1 平成22年(行ケ)第10056号審決取消請求事件
2 本件は、無効審判成立審決の取消しを求めるものです。
3 本件の争点は進歩性(容易想到性)の有無です。
4
4-1
本判決は、本件発明3について、「この審決の判断の流れは,②,④,⑥の周知技術を前提とし,①,
⑤の自明課題,設計事項を踏まえ,bの甲第1号証から読み取れる事項も認定したうえ,③,⑦,⑧の判断を経て,⑨,⑩,⑪のとおり相違点1ないし3の容易想到性を導いているものであって,甲第3,10,21,22号証は周知技術の裏付けとして援用したものである。このうち,④の周知技術の認定で審決が説示する「液体インク収納容器からの色情報」が単に液体インク収納容器のインク色に関する情報でありさえすればよいとすると,前記周知技術は,液体インク収納容器と記録装置側とが発光部と受光部との間の光による情報のやり取りを通じて当該液体インク収納容器のインク色に関する情報を記録装置側が取得することを意味するものにすぎない。このような一般的抽象的な周知技術を根拠の一つとして,相違点に関する容易想到性判断に至ったのは,本件発明3の技術的課題と動機付け,そして引用発明との間の相違点1ないし3で表される本件発明3の構成の特徴について触れることなく,甲第3号証等に記載された事項を過度に抽象化した事項を引用発明に適用して具体的な本件発明3の構成に想到しようとするものであって相当でない。その余の自明課題,設計事項及び周知技術にしても,甲第3号証等における抽象的技術事項に基づくものであり,同様の理由で引用発明との相違点における本件発明3の構成に至ることを理由付ける根拠とするには不足というほかない」。
4-2
本判決は、本件発明3について、さらに、「甲第3号証等が開示する技術的事項も踏まえて念のため判断するに,甲第3,21,22号証の液体インク収納容器において,記録装置と液体インク収納容器の間の接続方式につき共通バス接続方式が採用されているかは不明であって,少なくとも甲第3,21,22号証においては,共通バス接続方式を採用した場合における液体インク収納容器の誤装着の検出という本件発明3の技術的課題は開示も示唆もされていないというべきである」と述べ,「上記技術的課題に着目してその解決手段を模索する必要がないのに,記録装置側がする色情報に係る要求に対して,わざわざ本件発明3のような光による応答を行う新たな装置(部位)を設けて対応する必要はなく,このような装置を設ける動機付けに欠けるものというべきである」と判断し、「甲第3,21,22号証に記載された事項は,解決すべき技術的課題の点においても既に本件発明3と異なるものであって,共通バス接続方式を採用する引用発明に適用するという見地を考慮しても,本件発明3と引用発明との相違点,とりわけ相違点2,3に係る構成を想到する動機付けに欠けるものというべきである」と結論づけました。
4-3
本判決は、本件発明6について、「本件発明1,3と同様に,本件発明6の液体インク収納容器と甲第3,21,22号証の液体インク収納容器とは,その具体的構成も,液体インク収納容器のインク色を検出ないし判別する原理も大きく異なっており,かつ解決すべき技術的課題の点においても異なっているものである」と述べ、「共通バス接続方式を採用する引用容器発明2に適用するという見地を考慮しても,少なくとも,引用容器発明2に甲第3,21,22号証に記載されている事項ないし周知技術を適用したときに,本件発明6と引用容器発明2との相違点に係る構成を想到する動機付けに欠けるものというべきである」と判断し、「その余の点について判断するまでもなく,引用容器発明2に甲第3,21,22号証等で開示された周知技術ないし事項を適用しても,本件発明6の優先日当時,当業者において,本件発明6と引用容器発明の相違点に係る構成を容易に想到し得るものではない」と結論づけました。
以上
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます