『あなたをずっと、見つめています』
そんなメールが届いた。
相手のアドレスは登録外。
どうやら携帯からであることだけは分かった。が、それだけだ。
一体、どこの誰が――
「ストーカーじゃね?」
ちょうど家へ遊びに来ていた友人はそう言って笑った。
文面はこれだけで、広告の類でもなさそうだ。
「ストーカー、ねえ・・・」
確かにそうとしか思えない。もしくは、単なる間違いか。
僕はただただ後者であることを祈った。
「心当たりはねーの?」
「ねぇなぁ」
それはもう、まったくもって、皆無である。
そもそも、アドレスがどこから流出したのかも見当がつかない。
「何にせよ、悪意はないんじゃね? 好かれてんだよ、いいことじゃねーか」
「・・・良くねぇよ」
そんな余裕はなかった。嬉しいどころか、怖いだけだ。
まぁ気にするなよ、と言い残して友人は帰った。
そうは言っても、独りになると更に気になってしまう。
少し早いが、もう寝よう。寝て忘れてしまおう。
コップ一杯のアルコールを飲み、僕は早々に布団に潜り込んだ。
翌朝目を覚ますと、携帯には昨夜と同じアドレスからメールが届いていた。
『あなたのことを、愛しています』
――ストーカー確定。
背中に冷たいものが流れるのを感じた。
年齢=彼女イナイ歴である僕としては、こんなことを言われるのは初めてである。
その初めてがストーカーとは、一体どういうことだろう。
文面だけ見る分には、こんなに幸せなことはないという内容なのに。
僕はそのギャップに思い切り凹み、そして恐怖した。
取り敢えず、気を紛らわすために友人に電話する。
・・・出ない。
アイツは今日も一日暇なはずなのだが。まだ寝てるのだろうか。
仕方なく、着替えて学校へと向かう。
特に出る必要はないのだが、家に居てもろくなことはない。というか、怖い。
学校で知った顔にでも会えば、少しは落ち着くだろう。
と、思ったのだが。
そんな日に限って、ひとりも知り合いに遭遇することはなかった。
大きな大学で講義数も多いのだから、そんな日もないわけじゃない。
しかし、何もこんな時に・・・。
それもこれも、友達が少ない自分が招いたことかもしれないのだが。
否々。
今そんなことを嘆いても仕方ない。
とにかく、適当に時間を潰そう。
そしてその日、僕は出ても出なくてもいい講義に出たり、喫茶店でぼんやりして過ごした。
いつメールが来るか不安だったが、その日はそれ以上メールが来ることはなかった。
そして次の朝。
『好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、だから』
というメールが届いていた。
着信時刻は夜中の3時。爆睡中である。
本格的に怖くなってきた。というか、最後の『だから』は何だ。
意味が分からなくて、余計怖い。
そこで僕は思いつく。
――しばらく、携帯の電源を切っておこう。
ヘタに見てしまうから怖いのだ。
どうもこのストーカーはメールを送りつける以外の行動にはでないようだし。
昨日も、例えば不審人物にあとをつけられたり妙な視線を感じたりということはなかった。
そうだ。結局、僕が怯えているのは毎朝届いているこのメールだけなのだ。
友人たちには、変に心配かけないようその旨を簡単に記載したメールを送っておく。
最初からこうしておけばよかった。
ただそれだけのことで、僕は実に晴れ晴れとした気分になった。
更に翌朝。
勿論、携帯は電源を切ったままだ。
あの理不尽なメールに悩まされることもない。
そう思っていたのに。
気分良く出かけようとした、その時――郵便受けに一通の封筒が届いていることに気付いた。
切手は貼られていない。
誰かが直接郵便受けに入れたのだろう。
封を開け、中を確認する。
中には、何の変哲もない便箋が一枚。
そこには、パソコンの文字で一行だけメッセージが書かれていた。
『あなただけ幸せになるなんて許さない』
――自然、昨日のメールの文面と繋がる。
つまり。
貴方が好きだから、貴方だけ幸せになるなんて許さない。
ぞくり、と全身に鳥肌が立つ。
意味が分からない。
だが、怖い。ただひたすら怖い。
携帯の電源を入れ、慌てて友人に電話をかける。
――出ない。
次に、電源を切っている間に届いたであろうメールを受信する。
受信、0件。
昨日僕が送信したメールに対する返信すらない。
これは一体、どういうことだ。
そういえば。
そういえば、ストーカーからのメールが届くようになって、僕は誰とも連絡を取れていない。
直接会うこともできず。
メールも届かず。
確かに僕は、友達の少ない方だけど――だから、数日誰とも会わないこともあるのだけど。
この奇妙な符号に、僕は強い恐怖を感じた。
そこに、メールが一通。
『二人で一緒に、不幸になりましょう』
そして、僕にはもう――
このストーカーとコンタクトを取るしか道が残されていないことを、悟った。
そんなメールが届いた。
相手のアドレスは登録外。
どうやら携帯からであることだけは分かった。が、それだけだ。
一体、どこの誰が――
「ストーカーじゃね?」
ちょうど家へ遊びに来ていた友人はそう言って笑った。
文面はこれだけで、広告の類でもなさそうだ。
「ストーカー、ねえ・・・」
確かにそうとしか思えない。もしくは、単なる間違いか。
僕はただただ後者であることを祈った。
「心当たりはねーの?」
「ねぇなぁ」
それはもう、まったくもって、皆無である。
そもそも、アドレスがどこから流出したのかも見当がつかない。
「何にせよ、悪意はないんじゃね? 好かれてんだよ、いいことじゃねーか」
「・・・良くねぇよ」
そんな余裕はなかった。嬉しいどころか、怖いだけだ。
まぁ気にするなよ、と言い残して友人は帰った。
そうは言っても、独りになると更に気になってしまう。
少し早いが、もう寝よう。寝て忘れてしまおう。
コップ一杯のアルコールを飲み、僕は早々に布団に潜り込んだ。
翌朝目を覚ますと、携帯には昨夜と同じアドレスからメールが届いていた。
『あなたのことを、愛しています』
――ストーカー確定。
背中に冷たいものが流れるのを感じた。
年齢=彼女イナイ歴である僕としては、こんなことを言われるのは初めてである。
その初めてがストーカーとは、一体どういうことだろう。
文面だけ見る分には、こんなに幸せなことはないという内容なのに。
僕はそのギャップに思い切り凹み、そして恐怖した。
取り敢えず、気を紛らわすために友人に電話する。
・・・出ない。
アイツは今日も一日暇なはずなのだが。まだ寝てるのだろうか。
仕方なく、着替えて学校へと向かう。
特に出る必要はないのだが、家に居てもろくなことはない。というか、怖い。
学校で知った顔にでも会えば、少しは落ち着くだろう。
と、思ったのだが。
そんな日に限って、ひとりも知り合いに遭遇することはなかった。
大きな大学で講義数も多いのだから、そんな日もないわけじゃない。
しかし、何もこんな時に・・・。
それもこれも、友達が少ない自分が招いたことかもしれないのだが。
否々。
今そんなことを嘆いても仕方ない。
とにかく、適当に時間を潰そう。
そしてその日、僕は出ても出なくてもいい講義に出たり、喫茶店でぼんやりして過ごした。
いつメールが来るか不安だったが、その日はそれ以上メールが来ることはなかった。
そして次の朝。
『好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、だから』
というメールが届いていた。
着信時刻は夜中の3時。爆睡中である。
本格的に怖くなってきた。というか、最後の『だから』は何だ。
意味が分からなくて、余計怖い。
そこで僕は思いつく。
――しばらく、携帯の電源を切っておこう。
ヘタに見てしまうから怖いのだ。
どうもこのストーカーはメールを送りつける以外の行動にはでないようだし。
昨日も、例えば不審人物にあとをつけられたり妙な視線を感じたりということはなかった。
そうだ。結局、僕が怯えているのは毎朝届いているこのメールだけなのだ。
友人たちには、変に心配かけないようその旨を簡単に記載したメールを送っておく。
最初からこうしておけばよかった。
ただそれだけのことで、僕は実に晴れ晴れとした気分になった。
更に翌朝。
勿論、携帯は電源を切ったままだ。
あの理不尽なメールに悩まされることもない。
そう思っていたのに。
気分良く出かけようとした、その時――郵便受けに一通の封筒が届いていることに気付いた。
切手は貼られていない。
誰かが直接郵便受けに入れたのだろう。
封を開け、中を確認する。
中には、何の変哲もない便箋が一枚。
そこには、パソコンの文字で一行だけメッセージが書かれていた。
『あなただけ幸せになるなんて許さない』
――自然、昨日のメールの文面と繋がる。
つまり。
貴方が好きだから、貴方だけ幸せになるなんて許さない。
ぞくり、と全身に鳥肌が立つ。
意味が分からない。
だが、怖い。ただひたすら怖い。
携帯の電源を入れ、慌てて友人に電話をかける。
――出ない。
次に、電源を切っている間に届いたであろうメールを受信する。
受信、0件。
昨日僕が送信したメールに対する返信すらない。
これは一体、どういうことだ。
そういえば。
そういえば、ストーカーからのメールが届くようになって、僕は誰とも連絡を取れていない。
直接会うこともできず。
メールも届かず。
確かに僕は、友達の少ない方だけど――だから、数日誰とも会わないこともあるのだけど。
この奇妙な符号に、僕は強い恐怖を感じた。
そこに、メールが一通。
『二人で一緒に、不幸になりましょう』
そして、僕にはもう――
このストーカーとコンタクトを取るしか道が残されていないことを、悟った。