知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

訂正装置審取

2012-06-18 05:25:55 | 最新知財裁判例

訂正装置審取
平成23年(行ケ)第10228号 審決取消請求事件
請求認容
本件は拒絶査定不服審判不成立審決の取消しを求めるものです。
争点は,進歩性の有無です。
裁判所の判断は19ページ以下
1 訂正発明等の認定
本判決は、まず、本願発明について、「本願発明の「カーソル連動手段」における「前記テキストカーソルと前記音声カーソルとを同じ位置又は所定の距離だけ離間した位置に配置するため,前記表示されたテキストカーソルを前記表示された音声カーソルに,あるいは前記表示された音声カーソルを前記表示されたテキストカーソルに連動させる」とは,異なる位置にある「テキストカーソル」と「音声カーソル」について,そのいずれか一方のカーソルと同じ位置又は所定の距離だけ離間した位置となるように他方のカーソルを移動させて,両者を「位置合わせする」ことと理解できる。以上から,本願発明において「テキストカーソル」と「音声カーソル」とは別個のものとして配置及び表示されるもので,本願発明の「カーソル連動手段」は,異なる位置にある「テキストカーソル」と「音声カーソル」について,そのいずれか一方のカーソルと同じ位置又は所定の距離だけ離間した位置となるように他方のカーソルを移動させて,両者を「位置合わせする」ものと認められる。そして,本願発明は,上記の構成により,「訂正対象のワードの訂正は簡単な手動操作で, 短時間に行うことができる」との作用効果を奏するという技術的意義を有すると認められる」認定し、次に、引用発明1について、引用発明1では,音響的に再生されている言語が表示装置上に強調表示され,この強調表示された言語に,音声認識の検出誤りを発見した場合に,操作者がこの強調表示された言語を訂正できるのであって,引用刊行物1の記載からは,引用発明1において,音響的に再生されている言語の強調表示とは別に,表示画面上の検出誤りがある言語にカーソルが配置及び表示され,この言語を操作者が訂正できるとは認められない」と認定し、結論として「「引用刊行物1のワードを強調するカーソル」は,本願発明の「音声カーソル」に相当すると認められるが,誤ったワードを編集する,本願発明の「テキストカーソル」に相当するとは認められず,また,引用発明1が「音声カーソルと同じ位置で連動するテキストカーソル,あるいはテキストカーソルと同じ位置で連動する音声カーソルを有して」いるとも認められない。以上から,審決の相違点の判断における,「引用刊行物1のワードを強調するカーソル(音声カーソル)は,誤ったワードを編集するための,本願発明の『テキストカーソル』にも相当し,引用発明1のテキスト編集手段は,表示手段に表示される認識テキスト情報の誤ったワードにテキストカーソルを配置及び表示しているということができ,引用発明1の訂正装置は,音声カーソルと同じ位置で連動するテキストカーソル,あるいはテキストカーソルと同じ位置で連動する音声カーソルを有して」いるとの認定には,誤りがある」と判断しました。
2  容易想到性
本判決は、この点に関し、「引用発明1において,音響的に再生されている言語の強調表示(本願発明の「音声カーソル」に相当。)とは別に,表示画面上の検出誤りがある言語にカーソルが配置及び表示され,この言語を操作者が訂正できるとは認められず,また,引用発明1は「音声カーソルと同じ位置で連動するテキストカーソル,あるいはテキストカーソルと同じ位置で連動する音声カーソルを有して」いるとも認められない」とし、さらに、「引用刊行物2の技術及び引用発明2は,いずれも,単一のカーソルを備えるものであるから,テキストの編集に際してテキストカーソルを表示することが本件優先日における周知技術であるとしても,音響的に再生されている言語の強調表示とは別に,表示画面上の検出誤りがある言語にカーソルが配置及び表示されない引用発明1と,単一のカーソルを備え,このカーソルの機能を,本願発明における「音声カーソル」としての機能と「テキストカーソル」としての機能とに選択的に切り替える,引用刊行物2の技術及び引用発明2とからは,「表示手段に表示される前記認識テキスト情報の誤ったワードにテキストカーソルを配置及び表示し,ユーザにより入力された編集情報に従って前記誤ったワードを編集する」ようにし,「前記テキストカーソルと前記音声カーソルとを同じ位置又は所定の距離だけ離間した位置に配置するため,前記表示されたテキストカーソルを前記表示された音声カーソルに,あるいは前記表示された音声カーソルを前記表示されたテキストカーソルに連動させる」本願発明の構成とすることを, 当業者が容易に想到し得たとは認められない」と判断しました。
本判決は、さらに、「本願発明は,上記の相違点に係る構成により,「訂正対象のワードの訂正は簡単な手動操作で,短時間に行うことができる」との作用効果を奏するものと認められるが,この作用効果も,引用発明1,引用刊行物2の技術及び引用発明2から,当業者が容易に予測し得たとは認められない」と判断しました。
3 本判決は、想到性がないことを一つの理由として進歩性を肯定した点に加え、化学以外の分野について効果の予測不可能性を一つの理由として進歩性を肯定した例として参考になるものと思われます。

 


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