近鉄が7月3日ダイヤ変更で前例なき減便 終電繰り上げや普通列車半減の区間も
World Transit Maps より 210515
近畿日本鉄道が2021年7月3日(土)に全線で実施するダイヤ変更では、一般列車・特急列車とも大幅に減便が行われます。
⚫︎深夜の減便と終電繰り上げ
近鉄によると、新型コロナウイルス感染症の影響により、特に夜間時間帯の利用減少が顕著となっているようです。主要4駅(大阪難波駅・大阪上本町駅・大阪阿部野橋駅・京都駅)の22時以降の乗降者数を見ると、2021年4月度は平日で前々年比37%、土休日で前々年比33%と、約6〜7割減少しているとのことです。これを受けて、主要路線では深夜時間帯の運転本数、運転区間などが見直されます。
奈良線を例に取ると、平日ダイヤでは、大阪難波駅発22時台の区間準急1本が運転取り止めとなるほか、23時台の急行1本が準急に変更となります。また、土休日ダイヤでは、大阪難波駅発22時台の急行1本が削減されるほか、23時台の快速急行1本および急行1本が準急2本に変更となります。
そのほか、大阪線、京都線、南大阪線、名古屋線においても、それぞれ大阪上本町駅、京都駅、大阪阿部野橋駅、近鉄名古屋駅を基準に22時発以降の列車の削減、種別変更などが行われます(詳細は下表を参照)。
また、一部の路線では平日・土休日ダイヤとも、終電時刻の繰り上げが行われます(時刻表は下表を参照)。
大阪線では、大阪上本町駅発・高安駅行の最終列車が0:08発となり、20分繰り上げられます。また、大阪上本町駅23:58発の河内国分駅行が23:54発の高安駅行に変更となります。これに伴い、恩智駅〜河内国分駅間の各駅への終電は23:50発の区間準急・五位堂駅行となり、8分の繰り上げになります。
京都線では、京都駅発・新田辺駅行の現行の最終列車である0:16発が運転取り止めとなることに伴い、終電時刻は0:00発となり、16分繰り上げられます。南大阪線では、大阪阿部野橋駅0:12発、0:27発の2本の河内天美駅行列車が運転取り止めとなるため、河内天美駅までの最終列車は0:02発の古市駅行となり、25分の繰り上げとなります。そのほか、長野線、道明寺線、山田線、鳥羽線、志摩線など各線においても終電時刻の見直しが実施されます。
【時刻表で解説】近鉄 2021年7月3日(土)ダイヤ変更 深夜時間帯の見直しと終電繰り上げ
4月29日(木・祝)以降、緊急事態宣言に伴い4路線で終電時刻が繰り上げられています。それとは内容が異なるものの、利用状況の変化を受け、従来よりも早めの帰宅が必要なダイヤへと切り替えられます。近鉄は、終電繰り上げにより鉄道施設の保守などのための夜間工事の時間が延長できるので、一層安全で安定した輸送サービスを提供できるとし、利用者の理解を求めています。
⚫︎普通列車が1時間に1本となる区間も
7月3日(土)ダイヤ変更では、各路線とも郊外区間を中心に、普通列車の運転本数が見直されます(詳細は下表を参照)。
大阪線では、名張駅〜伊勢中川駅間を区間運転する普通列車のうち、昼間時間帯の毎時1本が運転取り止めとなります。これに伴い、昼間に「青山峠越え」する一般列車は大阪上本町駅〜伊勢方面の急行列車のみとなり、利用駅によっては1時間あたりの本数が現行ダイヤの2本からダイヤ変更後は1本へと減少します。
橿原線では、昼間〜夜間時間帯に大和西大寺駅〜天理駅間を直通運転する普通列車について、一部列車を除き天理線内の折り返し運転に変更されます。このため、大和西大寺駅〜平端駅間で普通列車の本数が少なくなります。また、田原本線では、毎時2本の運転となる時間帯がおおむね昼間の全時間帯に拡大します。
名古屋線では、昼間時間帯に近鉄四日市駅〜津新町駅間を運転する普通列車毎時1本について、運転区間が近鉄四日市駅〜塩浜駅間に縮小されます。志摩線では、鳥羽駅〜賢島駅間で昼間時間帯における普通列車の運転本数が毎時2本から1本へと半減します。
南大阪線では、古市駅〜橿原神宮前駅間運転の昼間時間帯の普通列車が毎時2本削減されます。あわせて、昼間の急行列車が区間急行に種別変更され、尺土駅〜橿原神宮前期間の各駅に停車することにより、運転本数の減少をカバーします。また、御所線では昼間時間帯の普通列車が毎時4本から2本へと見直されます。
【図表で解説】近鉄 2021年7月3日(土)ダイヤ変更 昼間時間帯の見直し
近鉄は関西・中京エリアにまたがる2府5県に501kmの路線網を有し、JR以外の鉄道事業者では最長の座を誇ります。
第3セクター化された区間を除く現存の路線では、どんな閑散区間においても一般列車が1時間あたり2本以上確保されるダイヤが長年組まれており、これを守ることは近鉄のダイヤ作成上の鉄則であったと思われます。
今回のダイヤ変更においてはこの法則が破られ、停車する列車が1時間間隔となる区間が発生します。コロナ禍が引き金となっていることは間違いないですが、今回のダイヤ変更は、近鉄ダイヤの変遷を見ていく上での大きな転換点となります。
⚫︎近鉄特急にもリストラの波
7月3日(土)のダイヤ変更により、各線において利用の少ない特急列車が運転取り止めとなるほか、始発・終着駅の変更が行われます。
特急列車全体の本数は、平日ダイヤが現行の430本から変更後は404本となり26本の削減、土休日では448本が418本へと30本の削減となります。
また、現行ダイヤで一部の列車が「需要に応じて運転する特急」となっています(平日13本、土休日2本)が、この設定を大幅に拡大します(平日38本、土休日31本)。
これらの列車の運転日は、運転計画が決まり次第、その都度告知されます。昨今のコロナ禍において、緊急事態宣言の発令などに合わせて運転本数の変更が随時実施されていますが、このような不安定な情勢にも波動的に対応できるようになります。
そのほか、土休日ダイヤでは、大阪上本町駅9:50発の宇治山田駅行特急が、大阪難波駅9:45発の鳥羽駅行特急に置き換えられ、従来の停車駅である布施駅・名張駅・榊原温泉口駅・伊勢中川駅・松阪駅は通過となります。また、平日ダイヤで大阪阿部野橋駅〜吉野駅間運転の4本(大阪阿部野橋駅10:10・14:10発、吉野駅12:34・16:04発)については、水曜日が運休日となります(運転日は「青の交響曲」で運転)。
近鉄特急は一般列車と同様、高密度にパターン化された運転ダイヤによるネットワークが強みとなっています。しかしながら、今回のダイヤ変更によりほぼ全区間において減便が敢行されます。
詳細な時刻表はまだ発表になっていませんが、「待たずに乗れる」「乗り継いで行ける」といった従来の利便性がどの程度まで維持されているか、気になるところです。