イーロン・マスクが仕掛ける「人間の脳とコンピューターの接続」
FRIDAYデジタル より 210516
(実験体となった9歳の雄猿・ペイジャー。コントローラーを使いゲームをした際の電気信号を測定。その後、コントローラーを外し、マイクロチップを起動させると、思考だけでゲームをするようになる(『Neuralink』公式YouTubeより))
⚫︎「人間は身体を捨て、仮想現実に移住することになる」
’16年、『テスラ』CEOのイーロン・マスク氏(49)は先端技術のイベントでそう予言した。そんなSFの世界が今、現実になりつつある。
4月8日、マスク氏がオーナーを務める『Neuralink』社が、ある実験動画を公開した。猿が卓球のようなゲームをしている。だが、よく見ると、コントローラーを使っていない。なんと猿は「念じる」だけでゲームをプレイしているのだ。最先端技術に詳しいジャーナリスト・前田亮一氏が解説する。
「これはマスク氏が完成を目指す人間の脳とコンピューターを接続する技術『ニューラリンク』の実験です。この猿の頭には超極細の電極とマイクロチップが埋め込まれています。それが脳の電気信号を受信し、外部のパソコンに送信することで、画面上に指示を送っています。つまり、実験では思考を読み取るだけでコンピューターを動かせることがわかったのです」
マスク氏の次なる狙いは「人間での応用」だ。実用化されれば、身体に障害を持つ人たちが脳の電気信号だけで義手や義足を動かすことができるようになる。だが、それは”表向き”の発表。「本当の目的」は別にあるという。
「マスク氏はAIに対抗するために『脳の機能を拡張しよう』と考え、脳とコンピューターを合体させることを目指しています。マスク氏には恐れていることがある。それは2045年に到来すると予測されていたAIが人間の知能を追い越す現象『シンギュラリティ』が2029年に早まったとされたことです。
『ニューラリンク』は技術的にはすでに完成しており、’21年中に人間での臨床実験が開始される予定です。個人の意識や知識をパソコン上にアップロードし、仮想現実で脳だけを永遠に生き長らえさせることも可能になります。例えるなら、映画『マトリックス』やアニメ『攻殻機動隊』の世界です。理論上の話ではありません。猿にできることが人間にできないはずがありませんからね」(前田氏)
買い物、電話、クルマの運転などが脳内で「念じる」だけで完結する。人間とコンピューターが融合する日は近い――。
’20年3月、マスク氏は仮想通貨のイベントに出席し、『ニューラリンク』の実現を示唆した
『FRIDAY』2021年5月7・14日号より