平成24年6月26日判決言渡
平成23年(行ケ)第10300号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成24年4月19日
1 本件は,拒絶査定不服審判不成立審決に対して取消を求めたものです。
2 本判決は、容易想到性に関し、「ダニの死がいや糞,花粉などは,カーペット等の立毛繊維製品の内部にも存在すること,掃除機で吸い取ることによりアレルゲンの除去をすることができるが,カーペット等の繊維製品の表面に存在するアレルゲンに比べ,内部に入り込んだアレルゲンは,除去が困難であることは,本願の優先日当時における当業者の技術常識であったと認められる。また,アレルゲンの一つであるチリダニは,その死がいや糞などもアレルゲンとなること,生きているダニよりもその死がいや糞の方が細粒化し,アレルゲン性が高いことも,本願の優先日当時における技術常識である」と認定した上、「引用文献2に接した当業者が,上記技術常識に基づき,除去が困難である繊維製品の内部,すなわち最表層以外の部分にアレルゲン低減化剤による処理をすることに,何ら困難性はないといえる。のみならず,引用文献1には,防虫剤を立毛・パイル繊維製品の基布又はその裏面にのみ付与することによって,立毛・パイル繊維製品の外観・風合いを損なうことのない防虫加工製品を提供するという記載があり,引用文献1記載の発明と本願補正発明とでは,防虫剤とアレルゲン低減化剤との違いはあるものの,いずれも薬剤を立毛繊維製品に使用するという点で共通するものであることからすると,アレルゲン低減化剤の使用を最表層以外の部分とすることによって,繊維製品本来の触感を維持できるという効果を奏することは,当業者が容易に予測し得るものである」と判断しました。
3 本判決は、技術常識を根拠の一つとして容易想到性を肯定したものとして実務の参考になるものと思われます。
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