RAINBOW審取
平成23年(行ケ)第10328号
請求棄却
本件は拒絶査定不服審判不成立審決の取消しを求めるものです。
主たる争点は引用商標との類否です。
1 類否判断
1-1 引用商標について
本判決は、 「引用商標は,正方形をなす全体が上4分の3の位置を水平に横断する直線によって截然と2分されてなるものである。上部には,中央左寄りに支配的に大きく片目をつぶった人物の上半身像が描かれ,その左側にクマらしき動物の顔が右上がりに表され,人物像の右側には,上から順に,擬人化した太陽,ウサギらしき動物の顔, カエルらしき動物の顔が,いずれも右下がりに表され,動物の顔は,それぞれ「あつーい」の文字と各顔の左右に各3つの水滴様のものとを伴い,ウサギの下,カエルの左には「百恋」及び「ひゃっこい!!」の文字が,右下がりに2段に表されてなるものである。下部には「RAINBOW」の欧文字及び「仙台」の文字が二段に配されてなるものである。上部と下部との間には,視覚上何らの関連も認められない。 引用商標の上部は,面積的には大きいが,多数の要素からなり散漫な印象を与える。上部の記載中の絵の部分は,著名なキャラクターとは認められず,その意味するところが不明であるため,特定の観念も称呼も生じない。「百恋」の文字は,下段に並行して表された「ひゃっこい!!」の文字からの連想によって「ひゃっこい」の称呼を生じるが,文字だけであれば生じうる「百の恋」の観念が「ひゃっこい!!」の文字からの連想によって妨げられ,結局その意味は不明であり,商品識別力を有する特定の観念を生じない。「ひゃっこい!!」の文字は,「ひゃっこい」の称呼を生じ,この称呼は「冷たい」を意味する「ひやっこい」との単語の音に似ているから,これ単独であれば連想により「冷たい」との観念を生じ得るが,上段に並行して表された「百恋」の文字があるために「冷たい」という意味を連想することが妨げられ,商品識別力を有する特定の観念を生じない。動物の顔に伴う「あつーい」の文字からは,「あつーい」の称呼と「暑い」又は「熱い」との観念を生じ得るが, 非常に小さく表されていることから判読し難く,看る者の印象に残らず,称呼観念を生じさせるものではない。「百恋」,「ひゃっこい!!」の文字は,それ自体から上記の称呼を生じさせるものの,これら文字が引用商標に占める面積割合に照らして引用商標としての称呼まで生じさせるものではない。以上を総合すると,上部の構成全体からは,特定の称呼も観念も生じることがない。 これに対し,引用商標の下部には,その上段に,手書き風の肉太の書体で両端を大きく,中心に向けてやや小さく,「RAINBOW」の欧文字を構成の横幅一杯に顕著に表し,下段に,やや小さく,やや細いゴシック体で「仙台」の文字を表したものであり,看る者にはっきりとした印象を与える。そして,「RAINBOW」の欧文字と「仙台」の文字は,文字の種類,大きさ及び書体を異にし,二段に表されていることから,一体性が弱く,視覚上分離して把握されるものである」と認定し、「引用商標は,「RAINBOW」の文字部分が,需要者及び取引者にとって最も強く注意を惹く部分であり,この部分をもって引用商標の要部と認めることができる」と判断しました。
1-2 対比
本判決は、次に、「引用商標は図形部分を有することから,文字商標である本願商標とは外観において類似しないが,本願商標は,「レインボー」の文字を標準文字で表してなり,「レインボー」の称呼及び「虹」の観念を生じるものであって,引用商標の要部と認められる「RAINBOW」と称呼及び観念において同一であるから,外観が非類似であっても,両商標は類似するものというべきである」と結論付けました。
2 商品の類否判断の誤り
本判決は、この点に関し、「本願商標の指定商品である「衛生マスク」は,風邪,インフルエンザなどのウィルス対策や花粉症予防のために使用されるマスクであり,引用商標の指定商品である「化学物質を充填した患部用保温保冷具を患部に固定するための補助カバー」は, ひざなどの患部を包み込むように温めて血流改善し痛みをやわらげるための化学物質を充填した保温具や,肩やひじ,ひざなどの痛みに対し急冷することによって患部の回復を図るために化学物質を充填した保冷具などを用い,これらを患部に固定するための補助カバーであり,ともに布ないし不織布等の布様のものからなり,人間の健康の維持や患部の治癒を目的として身体に密着させて使用される衛生関連商品であって,同一の企業において製造される場合があり,薬局,薬店,通信販売等で広く販売され,一般消費者が家庭で使用するものであるから,両商品の用法において共通する部分がある」と判断し、「本願商標と引用商標の指定商品が類似するとした審決の判断に誤りはない」と結論付けました。。
3 本判決は、商標の類否判断もさることながら、商品の類否について判断を示した例として参考になるものと思われます。
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