知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

法面加工審取

2012-09-03 15:53:28 | 最新知財裁判例

平成24年8月8日判決言渡 同日原本受領 裁判所書記官
平成23年(行ケ)第10409号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成24年7月18日
1 本件は,無効審判不成立審決の取消を求めた事案です。
2 本判決は、容易想到性に関し、「引用発明は,傾動機構を備えた従来の油圧ショベルは下部走行体の前後方向に向けて,上部旋回体を前後たて方向に傾動させることができず,油圧ショベルが傾斜面に沿って昇降走行を行うと,運転者が傾斜状態となって作業困難となるとともに,エンジンが設置許容傾斜角度を超えて回転不能になるなどして,大規模な法面に沿って昇降走行を行いながら法面整成作業を行うことができなかったことから,この課題を解決するため,上部旋回体を下部走行体の前後方向に傾動できるようにした油圧ショベルを提供することを目的としたものであり, 傾動シリンダの作動により上部旋回体を下部走行体の前後方向に向けて傾動調整できるように構成することにより,法面に沿って昇降走行しながら法面整成作業などを行うときに,上部旋回体を水平状態に調整操作することができ,法面に沿って走行しながら行う法面整成作業,法面昇降作業などの作業性,安定性を向上させるという作用効果を奏するものである」と認定し、他方、「本件発明は,従来,高くて急勾配の地形部分に法面を形成する場合,全面にわたって土木機械を投入することができず,人の手作業によっていたため,作業効率が悪く,危険であるなどの課題があったため,そうした地形部分でも作業者がほぼ水平状態で操作できる加工機械を用いるとともに,当該機械について,「車体あるいはベース板の一方の両側部に互いに距離を置いて取り付けられた一対のウインチであって,車体を支持し,かつ上方が拡開する状態で張設された一対のワイヤーのそれぞれを巻き取る一対のウインチ」を有する構成(相違点2に係る構成)を採用し,その結果,ウインチの作動によってワイヤーを伸縮させるとともに,無限軌道を駆動させることにより,無限軌道だけでは自走することができない傾斜面部位でも車体を上下左右方向に移動することができるという作用効果を奏するものである」と認定した上で、「これに対し,引用発明は,無限軌道の駆動により傾斜面を昇降走行する油圧ショベルであるから,本件発明にいう急勾配,すなわち,土木機械の投入が不可能,あるいは自走することができない傾斜面において使用することまでは想定されておらず,引用例1にも,そうした傾斜面部位でも一対のウインチを用いて車体を上下左右方向に移動させ,法面形成作業を効率よく行うことの直接的な動機付けや示唆はない」と判断しました。
3 本判決は、容易想到性が否定された例として有益と思われます。

平成24年8月8日判決言渡 同日原本受領 裁判所書記官
平成23年(行ケ)第10409号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成24年7月18日
1 本件は,無効審判不成立審決の取消を求めた事案です。
2 本判決は、容易想到性に関し、「引用発明は,傾動機構を備えた従来の油圧ショベルは下部走行体の前後方向に向けて,上部旋回体を前後たて方向に傾動させることができず,油圧ショベルが傾斜面に沿って昇降走行を行うと,運転者が傾斜状態となって作業困難となるとともに,エンジンが設置許容傾斜角度を超えて回転不能になるなどして,大規模な法面に沿って昇降走行を行いながら法面整成作業を行うことができなかったことから,この課題を解決するため,上部旋回体を下部走行体の前後方向に傾動できるようにした油圧ショベルを提供することを目的としたものであり, 傾動シリンダの作動により上部旋回体を下部走行体の前後方向に向けて傾動調整できるように構成することにより,法面に沿って昇降走行しながら法面整成作業などを行うときに,上部旋回体を水平状態に調整操作することができ,法面に沿って走行しながら行う法面整成作業,法面昇降作業などの作業性,安定性を向上させるという作用効果を奏するものである」と認定し、他方、「本件発明は,従来,高くて急勾配の地形部分に法面を形成する場合,全面にわたって土木機械を投入することができず,人の手作業によっていたため,作業効率が悪く,危険であるなどの課題があったため,そうした地形部分でも作業者がほぼ水平状態で操作できる加工機械を用いるとともに,当該機械について,「車体あるいはベース板の一方の両側部に互いに距離を置いて取り付けられた一対のウインチであって,車体を支持し,かつ上方が拡開する状態で張設された一対のワイヤーのそれぞれを巻き取る一対のウインチ」を有する構成(相違点2に係る構成)を採用し,その結果,ウインチの作動によってワイヤーを伸縮させるとともに,無限軌道を駆動させることにより,無限軌道だけでは自走することができない傾斜面部位でも車体を上下左右方向に移動することができるという作用効果を奏するものである」と認定した上で、「これに対し,引用発明は,無限軌道の駆動により傾斜面を昇降走行する油圧ショベルであるから,本件発明にいう急勾配,すなわち,土木機械の投入が不可能,あるいは自走することができない傾斜面において使用することまでは想定されておらず,引用例1にも,そうした傾斜面部位でも一対のウインチを用いて車体を上下左右方向に移動させ,法面形成作業を効率よく行うことの直接的な動機付けや示唆はない」と判断しました。
3 本判決は、容易想到性が否定された例として有益と思われます。


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