朗読と鎌倉彫と
相川すみさんの鎌倉彫の作品
先日、朗読を指導させて頂いている生徒さんのお宅に、お招きいただきました。
生徒といっても、彼女は80代で、鎌倉彫の名手。お弟子さんもたくさんいる。
そんな彼女、朗読は好きだけれど、年齢もあり仕事と家のことで手いっぱいで、
朗読は続けられなくなってしまった、今までのお礼に鎌倉彫のちょっとしたもの
を先生に差し上げたい、と言って下さったのです。
それなら、お庭の松もみごとだと噂にお聞きしていたお宅に、是非伺いますと、
馳せ参じたというわけです。
お庭の松もいいのですが、お住まいの屋上には、松の盆栽と、木の花などがぎっ
しり!
80代後半のご主人が丹精込めて作った盆栽の数々。これは40年たっていい格好に
なってきた、とか、
これは、このあたりが足りないんだ、もう少し伸びるとぐんと良くなる、などと
教えて頂きました。
継ぎ木してあるものも多く、それでこの調和のとれた美しさになるのか、と改め
て感心したり。
盆栽は子どもの頃、私の祖父も少しやっていたが、当時は良さがわからず、庭で
ドッジボールをしていて枝を折ってしまったり、今思えば申し訳なかったな、
などと思い出す。
それにしてもこれだけの世話を、ご主人一人ではとても無理で、ご夫婦で、水や
り、植え替え、日々の手入れなどを一生懸命なさっている。「大変なのよ」と言
いながらも、一日一日真剣に生きている充実感が伝わってくる。
鎌倉彫の作品もたくさんあるそうですが、見せて頂き写真を撮らせて頂いたのは
小品のほんの一部。大半は丁寧に保管されていて、梱包を解くのに一苦労。
そしてまた仕舞うのに三日かかるそうです。
どれも素敵ですが、囲碁が趣味のご主人の為に作った碁石入れなどもあり、
仲の良い御夫婦の姿に、うっとり。いつまでお幸せに。
私が頂いたのは煎茶盆。お煎茶を淹れる時のお盆です。
この形は、いろいろ使えそうだなと思っていると、
「おつまみを乗せてもいいわよ」と彼女。
見透かされたかな。
大切に使わせて頂きます。
彼女は今、何人かの鎌倉彫の方たちと、とあるお寺のために彫っているそうです。
壮大なもので、何人かで、何年かで仕上げるそうです。
最後の仕事なんて言ってましたが、その仕事は何百年も後の世に残ることでしょう。