知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

偏光素子審取

2013-01-15 13:40:24 | 最新知財裁判例

1 平成23年(行ケ)第10418号審決取消請求事件
2 本件は、無効審判成立審決に対して取消を求める訴訟です。
3 争点は実施可能性要件と明確性要件です。
4 
4-1 実施可能性要件
本判決は、「発明の詳細な説明の記載において示された実施例及び比較例に基づいて,当業者は,表面ヘイズ値・内部ヘイズ値が,P/V比,P及びVの屈折率差,溶剤の種類の3つの要素により,何らかの影響を受けることまでは理解することができるが,これを超えて,三つの要素と表面ヘイズ値・内部ヘイズ値の間の定性的な関係や相関的な関係や三つの要素以外の要素(例えば,溶剤の量,光硬化開始剤の量,硬化特性,粘性,透光性拡散剤の粒径等)によって影響を受けるか否かを認識,理解することはできない」と認定した上で、「発明の詳細な説明には,当業者において,これらの3つの要素をどのように設定すれば,所望の表面ヘイズ値・内部ヘイズ値が得ることができるかについての開示はないというべき」から、「発明の詳細な説明には,当業者が,本件発明1ないし8,12ないし16を実施することができる程度に明確かつ十分な記載がされているとはいえない」と判断しました。

4-2 明確性要件
本判決は、「本件特許発明は,防眩フィルムを構成する「透明基材フィルム」,「透光性拡散剤」,「透光性樹脂」の構造等によって特定されるのではなく,主として,防眩フィルムの「表面ヘイズ値hs」及び「内部ヘイズ値hi」の数値範囲によって特定される発明である。したがって,特許請求の範囲の記載が明確であるためには,少なくとも,「表面ヘイズ値hs」及び「内部ヘイズ値hi」の数値の測定方法(求め方)が一義的に確定されることが必須」であるところ、「屈折率の異なる透光性拡散剤を含有する透光性樹脂からなる防眩層」における内部ヘイズ値hiの測定方法は,発明の詳細な説明の記載を参照し,かつ出願時における技術常識によっても,明らかとはいえない」と判断しました。
5 本判決は、数値を要素とするクレームにおいて、実施可能性要件と明確性要件が問題とされたものとして参考になります。

以上


コメントを投稿