暗い昏い夜の中。
少女は、眠る。
淡く光る幻想的なベールに包まれて。
華奢な少女は、穏やかに眠る。
ここは城。
彼女の、彼女だけの城。
とは言っても、少女らしい装飾や調度品などはなく。
無機質に事務的に、半球状に抉れた地面の中心地――。
そこに慎ましやかなベッドが横たわるだけ。
実に簡素な、だけど隔絶的で排他的な城だ。
そんな彼女の世界に、異物がひとつ紛れ込む。
中肉中背、白衣に身を包んだ壮年の男。
少女の無垢な世界を穢す、不純な男。
男は、この城の主である少女に近寄り、そっと微笑む。
「永い道程だった」
過去を振り返り、噛み締めるように、男は呟いた。
「千年にもわたる蓄積を経て、ここに今、私の手で――」
右手を少女にかざす。
途端、右手が白く輝く――否、それは白い手袋だった。
ゆっくりと、少女を包む乳白色のベールに触れる。
パチッ、と小さな破裂音が響いた。
それは、忍び寄る男の手を拒む、彼女の結界。
しかし白い手袋はそれを悠々と突破した。
突破するための手袋だった。
男はその成果に満足する。
そして、ついに右手が、少女の頬に触れた。
「さあ、目を覚ませ」
男が囁く。
その声に反応するように、少女は深い眠りから覚める。
緩々と、薄く、その目を開く。
「おはよう――千年の眠り姫」
少女は、眠る。
淡く光る幻想的なベールに包まれて。
華奢な少女は、穏やかに眠る。
ここは城。
彼女の、彼女だけの城。
とは言っても、少女らしい装飾や調度品などはなく。
無機質に事務的に、半球状に抉れた地面の中心地――。
そこに慎ましやかなベッドが横たわるだけ。
実に簡素な、だけど隔絶的で排他的な城だ。
そんな彼女の世界に、異物がひとつ紛れ込む。
中肉中背、白衣に身を包んだ壮年の男。
少女の無垢な世界を穢す、不純な男。
男は、この城の主である少女に近寄り、そっと微笑む。
「永い道程だった」
過去を振り返り、噛み締めるように、男は呟いた。
「千年にもわたる蓄積を経て、ここに今、私の手で――」
右手を少女にかざす。
途端、右手が白く輝く――否、それは白い手袋だった。
ゆっくりと、少女を包む乳白色のベールに触れる。
パチッ、と小さな破裂音が響いた。
それは、忍び寄る男の手を拒む、彼女の結界。
しかし白い手袋はそれを悠々と突破した。
突破するための手袋だった。
男はその成果に満足する。
そして、ついに右手が、少女の頬に触れた。
「さあ、目を覚ませ」
男が囁く。
その声に反応するように、少女は深い眠りから覚める。
緩々と、薄く、その目を開く。
「おはよう――千年の眠り姫」