要旨
本発表では日本の歌謡曲で使われている拍の数と音譜の数、休符によって区切ったメロディの数、語と文節の数などを調べた。1970年代~2000年代の曲を5曲ずつ無作為に選び、調査結果を比較してみた。先行研究の結果では、昔の曲は一曲の中に含まれる拍の数が音譜の数を下回っており、最近の曲では逆に、拍の数が音譜の数を上回っていた。つまり最近の曲では一曲の中に言葉を若干無理に多く詰め込んでいるということになるのだ。このために最近の曲は歌詞が聞き取りにくいという結論に至っていた。しかし今回の結果では昔の曲も最近の曲も、拍の数が音譜の数を上回っていた。ではなぜ最近の曲は歌詞が聞き取りにくいのか。そこにはアクセントの問題や、休符の少なさが関係していると考えられる。今回の調査では、最近の曲はアクセントが日常で使われる場合と違う部分に置かれていたり、休符が異常に少なく早口で歌われている傾向があることがわかった。これも歌詞が聞き取りにくくなっている要因であると言える。
質疑応答では外来語との関係、テンポの速さの関係、休符だけでなくもっと細かい音の切れ目と意味の切れ目を探す必要性などが指摘された。