多数意見は、平成21年8月30日施行の衆議院選挙(「本件選挙」)に関し、1人別枠制度を基礎とする当時の区割基準規定及び区割規定(以下「本件区割規定等」)は、憲法の投票価値の平等の要求に反するに至っていたものの、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず、憲法の規定に違反するものではないとしました。
すなわち、1人別枠制度は、選挙制度改革のために、人口の少ない県における定数が急激かつ大幅に削減されることを避けるための配慮に基づく措置(激変緩和措置)であり、その合理性には時間的限界があるところ、本件選挙当時には、すでに合理性は喪失しており、、憲法の投票価値の平等の要求に反するに至っていたものと判断しました。
他方、過去の大法廷判決において、本件区割規定等について、憲法の投票価値の平等の要求に反するに至っていないと判断していることを理由として、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえないとしています。
また、結論部分の後に、「できる限り速やかに」、投票価値の平等の要請にかなう立法措置を講ずる必要があると述べています。
以上の多数意見に対して、古田判事は、本件選挙区割りは、憲法の投票価値の平等の要求に反するに至っていないとの反対意見を述べています。
また、田原判事は、本件区割り規定は違憲であるが、過去の大法廷判決に鑑み、選挙の違法を宣言するにとどめるべきとの反対意見を述べています。
さらに、宮川判事は、本件区割り規定は違憲であり、本件選挙は違法であるが、事情判決の法理により請求を棄却するとともに、選挙の違法を宣言した上、今後の、選挙権の平等にかなう立法措置を講じない場合には、将来提起された選挙無効訴訟において、当該選挙区の結果について無効とすることがあり得ることを付言すべきであるとの反対意見を述べています。
事情判決の法理とは、選挙は違憲・違法であるが、無効とはしないというものです(行政事件訴訟法31条)。この手法を採用する理由は、本件選挙を無効と判断しても、違憲という結果の防止または是正に資するものではなく、かえって、憲法上その他の関係において極めて不当な結果を生じるということです。
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