知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

クランプ装置審取

2012-06-18 05:27:20 | 最新知財裁判例

クランプ装置審取
平成23年(行ケ)第10331号 審決取消請求事件
請求棄却
本件は拒絶査定不服審判不成立審決の取消しを求めるものです。
主たる争点は,進歩性です。
裁判所の判断は23ページ以下
1 本判決は、まず、「甲第1,第2号証(米国特許第5695177号明細書,特開2000-1 45724号公報)の記載に照らせば,ピストンロッドの作動速度を制御するべく, 甲第34号発明のクランプシリンダのシリンダ本体(シリンダチューブ1)の内部に,甲第1,第2号証に記載されているような周知の流量調整弁を取り付ける動機付けがあり,また甲第65号証(実公昭47-7330号公報)の流量調整弁であるユニット6の機能と上記周知の流量調整弁の機能の共通性にかんがみれば,本件出願当時,当業者において,甲第34号証に上記周知技術及び甲第65号証に記載された技術的事項を適用して,相違点1に係る構成に容易に想到できたものである」と判断し、原告の「甲第65号証のユニット6にあえて「弁ケース」を設ける必要がないなど」主張に対し、「甲第3,第4,第42,第44,第5 8,第68号証に記載されているように,クランプ装置の流体圧シリンダに弁ケースを介して流量調整弁を設けることは当業者の周知・慣用技術であり,かかる構成を採用し得ることは当業者に自明な事柄にすぎない。また,クランプシリンダのシリンダ本体内にバイパス流路が設けられているとしても,弁ケースを介する流量調整弁を設ける上で支障があるわけではないし,上記のとおりクランプ装置の流体圧シリンダに弁ケースを介して流量調整弁を設けることは当業者の周知・慣用技術にすぎないから,相違点1に係る構成の容易想到性についての前記結論が左右されるものではない」結論づけました。
2 本判決は、次に、「本件明細書(甲68)の段落【0007】ないし【0009】のとおり,本件発明1の技術的課題はクランプ装置の小型化(コンパクト化)及び操作性の向上にあるところ,甲第34号証には,解決すべき技術的課題に関し,「従来のクランプシリンダは,①シリンダチューブの前端にロッドカバーの嵌入軸部をOリングを介してシリンダ孔に嵌め込んで両者間をシールし,そのロッドカバーの背面が,機械ベースなどの固定側部材への取付け面となっているもの・・・,②シリンダチューブとロッドカバーとが一体成形されていてロッドカバー背面が機械ベースなどの固定側部材への取付け面となっているもの・・・が知られている。」(段落【0002】),「前記①のクランプシリンダでは,・・・Oリング溝形成のために,嵌入軸部の軸線方向長さがある程度必要となる。そのため,シリンダ孔内を軸線方向に移動するピストンの有効ストロークを一定にした場合,前記Oリング溝形成に要する嵌入軸部の軸線方向長さだけシリンダ全長が長くなり,コンパクトさに欠ける問題があった。一方,前記②ではそのような問題はない・・・。」(段落【0003】)との記載があるから,流量調整弁の設置個所に関してではないものの,クランプ装置全体の小型化(コンパクト化)が技術的課題として考慮されていることは明らかである。そして,甲第34号証発明では,固定側部材100よりも上方に位置するクランプシリンダのロッドカバー7の側面に側面配管ポート15a,15bを設ける構成が開示され,このポートに逆止弁を設けるときは,逆止弁の軸部がクランプロッドの長手方向と交差するようにされるのであって,甲第34号証発明と本件発明1との間で技術的課題の相違があるとしても,甲第34号証発明に周知の流量調整弁を組み合わせ,相違点2に係る構成に至る動機付けに欠けるものではない」と判断し、「審決が説示するとおり,「甲第34号証発明のクランプシリンダに,甲第65号証に開示された流量調整弁を装着する際,流量調整弁の装着穴を,クランプシリンダに対してどのように配置するかは,装着穴の加工性,流量調整弁の操作性等考慮して,当業者が適宜設計しえたものである」から,甲第34号証発明のクランプシリンダの油路と甲第65号証のクッション装置付きシリンダの通路の構造の類似性に照らし,当業者において相違点2を解消することは容易であるということができる 」と結論づけました。
3 本判決は、本願発明と引用発明との間に技術的課題の相違があるとしても動機付けが肯定できるとして進歩性を否定した裁判例として参考になると思われます。


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