子供の過失についての高裁判示
過失とは、ある者が、その行為により他人に法益侵害の結果(被害)が発生しないよう自らの行為をコントロールする義務に違反すること、すなわち「注意義務違反」又は「結果回避義務違反」を指す。社会において何らかの法益侵害の結果が発生した場合に、法規や社会通念に照らし、法益侵害の結果を発生させた者が結果回避義務を負っているのにその義務を果たさなかったと判断されるときに過失があるとすることになる。社会生活においては、各人の行動や行為が相互に衝突し合う場面が多々存在する。そのような場合に、各人が他人の法益を侵害しないよう相互に自らの行動等をコントロールすることが法律上も社会通念上も要請されているものであり、そのような観点から「過失」の有無が検討されるべきものである。
これを本件についてみるに、公道は、誰でも自由に通行できる公の営造物として設置されているものであり、予期せぬ形で通行が妨げられた場合には危険が大きいから、道路外の他の者は、自動車等を含む公道の通行を妨害しないように措置すべき注意義務を負っているものというべきである。道路外の他の者が学校内で遊戯等の活動をする者であっても、このことは同様で、学校内での活動は学校の範囲内に収めるべきであるのが原則である。本件のサッカーゴールは校庭の南端線に近い位置に平行に置かれ、校庭南端のネットフェンスの高さは約一二〇cm、南門の門扉の高さも同程度であって、ゴールに向かってフリーキックの練習をした場合には、ボールがゴールを外れ門扉やネットフェンスを越えて本件道路に飛び出ることが十分予想されたといえる。もとより校庭内でサッカーをすることは許されたことであるが、前判示のようにそれはあくまで校庭内のことであり、校庭の南側に隣接する本件道路との関係では、校庭内でサッカーをする者は道路の交通を妨害しないような注意義務を負っていたというべきである。そして、当時のサッカーゴールの位置、校庭南側の門扉やネットフェンスの状況等に照らすと、夏夫がボールを校庭外に飛び出させた行為は、注意義務に違反する行為であったというべきであるから、同人には過失があったということになる。
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