今年、妻の実家に帰省した際に「魔法」の存在を知った。
酔った義父が口を滑らせたのである。
ウチは代々魔法を継いできた家系なのだと。
後を継ぐ男子が産まれなかったからここで途絶えるのだと。
即座に義母に遮られ、酔っぱらいの戯言ですよと否定された。
あの表情と口調は、戯言を諌めるだけとは思えないものだった。
魔法。
それは例えば――人を蘇らせることもできるのだろうか。
すぐに連想したのはそれだった。
妻の額には、大きな傷痕がある。
普段は前髪に隠れて見えないし、本人も見せたがらない。
何でも子供の頃に交通事故にあったのだという。
私も、まあそんなこともあるだろうと特に気にしたことはなかった。
しかし。
あれがもし、致命傷であったとしたら。
そして魔法によって蘇生されたのだとしたら。
私はあれからずっと考えている。
妻は、今日も笑って仕事帰りの私を迎えてくれる。
その笑顔も、一度死に、蘇った怪物のそれではないだろうか。
そう、蘇った死者など怪物以外の何物でもない。
幽霊、ゾンビ、ゴースト・・・お化け。
私達と同じ人間だとは到底言えない。
たとえ、妻が――
魔法自体も、自分が蘇った死者なのだということも――
何も知らないのだとしても。
私は、妻を、同じ人間だとは、到底思えない。
「なあお前、その傷痕は実は致命傷だったんじゃないか」
怪物かも知れない妻に、私はその疑問を言い出せずにいる。
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