、宮崎作品の中でも、一番ではないかと思う。
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子供向けの作品ではないから、はらはらどきどきのアクションも、スリルとサスペンスも、どんでん返しも、謎解きも、ない。
淡々と、静かに、話は進み、静かに終わる。
それは、堀辰雄の 「美しい村」 と 「風たちぬ」 の2編を読み終えたときの感動と同質のものである。
限りなく美しく、ロマンチックで、透明感があり、はかない。 はかないがゆえに、つよい。
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空気の澄んだ高原の、青空と、白い雲と、パラソルと、カンバスと、パレットと、絵筆と、そして、絵筆を取る帽子の娘。
風が吹き、パラソルが舞い上がり、下の野の道を歩いていた青年が、飛んできたパラソルを押さえる。
この二人の出会い(再会)の場面が、この作品のひとつのヤマ。 ただひたすら物語めいて、明るく、美しい。
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娘は、結核を病んでいた。
青年は結婚を望み、娘はあえてこの申し出を受ける。
‥‥風立ちぬ、いざ生きめやも‥‥。
二郎の会社の上司夫妻が執り行った二人のためのささやかな結婚式。 菜穂子の花嫁姿は、本当に綺麗だったなあ。
病床に伏したままの、ひと時の楽しい結婚生活を過ごし、やがて菜穂子は、自らの体が病み衰える前にと、独りサナトリウムへ去って行く。
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やがて、零戦の開発に成功し、零戦が無数に大空を飛ぶ姿が描かれるが、‥‥「一機も帰って来なかった‥」という、二郎のつぶやきで、映画は終わる。
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成功の喜びは一瞬で、報われるところは少なく、全てを巻き込んで、時は、流れていってしまう。
それでも、人は生きている以上、生きていかなければいけない。
‥‥ 風立ちぬ。いざ生きめやも。
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