知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

受信状態監視装置審取

2013-01-15 11:00:43 | 最新知財裁判例

1 平成24年(行ケ)第10092号審決取消請求事件
2 本件は,拒絶査定不服審判不成立審決の取消を求めるものです。
3 本件の争点は、進歩性の有無です。
4 
4-1
まず、本判決は、相違点1の容易想到性判断について、「引用発明は,電力線10に取り付けられた計測・電源用CT20と,計測・電源用CT20の二次側に接続され,電力線10を流れる電流を計測する計測入力回路43と無線伝送部50とを具備した電流計測装置と,電流計測装置の無線伝送部50からの計測演算データを受信し,中央装置へ無線伝送し,電流計測装置の無線伝送部50と無線で通信できる通信部を具備する中継無線局とを備えている」と認定する一方。「配電監視システムの技術分野において,末端側の監視装置と管理装置側の装置間の信号の流れに関して,管理装置側の装置から末端側の監視装置に対して命令を送信し,末端側の監視装置は,上記命令に従った応答を返信することは周知の技術といえる」と認定し、「引用発明における「電流計測装置」と「中継無線局」間の無線において,管理装置側の装置である「中継無線局」から末端側の監視装置である「電流計測装置」に対して命令を送信し,「電流計測装置」は,上記命令に従った応答を返信すること,すなわち相違点1に係る構成は,上記周知技術(周知技術1)に基づいて容易に想到し得たものということができる」と判断しました。

4-2
次に、本判決は、相違点2の容易想到性判断について、「引用発明は,電力線10に取り付けられた計測・電源用CT20と,計測・電源用CT20の二次側に接続され,電力線10を流れる電流を計測する計測入力回路43と無線伝送部50とを具備した電流計測装置と,電流計測装置の無線伝送部50からの計測演算データを受信し,中央装置へ無線伝送し,電流計測装置の無線伝送部50と無線で通信できる通信部を具備する中継無線局とを備えている」と認定する一方。「「電流検出器」の技術分野において,電流検出器として,始終端間に空隙を形成した断面略円形の可撓性を有するチューブに導電線の一方を巻回しチューブの終端で折り返して環状に屈曲させたロゴスキーコイルを用いること,それにより,小型で低コストに構成することができ,被測定物に効率よく取付作業を行うことができることは周知の技術といえる」と認定し、「引用発明において,小型化,低コスト化及び取付作業の効率化を図るために,「電力線10」に取り付けられた「計測・電源用CT20」に代えて,ロゴスキーコイルを取り付けることは,上記周知技術(周知技術2)に基づいて容易に想到し得たものといえる」と判断しました。

5 本件は、周知技術の内容自体から引用発明に周知技術を適用する動機付けがあることを肯定した事例として参考になります。


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