知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

バッチ配送システム審取

2013-03-29 04:31:57 | 最新知財裁判例

1 平成21年(行ケ)第10432号審決取消請求事件
2 本件は、拒絶査定不服審判不成立の取消を求めるものです。
3 本件の争点は進歩性の有無です。

4-1 本判決は、まず、周知技術について、「周知例2には,車両や貨車等の輸送手段により製品や原材料等の積荷,すなわち資材を積み合わせて積載して運搬する場合,経験則に基づく積荷の積載ルールとして,輸送器の寸法及び積載可能重量などの制限条件をいずれも満たす必要があるという課題が開示されている。そして,車両や貨車等の輸送手段は,少なくとも輸送器の寸法及び積載可能重量という制限条件を有する「有限の容器」ということができ,周知例2に記載されているように,車両や貨車等の輸送手段に資材を積み合わせる場合,複数の制限条件が存在する場合には,複数の制限条件をいずれも満たしているかを判断しながら資材を積み合わせることは,一般に行われている経験則である。周知例2は,寸法や重量が異なる複数の荷物の「積み合わせ」を前提とするが,かかる経験則は,特定の対象物を有限の容器に積み込む際にも当然に適用されるものである。また,周知例2には,これから積載しようとする積荷が2つの積載ルール(2つの制限条件)の両方を満たしているか否かについて,自動計算機を用いて判定するために,積荷を追加した場合に,まず,最初のステップにおける積載ルール(第1の制限条件)を満たしているか否かを判定し,かかる積載ルールを満たす場合は,次のステップにおける積載ルール(第2の制限条件)を満たしているか否かを判定し,いずれかのステップにおける積載ルールを満たさない場合は,当該判定処理を終了する構成が開示されている」と認定した上で、「周知例2において開示されているように,資材の配送において,設定された2つのパラメータのいずれもが,それぞれの制限条件を満たしているか否かを判定する処理において,まず第1のパラメータについて,第1の制限条件を満たしているか否かを判定し,第1の制限条件を満たしていると判定した場合は,次に,第2のパラメータについて,第2の制限条件を満たしているか否かを判定し,第1のパラメータについての判定又は第2のパラメータについての判定のいずれかにおいて,制限条件を満たしていないと判定した場合は,当該判定処理を終了することは,電子計算機を用いた判定処理において通常行われる処理手段であるということができる」ことから、「本件審決において,「資材を有限の容器に収容して配送する際に,容器の最大重量,最大容積等の要件に基づいて配送すべき資材の合計値を2つの要件以内とし,積載状態を判断すること」及び「配送すべき資材に関する1つのパラメータについて資材が追加されるごとに順次各々のパラメータの値を加算してゆき,当該パラメータについての加算値が制限値に達する前に資材に関する別のパラメータについて加算した合計値が当該別のパラメータの制限値に達したかどうかを判断し,何れのパラメータも各制限値以下である場合には継続して配送を行うようにする手法」を「周知の資材配送技術」として認定したことに何らの誤りはない」と判断しました。

4-2
本判決は、さらに、本願発明の進歩性について、「引用発明2において,タンクローリー内に充填できる石油製品の量は,石油製品の体積及び荷重により制限されるものであるところ,周知例2において開示されているとおり,車両や貨車等の輸送手段により資材を積み合わせて積載して運搬する場合,輸送器の寸法及び積載可能重量などの複数の制限条件をいずれも満たす必要があること,すなわち,複数のパラメータのうち,いずれかのパラメータが制限条件(目標)に達するまで積載可能であることが,経験則として知られていたことからすると,引用発明2に開示された出荷システムにおいて,少なくとも石油製品の体積又は荷重(重量)のいずれかが,それぞれの予定量(目標)に達するまで,タンクローリー内に石油製品を充填することができること,換言すれば,いずれかが予定量(目標)に達した場合には,それ以上充填することができないことは,当業者であれば,自明のことというべきである」と述べ、「石油製品の体積及び荷重(重量)は,いずれも石油製品の流量に関する情報,すなわち流量情報であって,測定可能な量であるから,「1次測定値」及び「2次測定値」ということができ,また,タンクローリーの積載可能量や積載可能重量,法令による制限などにより定まる体積の制限値及び荷重(重量)の予定量は,石油製品を充填するに当たっての「1次目標」及び「2次目標」ということができるから,先に指摘した複数の制限条件をいずれも満たしているかを判断しながら資材を積み合わせる(あるいは特定の資材を積み込む)という経験則をシステムとして実現すれば,1次測定値に基づいて1次目標を監視するとともに,2次測定値に基づいて2次目標を監視し,いずれかの目標に達したとき,配送を終了する構成となることはむしろ当然である」。「また,2つのパラメータのいずれもが,それぞれの制限条件を満たしているか否かを判定する処理は,周知技術2が開示するとおり,計算機を用いた処理における通常の手段であり,上記経験則を計算機を用いたシステムとして実現すれば,本願発明に特定された構成となることは,当業者であれば容易に想到し得ることである。「本願発明は,引用発明2及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとした本件審決の判断に誤りはない」と判断しました。

4-3
本判決は、また、原告の「引用例2には,ローリーへの石油製品の充填作業の終了基準として,2つの基準を用いるとの技術思想の開示や,これを必要とする課題の提示ないし示唆もないから,引用発明2に周知の計量計技術及び周知の配送管理技術を組み合わせる動機付けはないなど」の主張に対し、「引用発明2は,タンクローリーに充填された石油製品の体積(充填流量)が予定量に達したとき,タンクローリーへの石油製品の供給を停止するとともに,タンクローリーの空重量と充填後の実重量から,タンクローリーに充填された石油製品の重量を求め,タンクローリーに充填された石油製品の重量を計量・確認する発明であるから,タンクローリーに石油製品を充填する場合,石油製品の体積(充填流量)及び重量の制限条件があることは,当業者において,当然認識されていたものということができる。さらに,配送される資材の量を最大化し,かつ資材の積載及び輸送のコストを最小化することは,資材配送システムにおける自明な課題であり,また,車両や貨車等の輸送手段に資材を積み合わせる場合等,複数の制限条件がある場合には,すべての制限条件を満たしているかを判断しながら資材を積み合わせることは,一般に行われている経験則であることは先に指摘したとおりであるから,引用発明2において,石油製品の体積(充填流量)及び重量の2つの制限条件に基づいて充填の終了を判断することは,当業者であれば,当然に考えることであって,動機付けもあったということができる」と判断しました。

以上


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