いずみ、寝る直前・寝てる時に家族に話しかけられると
そこそこ適切に受け答えしてるらしいんだわ。
――らしい。
というのも、次の日いずみはそのやり取りを覚えていない。
「昨日寝る前にあんなこと言ってたよね」
と家族に言われても、全く記憶にない。
いずみ、そもそも「寝る」という行為が「死」に近いのでは、
と思っているんですよね。
ほら、「スワンプマン」っていう思考実験があるじゃない。
沼にいる男が雷を受けて死ぬ。
そして沼に衝撃・電圧諸々が加わって、超偶然にも
男と分子レベルで全く同じ生き物が生まれる。
記憶なども完全に同一なので、本人含めて
男が「スワンプマン(沼男)」であると誰も気付かない。
果たしてこのスワンプマンは元の男と同一だと言えるのか?
っていうヤツ。
で、「寝る前のいずみ」と「起きた後のいずみ」は
同一人物なのか?
と思ってしまうわけ。
そういう「身に覚えのない会話」があると、
ますます自分はスワンプマンなんじゃないか、と思うのよ。
分かる?
昨日のいずみと今日のいずみは別人かもしれないなー。
という怖い話。