Dr. 讃井の集中治療のススメ

集中治療+αの話題をつれづれに

エンドトキシンは何のために測定する?

2008-06-13 22:57:32 | 集中治療
 どこかの整形外科でおきたセラチア敗血症が世間を騒がせています。これに関連して,IDATENのメーリングリストでもエンドトキシンの話題がでてました。日本の病院ではエンドトキシンがよくオーダーされます。私自身はいまだかつて一度もオーダーしたことがありませんし,解釈の仕方を知りません。しかし,多くの診療科の医師がオーダーしてます。臨床的に敗血症を強く疑う状況で,エンドトキシンが陽性の場合と陰性の場合で,治療方針でどのような変更があるのでしょうか?もちろんこの質問に答えられるような臨床研究は存在しません。治療方針の決定に影響を与えない検査は無駄以外の何物でもありません(臨床研究目的を除いて)。医療費はかかりますし,患者は血液を採られますし,検査技師も労働を強いられます。さらに解釈方法が定まっていない検査なのに,個人的経験や勘,その施設の習慣に基づいて,判断が下されるとするならば,患者に害が及ぶ可能性があります。これはβDグルカン,CMVアンチゲネミア,ガラクトマンナンなどの近年登場した他のバイオマーカーにも言えることです。もちろんこれらの検査に全く利用価値の可能性がないとは私も思っていません。中にはある特定の母集団では,これらの結果が治療方針に影響を与える例もあります(エンドトキシンにはありませんが)。また,検査特性を知るための臨床研究などは行う価値が十分あると思います。しかしその場合は,しっかりと臨床研究のために必要な手続きを経なければなりませんし,研修医や学生には「臨床研究のために測定していて,現時点での臨床的意義は不明である」と正しく教えてあげる必要があります。
 皆さんがもしこれらの検査をオーダーすることがあるとするなら,オーダーする前に「陽性ならこうする」とか「陰性ならこうする」とかの方針をすでに持っていますか?結果を見てから「さぁどうしよう」と悩んでいますか?それともしっかりと計画された臨床研究ですか?

このような問題は,最近医学書院から出版された下記の本を読むとすっきりします
野口善令,福原俊一著
「誰も教えてくれなかった診断学」
http://www.amazon.co.jp/%E8%AA%B0%E3%82%82%E6%95%99%E3%81%88%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%82%8C%E3%81%AA%E3%81%8B%E3%81%A3%E3%81%9F%E8%A8%BA%E6%96%AD%E5%AD%A6%E2%80%95%E6%82%A3%E8%80%85%E3%81%AE%E8%A8%80%E8%91%89%E3%81%8B%E3%82%89%E8%A8%BA%E6%96%AD%E4%BB%AE%E8%AA%AC%E3%82%92%E3%81%A9%E3%81%86%E4%BD%9C%E3%82%8B%E3%81%8B-%E9%87%8E%E5%8F%A3-%E5%96%84%E4%BB%A4/dp/4260004077/ref=pd_bbs_sr_1?ie=UTF8&s=books&qid=1213364723&sr=8-1

林 淑朗