知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

早期癌マーカー審取

2011-12-21 13:28:05 | 最新知財裁判例

早期癌マーカー審取

平成22年(行ケ)第10395号 審決取消請求事件

請求棄却

裁判所の判断は17ページ以下。

争点は容易想到性です。

本判決は、本件文献と本願明細書の記載から、「治療可能性が高い段階で癌を発見するために,より早期の段階における癌に有効な腫瘍マーカーの開発が技術課題とされていた」ことを認定した上で、「引用例1は「ヒトにおける発癌の初期段階での高いMK発現に関連する最初の報告」であり,「これらの発見は,ヒトにおける発癌現象の早期のステージにおけるMK の重要性を示唆している」こと,結腸癌について,発癌現象の早期段階で細胞内のMKの発現が正常細胞と比較して統計的に有意に増加していることを開示する引用例1の記載に接した当業者は,MK量を測定することにより,正常者と早期癌患者とを区別でき,MKが早期癌の検出に使用できる可能性が高いと認識するものということができる」と述べ、 また,「当業者が,結腸癌の病期が進行していないケースにおいても,血清中のMK量が高くなることを開示する引用例2の表1に接した場合,当業者は,引用例1に記載された癌細胞内でのMKの発現増加が,血清中のMK量の増加につながり, 血液中のMK量を測定することにより結腸癌を早期の段階で検出可能であることを直ちに想到するものということができる」と述べ。 結論して、「本願発明は,癌が発生する臓器について特定するものではないから,引用発明1 及び2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができる事項を包含するものであるというべきである。」と判断しました。

本判決は、容易想到性を肯定した一事例として参考になると思われます。


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